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スペースライン発売60周年特別企画 スペースライン開発担当者の素顔に迫る!

株式会社モリタ製作所 技術開発部 設計2グループ 沼田 訓正/馬野 峻哉

目 次

[写真] 製作所の沼田訓正氏と馬野峻哉氏

発売から60年が経過したスペースライン。設計・開発するうえでの難しさはどんなところにあるのか。また、どんな時に達成感を抱くのか。そして、スペースラインとはどんな存在なのか。現在、第一線でスペースラインの設計・開発に携わる株式会社モリタ製作所の沼田訓正氏と馬野峻哉氏のお二人にお話を伺いました。

“変わることなく進化する”ことが
スペースライン開発担当者に課せられた使命

スペースラインとの最初の関わりについて教えてください

[写真] 株式会社モリタ製作所 技術開発部 設計2グループ 沼田 訓正 沼田私は1999年に入社し、26年目になります。電気設計が専門で、これまでスペースラインをはじめ、可搬型ユニットや教育実習用ユニットの設計開発に携わってきました。現在、スペースラインをはじめとしたチェアユニットはチェア部の昇降起伏動作やハンドピースの回転制御などをCPUによって 制御しています。私はおもにそのソフトウェアの設計開発やチェアユニットに内蔵されている基板、各種センサーやスイッチなどのハーネス設計を担当しています。初めてスペースラインの設計を担当したのは、「スペースライン スピリットⅢ」からです。この機種は、先生方に長く安心してご使用いただけるように、シンプルな機能を特長としていました。その制御基板やハーネス、ソフトウェア設計を担当したのですが、私にとってどれも初めての経験でした。分からない部分は先輩や上司の皆さんに教えを乞いながら、納得できるまで試行錯誤を続け、最終的に高品質で故障も少ないチェアユニットに仕上がったと感じています。
馬野私は2015年に入社し、10年目になります。医療機器メーカーで働くことが子どもの頃から夢でした。機械設計が専門です。幸運にも入社1年目から「スペースラインEX」の設計に携わることができました。そこではおもにフリーアクショントレーのインスツルメントハンガーの設計を担当しました。その後、「スペースラインST」のベースン部にも携わり、剛性設計や樹脂設計(カバーリングなど)を行いました。また、直近では「スペースラインST BM」のハウジング部分の設計開発にも関わりました。

設計・開発する際に心がけていること、大切にしていることは何でしょう

[写真] 株式会社モリタ製作所 技術開発部 設計2グループ 馬野 峻哉 沼田操作スイッチやパネルの表示方法などが先生方に使いやすいと感じていただけるかが重要なポイントですので、それらのユーザーインターフェースを特に大切にしてきました。とりわけスペースラインをお使いの先生方は、チェアユニットの更新の際に同じスペースラインの後継機種を導入いただくことが多いので、その際に操作方法などで戸惑うことのないように留意しています。例えばフットコントローラーのペダル操作やハンドインスツルメントのピックアップ、リターンなどは、これまで採用してきた操作方法をできるだけ大きく変えないように心がけてきました。その一方で、機能性の向上に伴うさまざまな操作については、細かく設定できるように工夫したり、使用頻度に応じて操作方法を変更するなどの改良を加えています。“変わることなく進化する”ことがスペースライン開発者に課せられた使命であり、シンプルさや使い勝手といった本来持つ特長を保ちながら、いかに拡張性を持たせていくかということに日々頭を悩ませています。
馬野私の場合、携わる製品についてまずは自らが体感することを心がけています。市場調査の情報や先生方からいただいたアンケート結果などに頼るだけではなく、自分で体感してみて、ニーズの本質を理解することが先生方が本当に望んでおられる製品を生み出すことに繋がると考えているからです。例えば、最初に携わった「スペースラインEX」のフリーアクショントレーのインスツルメントハンガーの設計では、ピックアップとリターンを何度も繰り返し自分で体感し、改良を繰り返すことで、最終的にベストなポジションと形状を導き出すことができたと考えています。

新たな機能や技術を付加しながらも、
シンプルでタイムレスなデザインを維持する難しさ

設計・開発で難しいと感じる部分はどんなところでしょう

沼田チェアユニットには治療に必要な周辺機器やインスツルメントなど、さまざまな機器や機能が搭載されています。チェアユニットの発売後に新たな周辺機器が製品化されるケースも多く、それを可能な限りタイムリーに搭載できるように、あらかじめ電源や配線の仕様などに拡張性を持たせるようにしています。仕様を先取りし、チェアユニットに今後搭載できるように、日頃から歯科治療のトレンドを感じ取るセンスも必要になり、非常に難しいところと考えています。例えば、新たに高性能の超音波スケーラーを既存のチェアユニットに搭載する場合、パワーレンジの切り替えや根管長測定機能と連動した表示など、操作パネルに機能を追加する必要があります。そうしたケースを事前に想定して、拡張性のある液晶パネルにしておくなどの準備が必要になります。また、スペースラインはこだわりをもって使用される先生も多く、さまざまな要望をいただくこともあり、それを想定して設計段階で組み込んでおくことも難しいところですね。ご購入済みのチェアユニットにも搭載できるように、構想段階で有識者と討議を重ね、ユニット内部の基幹部品は現行のままになるよう創意工夫を凝らしました。
馬野新たな機能や技術を付加しながらも、飽きのこないシンプルでタイムレスなデザインにすることに難しさを感じます。スペースラインは白を基調としたパーツが多く、パーツ同士が重なりあう繋ぎ目は段差を設ける構造を採用して、繋ぎ目の黒い影を美しく見せる工夫を行っています。また、「スペースラインEX」では、最低位を低く、最高位を高くという要望を実現する機構を、コンパクトなハウジングの中に収めることに難しさを感じましたが、内部のレイアウトを工夫することで対応しました。さらに、スペースラインの特長の一つでもあるスーパーショックレスに加えて、起動から停止までの振動が患者さんに伝わらないように、という部分でもかなり知恵を絞りました。

モリタ製作所におけるスペースラインの位置付け・存在とは?

沼田スペースラインは名実ともにモリタ製作所製品を代表するブランドです。「スペースライン」という言葉には「空間を結ぶ」という意味も込められています。診療空間をいかに使いやすく、快適に整えていくかを考えて世に提案してきたのがスペースラインであり、発売から60年を経た現在も決して色褪せることはありません。スペースラインを長年お使いいただいている先生は、「より良い治療とは何か」を常に探求しておられます。そうした志の高いユーザーの先生に恵まれたからこそ、スペースラインは長きにわたって進化し続けることができたと考えています。
馬野当社のものづくりのベースには「人に優しい」という考え方があります。これは、常に人を中心に考えるスペースラインコンセプトが起源です。ですから、スペースラインを抜きにしてモリタを語ることができませんし、常に私たちの心の拠りどころのような存在と感じています。

  • [写真] 操作パネル
    新たな周辺機器の搭載にも対応できるように、操作パネルには拡張性のある液晶パネルを採用している。
  • [写真] トレーのディスプレイ
    トレーのディスプレイに表示された内容を拡大して液晶ディスプレイに映し出すこともできる(オプション機能)。
  • [写真] スーパーショックレス
    起動、停止の動きをほとんど感じさせないスーパーショックレス。患者さんに上質で快適な動きを提供する。

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