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ティッシュコンディショナー フレクトン ~ティッシュコンの基本に立ち返って~

株式会社ニッシン 開発グループ 井上 敦好

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キーワード:義歯床用短期弾性裏装材/機能印象(ダイナミック印象)

目 次

はじめに

ティッシュコンディショナーは、義歯と口腔粘膜の間で圧力を分散し、疼痛や不快感を和らげる粘膜調整材です。粘膜の形状変形に追従し、安定した適合性を維持します。さらに、機能印象材としても使用され、リライニングのための印象採得をサポートします。
今回は、新発売された「ティッシュコンディショナー フレクトン」(以下:「フレクトン」)がどのような特性かを知っていただき、それぞれの治療方針に適切な選択の一助となれるように紹介します。

製品の概要

「フレクトン」は、チェアサイドでの使いやすさと装着者の快適性を両立する、低刺激で柔らかい、機能印象に適したティッシュコンディショナーです(図1)。

貼り替えを簡単に

診療の機会や時間が限定的にならざるを得ないケースでは、ティッシュコンディショナーの適用がどうしても長期にわたることがあります。しかし、その間にもバイオフィルムの形成や可塑剤の溶出による収縮と硬化は進行し、相応のリスクが伴うことは悩みの種であり、完全解決が難しい課題です。
そこで、「フレクトン」では、交換を手早く行えるようにアプローチしました。義歯床から一体で引き剥がせる特性があるため、貼り替えの作業自体を簡単にし、限られたチェアタイムで多くのことができるように支援します(図2)。
また、ティッシュコンディショナーは、目的の流動性を得るため、粉と液の量を任意調節することがあります。ただし、液が多すぎると強度不足のゲルとなり、表面張力で細部の凹凸が消えてしまうなど、調整に限度もあります。
「フレクトン」は、初回でも使いやすいように2つのガイド線を用意しました(図3)。クリアランスの小さい印象採得時には延びがよくベタつきにくい実線(図4)、抜歯後など厚く盛りたい場合は点線を目安に調整が可能です(図5)。

  • [写真] 「ティッシュコンディショナー フレクトン」セット品
    図1 「ティッシュコンディショナー フレクトン」セット品
  • [写真] 義歯から一体ではがしているところ
    図2 義歯から一体ではがしているところ
  • [写真] 粉計量カップのガイド線
    図3 粉計量カップのガイド線
  • [写真] やわらかタイプ
    図4 やわらかタイプ
  • [写真] しっかりタイプ
    図5 しっかりタイプ

印象性能

「フレクトン」は、髪の毛(40~150μm)より細い凹凸である幅20μmのV字溝が成す細線を印象できる能力を有しています(代表値)(図6)。

開発の背景

機能印象において、印象面を荒らす原因の1つに、可塑剤の溶出、中でもアルコール溶出による体積収縮が表面性状に大きく影響します1)
そこで、ノンアルコールのティッシュコンディショナーとして、当社の以前のプロダクトであるフィクショナーは開発されましたが、流動性が低く、取り扱いの難しさが課題点でした。
「フレクトン」は、設計思想を受け継ぎながら、ユーザー体験の要素からアプローチを行いました。大きな違いとして、フィクショナーのわかりやすい特長であったノンアルコールをあえて手放し、数%だけアルコールを添加しています。これは液の馴染みを劇的に改善し、操作自体に余計な注意を向けなくて良くなりました。
また、低アルコールであっても、ノンアルコールの目指した印象性能、患者さまが装着した際にピリピリとした刺激を感じないことや、不快の少ない装着感は実現できると考えました。印象性能の検証はもちろん、実際に口に入れるなどの調整を経て、やさしさと使いやすさを重視した「フレクトン」ができあがりました。
パッケージも、作業中の置き場や安定感を重視した構成にしています。

粘弾特性

「フレクトン」は、7~8分程度でトリミングや調整可能なコシのある状態になります。ここでは、「フレクトン」の特性をより役立てていただけるように、粘弾特性について解説します。

流動性のある状態

粉と液を混ぜはじめてから2分半までは、流動性の高い状態です。気泡が抜けやすく、この状態で口腔内に挿入するとより薄く裏装することができます。

ゲル化の始まり

2分半~4分までは、垂れにくく、可塑性に富んだ状態になります。この状態で口腔内に挿入すると辺縁や抜歯窩など、より厚くしっかりと盛ることができます。

ゲル

口腔内に挿入して5分程で、ゲル状態になります。この間は程よく変形を受け付けるため、脱着せずに口腔運動を行ってください。ベタつきが収まり、トリミングや調整を行うのに必要なコシのある状態になっています。

形状安定

混ぜ始めから2時間程度で、すべての粒子(ポリマー)は隣接する粒子と融合し、形状としても安定状態になります。その後は程よい弾性と少しの可塑性を維持します。
粉計量カップの点線付近で粉を調整した場合は、特にこれ以降は変化が少なく、顎堤や粘膜が落ち着いていて、時間が確保できる場合には、当日から機能印象材としても利用可能です(図7)。

  • [写真] 20μm細線転写部(光学顕微鏡)
    図6 20μm細線転写部(光学顕微鏡)
    ※当社試験データによる
  • [図] 硬さの日数変化
    図7 硬さの日数変化
    ※当社試験データによる

まとめ

「フレクトン」の特性は、義歯床用短期弾性裏装材としての基本に忠実でありながら、できるだけ簡単に行いやすくすることに焦点を当てたものになっています。

参考文献
  • 1) 濱田泰三(2007)『ティッシュコンディショナー』デンタルダイヤモンド社

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