191号 WINTER 目次を見る
目 次
- ≫ まさか新井先生にご自身の口腔ケアのお話を伺えるとは思っていませんでした
- ≫ かなり以前に入れられたメタルボンドが現在もきれいな状態を保っておられると伺いました
- ≫ セルフケアには手用歯ブラシにデンタルフロスをプラスされたということでしょうか
- ≫ 他に口腔ケアに注力されるようになった理由はありますか
- ≫ では、具体的なセルフケアの方法やご使用のツールを教えてください
- ≫ 新井先生が長年口腔内をきれいに保っておられる理由が分かりました
-
日本大学歯学部 歯科放射線学講座
主任教授 新井 嘉則
今回は、CBCTの生みの親とも言える新井嘉則先生に、20年以上にわたって毎日欠かさず取り組んでおられるという口腔ケアの方法と、現在使用されている口腔ケアツールなどについてお話を伺いました。
まさか新井先生にご自身の口腔ケアのお話を伺えるとは思っていませんでした
そうでしょう。仕事柄、口腔ケアはこれまでかなり熱心にやってきたと自負しています。
かなり以前に入れられたメタルボンドが現在もきれいな状態を保っておられると
伺いました
45年ほど前に上顎両側中切歯に入れたメタルボンドが今も全く問題なく現役です。我ながらすごくないですか?その頃から歯磨きは朝・昼・晩の1日3回毎日続けていて、40歳頃にデンタルフロスを使うようになりました。そして1年に一度は歯科衛生士によるプロフェッショナルケア(以下:プロケア)をお願いしていました。
セルフケアには手用歯ブラシにデンタルフロスをプラスされたということでしょうか
もっと本格的にケアしなければと思ったのは還暦を迎える少し前頃でした。今年で65歳になるので、今から6年ほど前のことです。それまでは手用歯ブラシと歯磨剤、あとはデンタルフロスだけで特別なツールは何も使っていません。ちょうどその頃、プロケアの間隔を3か月に一度にしてもらって歯肉の状態やプラークコントロールの結果を確認したところ、「どうしても汚れが落ちにくい部分がある」ということで、「もっと本腰を入れてケアしないとダメだな」と思っている時に歯科衛生士から「ソニッケアー」を勧めてもらいました。いざ使ってみると、特別なテクニックがなくても時間内にきれいに磨けて時間短縮にもなるので、それ以来ずっと使っています。替ブラシは「プレミアムオールインワンブラシ」を使うことが多いのですが、新製品の「ジェントルプラスブラシ」は毛先も柔らかく歯面や歯肉へのアプローチも優しい感じで最近のお気に入りです。
新井先生の口腔内。₁ ₁のメタルボンドは装着から45年以上経過した現在もきれいな状態を維持している。-
インタビューに際して、ご自宅でお使いの口腔ケアグッズをお持ちくださった。 -
「ソニッケアー」は以前からの必須アイテムで、現在も継続して使用されている。
他に口腔ケアに注力されるようになった理由はありますか
いびき対策として就寝時に口腔内装置を装着しています。装置を付けて寝ると、付けない状態に比べてう蝕リスクが高くなるので、寝る前はとくに清潔な状態にしておくことを心がけるようになりました。歳を重ねていくと口の周辺の筋肉が衰えたり、唾液量の減少に伴って自浄作用も低下していくので、若い時以上にメインテナンスには留意する必要があります。そこで、いろいろな種類の口腔ケアツールを試すようになって、現在の私の口腔ケアスタイルが確立しました。
私は理詰めで考える性格なので、目的を達成するためにはどうすればいいか、そのためにどのようなツールが必要かをまず考えました。そこで歯科衛生士が行うプロケアのステップをつぶさに観察していると、最初に超音波スケーラーなどを使って目立つ汚れを落としたあと、細かい部分や落ちにくいところの汚れを手用スケーラーなどで丁寧に落としています。その後、艶出しを行い、歯面を滑沢な状態にして汚れを付きにくくする、という少なくとも3つのステップを踏んでいることが分かりました。それならセルフケアでも可能な限り同じステップを再現するのが近道だろうと考えたのです。
では、具体的なセルフケアの方法やご使用のツールを教えてください
まず「ソニッケアー」に「Brilliant more W」を付けて汚れを落とし、そのあと「DENT. e-floss」で歯間部をケア、次に「ソニッケアーコードレスパワーフロッサー3000」(以下:「パワーフロッサー」)を使います。フロッサーという名前からデンタルフロスの代わりと考えがちですが、私はデンタルフロスで歯間の汚れを落とした後に、歯肉ケアの目的で「パワーフロッサー」を使っています。ノズルはX型(4方向)に水流が広がる「カドストリームノズル」で、唇側・舌側・口蓋側の歯頸部付近を中心に当てていきます。そして最後に2回目のブラッシングとして「オーラルリペアジェル」で口の中に潤いを与えます。配合されている乳酸菌生産物質の影響なのか、ヨーグルトの味がして、そのおかげで唾液が分泌され口腔内が潤います。その後は口元を少し拭うくらいで、ほぼうがいはしません。「オーラルリペアジェル」はエナメル質の表面を滑らかにすることに特化しているので、歯の汚れをしっかり落としてから艶出しとして使うのが理想です。以上が、私の朝と夜のセルフケアのステップです。まず歯の汚れを落として、歯肉をマッサージした後に、潤いを与えるためにもう一度磨くので「ダブルブラッシング法」と密かに呼んでいます(笑)。
新井先生が長年口腔内をきれいに保っておられる理由が分かりました
これは私の持論ですが、一つひとつのステップを丁寧に行うと時間もかかり、継続するのも大変です。短い時間で良いので、目的別にさまざまなツールを使い分けるのが良いと考えています。例えば、試験で英語・物理・数学・国語の4教科があった場合、英語で100点を取っても他が0点ならトータルで100点にしかなりません。しかし、すべての科目で60点を取れば、トータルで240点にもなるんです。仮に英語が60点だったとして、私なら60点を70点に上げる勉強はできそうですが、60点を100点まで持っていくためには相当な努力が必要です。それだけの時間を使うのなら、他の科目を60点に上げる勉強をした方が良いと私は考えます。私の場合、「ソニッケアー」は通常2分のところを1分でストップするので50点か60点。フロスは自己採点で60点、「パワーフロッサー」もサーッと歯肉に当てるだけなので60点、「オーラルリペアジェル」も最後のおまじないのようなものとして考えれば60点。それぞれ100点までは届きませんが、合計すれば100点をはるかに超えています。もし歯面が100点満点の状態でも、歯間部が0点なら口腔内全体の環境はかなり低いレベルになってしまうかもしれません。それよりは口腔内の環境を均一にベースアップする方が良いと思います。そして、使う目的を明確にしたら、あとは道具の力に頼れば良い、というのが私の口腔ケアの考え方です。ご自身の口腔ケアや患者さんへの指導の参考になれば幸いです。
自宅にいることが少ない昼間は「Check-Up 歯ブラシ standardタイプ」と「Brilliant more W」でブラッシング。その後に「DENT.e-floss」で歯間部のケアを行っている。-
「縦笛を演奏するときのように、肘を上げて持てば水でシャツの袖口を濡らすことなく使えますよ」と「パワーフロッサー」の持ち方を提案してくださった。 -
新井先生の口腔内を支える口腔ケアグッズ。いろんなツールを試してみた結果、現在はこの6点がお気に入り。
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