会員登録

191号 WINTER 目次を見る

Clinical Report

高周波を用いた根管治療機器「RootZX3」の有用性

大阪府大阪市 医療法人湧光会アスヒカル歯科 理事長 加藤 真悟

キーワード:機能追加型根管治療機器/高周波モジュール/HFC(High Frequency Conduction)

目 次

はじめに

臨床において、歯内療法の機会は非常に多いのが現実である。①抜髄治療 ②感染根管治療 ③穿孔部封鎖 ④根管内異物除去 ⑤歯根端切除術 ⑥意図的再植術など、様々な病態に対応する必要があり、困難に直面することも多い。また、検査においてデンタルX線、CBCT撮影、プロービング値を参考に、う蝕の拡大範囲、根管形態、根尖部透過像、歯根破折の可能性などを診断し治療を行っていくこととなる。
今回は、RootZX3(以下:ルートZX3)(図1)を活用することによって得られる臨床的メリットについて解説する。

高周波モジュールとは

懸命に根管治療を行ったにも関わらず、次のような経験をした方も多いかと推察する。①出血や排膿がなかなか止まらない ②根尖病変があるが根尖まで穿通させることができない ③根管形成や根管貼薬を何度も行っても疼痛が消失しない ④抜髄後の自発痛や咬合痛がなかなか消失しない
これらの症状は、狭窄根管、側枝やイスマス、フィンなどに残留した病原因子や、感染物質を含んだ根管充填剤や細菌を根尖孔外に押し出してしまったことが原因であることも多い1)
ルートZX3は高精度の根管長測定が可能となる。それに加え、高周波モジュールを接続することでファイル形態のチップ電極から根管内に高周波通電(HFC:High Frequency Conduction)が可能である。

HFCのメリット

HFCを歯内療法に使用することで、以下のようなメリットを得ることができる。
①根管長測定機能によって根管内のチップ電極の位置を設定し、フットスイッチにてHFCが行える。チップ電極の先端部と接触した部位を発熱させ、歯髄の焼灼・凝固を行うことができる。それにより、抜髄時に出血の無い明瞭な視野を得ることができる(図2)。
②電気メスとしての機能も備え、縁下カリエスにおいて歯肉切除を行い、隔壁の築造を行うことにも適している。
③根管内に次亜塩素酸ナトリウムを少量滴下した状態でHFCを行うことで、根管内で発熱が起き、残存歯髄の焼灼や、清掃が困難である側枝や穿通ができない狭窄根管などのファイル未到達部位、根尖病変内の殺菌が期待される2)

  • [写真] ルートZX3
    図1 ルートZX3
  • [図] 使用手順
    図2 使用手順

症例供覧

<症例1:不可逆性歯髄炎に対する抜髄治療>
不可逆性歯髄炎の患者に対し、アポイント外の限られた時間で急患対応を迫られるケースもある。そのような状況では、抜髄治療のポイントは2つあげられる。
1つ目は「出血のコントロール」である。急性の不可逆性歯髄炎においては、う蝕を除去し、髄腔を穿通した場合に、歯髄腔から出血が認められる。出血量が多い場合、肉眼・ルーペ・マイクロスコープを問わず適切な視野が得られず、天蓋の除去や歯冠部歯髄の除去、そして根管口の探索が困難になる。それにより、髄床底などの穿孔のリスクや根管口の拡大などにより、ストリップパーフォレーションのリスクが上がることは想像に難くない。
2つ目は「疼痛のコントロール」である。自発痛を伴う急患に対し時間的制約がある中での治療は「出血のコントロール」を速やかに行い、歯冠部歯髄の除去のみを行い、水酸化カルシウムを貼薬し緊密に仮封を行うことにより、短時間で自発痛を大きく軽減することが可能である。
この症例は45歳男性で、左側上顎第一大臼歯の自発痛を主訴に来院した。水平打診痛(+)垂直打診痛(+)EPT反応(+)咬合痛(+)根尖部圧痛(-)であった。不可逆性歯髄炎と診断し、局所麻酔薬の浸潤麻酔を行った。
ラバーダム防湿下で根管口明示を行った後、根管内から出血を認めた。抜髄治療中の根管内出血に対し、歯髄に直接的にHFCを行い焼灼することで容易に止血することができ、出血のコントロールが可能となった(図3)。それにより、安定した根管長測定を行え、円滑な抜髄治療を行うことが可能となった。これは、術者にとって大きなメリットである。また、HFCを併用し抜髄を行った場合に術後疼痛が有意に減少すると言われており、患者目線でも大きな利点と考えられる。

  • [写真] 根管内から出血
    図3a 根管口明示時に根管内から出血が認められた(HFC通電前)。
  • [写真] 根管内にて約1秒HFC通電中
    図3b 根管内にて約1秒HFC通電中
  • [写真] HFC通電後で止血されている
    図3c HFC通電後で止血されている。

<症例2:歯髄壊死に対する抜髄治療>
歯髄壊死患者への抜髄治療では、髄腔開拡を行う場合に出血を認めず視野が確保され易い。不可逆性歯髄炎における抜髄治療と比較し、根管口を発見しやすく、直ちにハンドファイルを根尖まで挿入してしまう歯科医師も多いと考えられる。しかし、このような場合に引き起こしてしまう代表的な合併症にフレアーアップが挙げられる。理由として、根管内の感染した壊死歯髄組織等を根尖孔外に押し出してしまうなどが考えられる。よって、根管口を発見した場合に、直ちにハンドファイルで穿通を行うのではなく、まずは可及的に根管内の細菌を減少させてから、根尖部へ進入していく必要がある。また、術前疼痛があった場合はフレアーアップが起きやすいとも言われている3)。具体的には、根管内に次亜塩素酸ナトリウムを入れた状態で、根管上部1/3を根管形成する。ここで、根管内を焼灼および止血しながら感染物を機械的に除去することが可能となる。もちろん、このまま次亜塩素酸ナトリウムを根管内に浸しながら根管形成を行うことも可能だが、日常臨床における抜髄をよりシンプルにするためにはルートZX3の使用が有用である。
根管内に次亜塩素酸ナトリウムを浸しルートZX3にて根管長測定を行いながら、根尖孔から-3mmの位置にてHFCを行うことで、側枝にも高周波通電され焼灼される。続けて、根尖孔から-1mmの位置にて再びHFCを行うことで、根尖部付近の壊死歯髄が焼灼される(図4)。
この症例は35歳男性で、左側下顎第二大臼歯のサイナストラクトを主訴で来院した。水平打診痛(-)垂直打診痛(-)EPT反応(-)咬合痛(-)根尖部圧痛(+)であった。
ラバーダム防湿下にて、髄腔開拡を行った。歯髄腔からの出血をみとめないが、失活歯髄が観察された。前述の通り、直ちに穿通を図るのではなく、まずは歯冠部失活歯髄にHFCを行った(図5a)。それにより、歯冠部歯髄が凝固(焼灼および止血)され一塊にて除去を行うことができた(図5b)。根管内にも、同様に出血を認めない失活歯髄をみとめたが、感染していると考えられるため、次亜塩素酸ナトリウムを根管内に滴下しHFCを行った。次亜塩素酸ナトリウムにて根管内洗浄を行うと、一部の壊死歯髄は根尖部壊死歯髄と離断されると同時に、根管内壁から剥がれ根管口方向に浮き上がってくることが観察された。APEXから約-3mmの位置にて再度、HFCを行い穿通および作業長の設定を行った(図5c)。
同日に根管形成を行い、根管充填を行った(図6a)。フレアーアップや術後疼痛などの合併症はみとめなかった。術後2か月において、根尖部透過像の消失が確認された(図6b)。

  • [図] 高周波通電位置
    図4 高周波通電位置
  • [写真] 歯冠部失活歯髄にHFC通電中
    図5a 歯冠部失活歯髄にHFC通電中
  • [写真] 歯冠部歯髄が凝固され一塊にて除去
    図5b 歯冠部歯髄が凝固され一塊にて除去
  • [写真] 白色に変性した歯髄が観察できる
    図5c 根尖から-3mmの位置でHFC通電後。白色に変性した歯髄が観察できる。
    • [写真] 根管充填直後
      図6a 根管充填直後
    • [写真] 根管充填後2か月
      図6b 根管充填後2か月
    ((株)モリタ製作所 Veraviewepocs3Dfにて撮影)

この記事はモリタ友の会会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

残り 1265 文字

モリタ友の会有料会員に登録する ログインする

目 次

モリタ友の会会員限定記事

他の記事を探す

モリタ友の会

セミナー情報

セミナー検索はこちら

会員登録した方のみ、
限定コンテンツ・サービスが無料で利用可能

  • digitalDO internet ONLINE CATALOG
  • Dental Life Design
  • One To One Club
  • pd style

オンラインカタログでの製品の価格チェックやすべての記事の閲覧、臨床や経営に役立つメールマガジンを受け取ることができます。

商品のモニター参加や、新製品・優良品のご提供、セミナー優待割引のある、もっとお得な有料会員サービスもあります。