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富山県射水市 やまざき歯科医院
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院長 山崎 史晃 -
歯科技工士 石川 航生
<院長 山崎史晃>
現在、当院では「Accuprint 3D 4.0 pro」(以下:アキュプリント)を使用していますが、前機種で見られた破折はほぼなくなり、安定した運用が可能になっています。
アキュプリントを使って感じた利点は大きく3つあります。1つはプリントした際の「エラーが少ない」こと、2つめは「プリントスピードが速い」こと、3つめは「精度が高い」ことです。これらのメリットによって当院の義歯製作のワークフローも大きく変わりました。
従来のアナログ技法だと完成まで最低1か月は必要だったのが、3Dプリンターを用いたデジタルデンチャーでは1週間以内にできあがります。また、材料コストも安価なことから、例えば、患者さんから「(人工)歯の位置をもう少し変えてほしい」と言われても、デジタルデンチャーならソフトウェアで調整して再度プリントするだけです。患者さんはそのレスポンスの早さに喜ばれますし、私たちにかかる負担も大いに軽減されていると感じています。
3Dプリンターを選ぶポイントは造形のエラーが少なく、口腔内で安心して使える材料が揃っている製品を選択するべきだと思います。
当院ではデンチャーをメインに活用していますが、デジタルデンチャーが浸透することで、患者さんの満足度も大きく向上し、診療の効率化も実現できました。今後は、デジタルデンチャーを武器に、阿部二郎先生が考案した下顎吸着総義歯を広く世界中に広める活動にも注力していきたいと考えています。
図1 やまざき歯科医院における、3Dプリンターを用いたデジタルデンチャーのワークフロー。
図2 82歳女性。数件の歯科医院で義歯を作ってきたが、どれも満足に食事ができないという理由から、前医の紹介で来院。
図3 従来法では印象採得後に製作した個人トレーに石膏を注ぎ、咬合器にマウントするだけで90~120分は要していた。
図4 デジタルデンチャーでは、旧義歯を個人トレーの代わりにすることで下顎の印象採得と咬合採得が同時に行える。
<歯科技工士 石川航生>
当院には私を含め2名の歯科技工士が在籍し、デジタルデンチャーは現在ほぼ私が担当しています。歯科技工士学校ではアナログ技工に関する授業が9割以上を占めていましたので、デジタル技工を本格的に学んだのは当院に入職してからです。ただ、デジタル技工を習得するためにはアナログ技工の知識や考え方は必要になるので、学生時代にしっかりアナログ技工を学んできたことが、今の業務に活かせていると感じています。
アキュプリントを使用するメリットは院長が話した3つを除くと、インクごとにあらかじめ設定されたパラメーターが入っているため、材料を選択してスタートボタンを押すだけで印象通りのものが再現できるところです。また、操作もシンプルで、誰でも比較的簡単に高精度なものが製作できるところも大きな利点と感じています。今後新たなインクが発売されるなど、周辺材料もさらに充実することが予想されますので、スポーツ用のマウスガードや矯正治療用のリテーナーなど、活用できる用途はさらに広がってくると感じています。
今後は、当院で実践している歯科技工士の働き方や環境改善に関する取り組みを広く院外に向けてアピールし、歯科技工士の減少や待遇改善に少しでも貢献できるような活動にも取り組んでいきたいと考えています。
図5 旧義歯を使った取り込み印象の完了後、IOS(口腔内スキャナー)やラボスキャナーでスキャニングし、立体的なデータを獲得する。
図6 デザインした人工歯付き個人トレーを使って精密印象、咬合採得、試適を行う。バイトのズレもなく、精密な印象を採得することができる。
図7 噛み癖がある難症例だったため、ティッシュコンディショナーによる調整は必要だったが、2週間後には完全に吸着し、何でも食べられるようになった。
図8 精密印象体をスキャンし、デジタル模型を作製する。ここまでを1日で行い、翌日に個人トレーを完成。その日の夕方にデザインを終えておけば、翌日人工歯を装着し、来院3日目には患者さんに義歯を提供することができる。
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