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「固定観念でデザインすると心地良くなくなってしまう」幅広い世代から親しまれる歯科医院のつくり方

アート制作ユニット tupera tupera 亀山 達矢・中川 敦子/歯科医師・現代美術作家 長縄拓哉

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このコーナーでは歯科医師であり、現代美術作家でもある長縄拓哉先生が各界の第一線で活躍するクリエイターとともに歯科が抱える課題や可能性について探ります。今回は絵本や舞台美術などで活躍するアート制作ユニット「tupera tupera(ツペラ ツペラ)」のお二人とともに、幅広い世代に受け入れられる歯科医院づくりについて考えます。
[Creator's Interview] アート制作ユニット tupera tupera 亀山 達矢・中川 敦子 × 歯科医師・現代美術作家長縄拓哉

「固定観念でデザインすると心地良くなくなってしまう」幅広い世代から親しまれる歯科医院のつくり方

取っ掛かりがあれば、誰でも発想を転換できる

長縄 シリーズ累計100万部以上販売されている『かおノート』は、付属の目や鼻などのパーツのシールを、絵本に描かれた顔に貼って楽しむという絵本です。7歳になる僕の息子も大好きで、移動時間などに夢中になってシールを貼っています。この『かおノート』をはじめ、tupera tuperaさんの作品は自由な発想で面白く、幅広い世代に親しまれています。こうしたアイデアがどこから生まれるのだろうかと気になり、お声がけさせていただきました。
亀山 ありがとうございます。例えば、『わくせいキャベジ動物図鑑』という作品があります。地球から831光年離れた惑星「キャベジ」に住んでいる生き物を、野菜の写真を組み合わせて作っています。バナナを組み合わせたバナキリン。ジャガーは、ポテっと丸い足が特徴で、リンゴリラは「アッポー」と鳴きます(笑)。「もの」をそのものとして見るのではなく、「あっ、このナスはクジラみたいだな」とか、そんなふうに別のものに見立てて楽しむ視点が必要だと思います。
長縄 医療現場でも固定観念やバイアスを外すことで課題が解決することがあります。でも、その作業がなかなか難しいんです。バナナはバナナだし、ジャガイモはジャガイモで、それを見て別の発想が生まれるのはすごいなと思います。
[写真] 即興でつくられた歯のキャラクター 亀山 子どもは何かを別のものに見立てて遊ぶのが得意だと思うんです。でも、本当は子どもとか大人とかは関係がなくて、取っ掛かりさえあればいいんだと思います。『わくせいキャベジ動物図鑑』では「新種が見つかったら教えてください」という紙を本に挟みました。そしたら2,000を超える新種のイラストが全国から送られて来たんです。大人か子どもか、絵が上手か下手か、そんなことは関係がなくて、惑星キャベジの世界観を共有するというちょっとした取っ掛かりによって、みんな自由な発想で作品を送ってくれました。だから、難しく考える必要はないと思います。例えば、自然の中に出かけて、遊具もゲームもないからつまらないと思えばつまらないけど、その辺に落ちている石や枝を拾って、「この石は目に似ているな」「この枝は眉毛と口みたいだな」と並べるだけで顔がつくれちゃう。ちょっとした発想の転換で面白いことは見つけられます。

作品づくりと野菜づくりは似ている!?

長縄 僕は作品を描く時、子ども向け、大人向けというふうにターゲットを決めて制作することがあります。でも、tupera tuperaさんの作品は子どもも大人も楽しめる作品ばかりで、どうしてそんなことができるのだろうと不思議に思っています。
中川 特別にコンセプトがある場合を除いて、作品をつくる際には大人向けか子ども向けかは考えたことがなくて、絵本に関しても、子どもだけが読むものとは思ってないんです。
亀山 絵本はどうしても児童書として括られるので、子どもの本のコーナーに置かれるんですけど、それは嫌だなと思っています。子どもから大人まで一緒に楽しめた方がいいなと。
長縄 ただ、年齢や男女といったターゲットの属性を決めないと怖いというか。届ける相手を決めず、自分がつくりたいものを優先してつくって、それが受け入れられるというのは、とても難しいことのように思います。
中川 世の中にはたくさんの人たちがいて、その全員が自分たちの作品を気に入ってくれるわけではありません。だけど、そのうちの何人かは私たちが面白いと思ったことに共感してくれるだろうと考えています。私たちってリサーチとかマーケティングをしたことがなくて、世の中に発表してから、意外とたくさんの人が共感してくれたな、と後から気づくことが多いですね。
亀山 絵画作品の場合は観る人がどう思っているのか、なかなか作家に伝わりづらいところがあると思います。僕らの作品は観るというのとは違う反応があって、例えば、絵本の読み聞かせのように、人と人とのコミュニケーションとして作品が活かされる場面があり、それを目にすると、とても嬉しく思うんです。僕らの作品づくりは美味しい野菜をつくる感覚というか。作品をみんなで美味しく食べてもらうみたいな。
長縄 野菜づくりですか(笑)。
亀山 美味しい野菜を、どう調理して味わうかはその人次第ということです。 『わくせいキャベジ動物図鑑』『わくせいキャベジ動物図鑑』

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