104号 WINTER 目次を見る
目 次
- ≫ はじめに
- ≫ エプリコードの技術(3元系フィラーの発展形)
- ≫ エプリコードの特徴
- ≫ 使用方法
- ≫ まとめ
はじめに
歯冠用硬質レジンは、作業性に優れ、比較的禁忌症例が少ないことから、歯冠修復材料として様々な症例に使用されている。
しかし、ポーセレンに比べ審美性、耐久性の点で課題を残しており、歯冠修復材料として必ずしも満足の行くものではないと言われている。
EPRICORDとは、「Enhanced properties integrated composite resin design 」、すなわち「拡張された性能を組み込んで設計したコンポジットレジン」という我々の開発コンセプトを示す言葉の頭文字をとって命名したものである。
拡張された性能とは、審美性、操作性、耐久性の3つの特性であり、エプリコードは当社のコンポジットレジン並びに接着材料の開発で培った技術をベースに、耐久性を損なわずに操作性、審美性を徹底的に追及した歯冠用硬質レジンである。
エプリコードの技術(3元系フィラーの発展形)
我々が開発した歯冠用硬質レジン「セシード」は、有機複合フィラー、無機粉砕フィラー、ミクロフィラーの3元系フィラーからなるコンポジットレジンであり、フィラー配合量が高いことから優れた機械的強度を有している。さらに高い金属接着耐久性を併せ持つことから、メタルバッキング無しの審美的な前装冠の製作を可能とした。
一方、「エプリコード」は、その技術の発展形として、高強度歯冠修復材料であるハイブリッドセラミックス「エステニア」で開発した技術を取り入れている。これらの技術の融合により操作性、研磨性と共に審美的質感や耐摩耗性の向上が図られている(図1~3)。
エプリコードとセシードの組成の違いは、大きく分けると以下の通りである。
① 3元系フィラーが微細化された。
→ 付形性、研磨性、質感の向上② フィラー配合量が向上している(85.4%)特にマトリックス内の微粒子フィラーの配合量をUPした。
→ 強度、耐摩耗性の向上
③ エステニアで開発した重合触媒を用い、マトリックスの重合性を向上させた。
→ 強度の向上、重合時間の短縮
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図1 エプリコードの技術 -
図2 フィラー配合量 -
図3 エプリコードの組成
エプリコードの特徴
次に本品の特徴について、審美性、操作性、耐久性に分けて説明する。
●審美性
1. 薄い層での色調再現性にこだわった硬質レジン
一般的に硬質レジンはポーセレンに比べ築盛層が薄くなるため、色調再現が難しい。これは、金属との機械的な維持のためにリテンションビーズが必要なことと、そのビーズを埋めるためにオペーク層が厚くなるためである。その結果、色調再現のために必要なボディレジンの層が十分に確保できず、口腔内で白っぽく見えることが多い。
エプリコードは、このような硬質レジンの現状を踏まえ、薄い層での色調再現にこだわって開発を行った結果、約0.5mmの築盛層があればシェードガイドに近い色調が再現できるようになっている(図4)。
2. 質感の向上
エプリコードでは、光の波長に比べて小さいフィラーを高密度に分散させることにより、素材自体の白濁感を軽減し、硬質レジン特有の青白みを解消している。そのため、ポーセレンに比べても遜色ない質感を表現できるようになった(図5、6)。
3. 簡便に高度な色調再現が行える
硬質レジン製作に際し、ドクターから色調に関して得られる情報は少ない。通常はシェードの指示のみであり、限られた情報の中で色調の差別化を図ることは容易でない。
エプリコードでは、簡便な操作である程度の差別化を図れるようオペークのバリエーションを増やしている。
・サービカルオペーク
歯頸部で見られるオペーク色の反映は、避けがたい色調表現上の問題点であるが、この部分に本品を薄く塗布するだけで、口腔内で調和のとれた前装冠の製作が行える(図7)。
・インサイザルオペーク
やむを得ず切縁部にメタルバッキングが必要な場合には、本品を用いることにより簡単に切縁部の透明感を再現することができる(図8)。
4. 幅広い色調表現が可能
高度な色調表現にも対応できるよう以下のペーストを用意している(図9~12)。
①エフェクト:個性的な色調表現が行えるよう、TB、WE、CE、AM、CTの5色を用意している。
②オペークデンチン:色調に深みを出す場合やポンティックの基底面、カラーレス前装冠などに用いることにより、審美性を向上させることができる。
③オペークモディファイヤー:W、Pの2色を用意している。
5. 新しいシェード
エプリコードでは、ビタ16シェードの他にノリタケシェードガイドに準じた4色の色調を追加した。
まず、臨床的によく見られるビタシェードに比べ、ピンクオレンジ系の歯牙の色調を再現するために2色のNAシェードを加えた。本品により色調の選択肢が広がり、口腔内での色調再現性が向上している(図13)。また、最近の審美修復の分野でブリーチングが注目されているが、エプリコードでは歯を白くしたいという患者の要望に応えたり、ブリーチング修復後の歯牙に色調が合わせられるようNWシェードを2色追加した(図14)。
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図4a 口腔内写真( 1エプリコード) -
図4b 口腔内写真( 1他社品) -
図5 白濁感の軽減 -
図6 ポーセレンとの比較( 1ポーセレン、1エプリコード) -
図7a サービカルオペークなし( 1 1 ) -
図7b サービカルオペークなし( 1 1 ) -
図8 インサイザルオペークを使用した症例( 1 1 ) -
図9 オペーシャスデンチン -
図10 エフェクト -
図11 オペークモディファイヤー -
図12 ジンジバル -
図13 ピンクオレンジシェード(左:NP1.5、右:NP2.5) -
図14 ホワイトニングシェード(左:NW0、右:NW0.5)
●経済性
1. 操作性
エプリコードは、効率的に技工操作が行えるよう形態保持性を考慮したペースト性状になっている。多数歯においても付形中に形態が崩れることがなく形態付与が容易である(図15)。
また、重合時間については、予備重合時間を短縮することにより、スムーズな技工操作が行えるようになっている(図16)。さらに、研磨性についてはガラスフィラーの微細化によりセシードより改善され向上している。このように、エプリコードは審美性だけでなく、操作性の点でもより使い易くなっている。
2. 半量シリンジ
審美修復材料は、あらゆる色調の歯牙に対応できるよう多くのシェードを用意している。しかし、実際にはビタ8色程度で8~9割の使用量を占めており、残りのシェードの使用頻度は少なく、購入はしたものの殆ど使わなまま使用期限を過ぎてしまうことが多い。
エプリコードでは、こういった使用頻度の低いシェードの容量を減らし、在庫リスクの軽減を図っている。
●耐久性
上記の審美性や操作性といった性能を維持しながら、セシードで定評のあった物性を維持しているが、硬質レジンとして重要な特性である耐摩耗性については逆に向上させている。これは、フィラーの表面処理に新しい技術を採用し、フィラーとレジンマトリックスの一体化を図ると共に、マトリックス自体も微細フィラーの配合により強化したためである。また、硬質レジンは、主に前装冠に用いられることが多いが、金属との接着耐久性に関しても優れたものとなっている(図17~20)。
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図15a 形態保持性(エプリコード) -
図15b 形態保持性(他社品) -
図16 重合時間 -
図17 圧縮強度 -
図18 曲げ強度 -
図19 耐摩耗性 -
図20 金属接着性
使用方法
技工術式に関しては、他のレポートを参照頂きたい。ここでは、口腔内補修の方法について説明する。エプリコードは、陶材や硬質レジンの口腔内リペアーに使用することができる。本材を使用することにより、充?材では実現できない審美性、滑沢性に優れる審美修復材料の補修が行える。
使用ステップの概略については、図21にまとめた。
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図21a 破折面の整形 -
図21b 破折面の酸処理 -
図21c 金属接着プライマーの塗布(金属露出の場合) -
図21d ボンディング材の塗布 -
図21e オペークレジンの塗布・重合(金属露出の場合) -
図21f ボディレジンの築盛・重合 -
図21g 形態修正、仕上げ、艶出し
まとめ
歯冠用硬質レジンは、保険収載された修復材料であることから、価格や操作性だけが重要視されがちであるが、今後は審美性を中心とした差別化が必要になると考えられる。
エプリコードは、21世紀の歯冠用硬質レジンとして、患者に喜んでもらえるような美しい硬質レジンを簡単な操作で製作することが可能であり、本品を用いて修復することにより歯科医院の評判を高めると共に、テクニシャンにとってもメリットのある材料になると確信している。
目 次
モリタ友の会会員限定記事
- TRENDS 歯冠用硬質レジン「エプリコード」について
- WORKING GUIDE SERIES よりよいモノを -What’s a EPRICORD-
- CLINICAL REPORT 3次元画像診断装置(3DX)が切り開く新次元 -5,700症例を経験して-
- CLINICAL REPORT イビキと睡眠時無呼吸症候群の歯科的治療Ⅱ
- CLINICAL REPORT Post Modern Dentistry 7 デンタル・ドック(Ⅱ) マルチメディア・デンタル・ドック(その4)
- ドクター招待席 “世のため人のため、縁の下の力になれ!”そう励まされつつ、歩き続けた浪花節的半生。家族も友人も永遠に変わらない心の財産。
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