104号 WINTER 目次を見る
目 次
マルチメディア・デンタル・ドック
ステップ2
デンタル・ドック・ステップ2は、以下の6セクションに分かれます。
セクション1
・スタディ・モデルによる共同検査
セクション2
・レントゲン画像による共同検査
セクション3
・咀嚼系咬合検査
・咬合系の筋肉触診検査
・T.M.J.検査
・咬合器による咬合分析
セクション4
・唾液腺・リンパ腺の検査、口腔粘
膜の検査(口腔癌の検査含む)
セクション5
・歯周病の検査
セクション6
・歯牙及び審美の検査と分析
・唾液検査
今号では、セクション3「T.M.J.検査」について解説します。
セクション3
咬合検査は、以下の順序で行います。
①インタビュー
②筋肉触診
③T.M.J.の検査
④咬合接触の検査
⑤アンテリアガイダンスの検査
⑥その他咬合
T.M.J.検査
下顎関節触診・下顎関節聴診・不快感・T.M.J.加圧テスト・咬合の分類・T.M.D.分類、T.M.J.・X-rayなどの入力を行います(写真1)。
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写真1 T.M.J.の入力画面
下のスタートボタンを押すと、Bilateral Manipulationの方法がビデオで示されます。
<下顎関節触診>(写真2)
下顎関節の触診を行います。
<下顎関節聴診>(写真3)
クリック音、捻髪音の聴診を行います。
<不快感>
不快感が、急性のものなのか、慢性なのか、インタビューします。
<T.M.J.加圧テスト>(図1~4、写真4)
顆頭が正しく円板と共に関節窩の最上方部の中心位に誘導することができるかを知ることが重要です。
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写真2 下顎関節触診 -
写真3 下顎関節聴診 -
写真4 T.M.J.加圧テスト -
図1 T.M.J.加圧テスト -
図2 加圧時、顆頭― 円板集合体の排列が悪いとき、圧痛があります。 -
図3 加圧時、顆頭― 円板集合体の位置が中心位にないとき、圧痛があります。 -
図4 加圧時、関節面に病変があるとき、圧痛があります。
※図1~4:P.Dawsonより
顆頭が円板の中央部の無血管で十分に圧力に耐えられる部位に位置付けられた正しい配列であること。
かつ、顆頭― 円板集合体が関節窩の最上方位にある時、顆頭は快適な位置にあると言えます。
すなわち中心位に位置していることです。(解剖学的調和)
・中心位とは、下顎が正常な筋機能により強力に挙上されている時の部位です。それは外側翼突筋の緊張していない位置とも言えます。
このことは、他の挙上筋(咬筋・側頭筋・内側翼突筋)に対して無理に外側翼突筋が牽引保持する必要のない位置と言えるでしょう。
・中心位とは、咬合干渉のないこと、顆頭と円板集合体が筋肉と調和した関節窩内の位置と言えます。(生理学的調和)
したがって、顆頭― 円板集合体が、
・正しく排列しているか?
・正しく中心位にあるか?
を検査する必要があります。
そのためには、中心位加圧テストを行う必要があります。
下顎を両手誘導法(Bilateral Manipulation)で中心位に誘導し、T.M.J.方向に力を加えます。
<咬合の分類>(図5)
◎咬合の分類について
中心位は健康な顆頭― 円板集合体の正しく配列した下顎顆頭が関節窩の最上方に位置されたものです。
しかし、T.M.J.が構造的に変形、円板と顆頭が多少のずれがあっても挙上筋の圧力を違和感なく受け入れている場合があります。この場合、加圧テストを行っても圧痛はありません。この様なT.M.J.を、Adapted Centric Posture (A.C.P.)と定義されます。
そして、最大嵌合と中心位との関係を検査し、かつ、T.M.J.加圧テストを行い、咬合の分類を行います。
・タイプⅠ
最大嵌合位と中心位とが調和しているケース。
・タイプⅠA
最大嵌合位とA.C.P.とが調和しているケース。
(以上2つのタイプは咬合治療の最終目標)
・タイプⅡ
顆頭が最大嵌合位の方向に咬合干渉があり、中心位から変位しているケース。
・タイプⅡA
顆頭が最大嵌合位の方向に咬合干渉があり、A.C.P.から変位しているケース。
(これらは神経筋肉機構を遮断した後中心位に誘導しうるケースです)
・タイプⅢ
中心位やA.C.P.が証明できないケース(加圧テスト+)。筋肉をリラックスさせた後、中心位およびA.C.P.に誘導できるケース。
・タイプⅣ
T.M.J.に進行性の疾患を有し、T.M.J.の変形が進んでいるケース。咬合との関係を作ることはできません。
以上の分類は、咬合治療の治療計画を立てるに当たって重要な指針になります。
-
図5 咬合の分類
<T.M.J. X-ray>(写真5)
T.M.J.のレントゲンは所見を入力します。
・関節窩異常
・関節顆頭異常
・円板前方変位
・円板後方変位
・その他
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写真5 T.M.J. X-ray
<T.M.D.分類(Piper)>
◎パイパーの分類(Piper Classification)
Ⅰ 健全なT.M.J.(構造的正常)(図6)
StageⅠ 付着部非弛緩型(正常)
・顆頭― 円板集合体が正しく配列。
・顆頭から圧力(挙上筋)が耐圧部にかかる。
・後方靭帯は円板から前方に偏位しないように顆頭をつなぎとめている。
・円板後部組織(神経血管豊富)も安静。
・外側翼突筋の上腹が円板をつなぎとめている。
Ⅱ 関節円板無転位付着部弛緩型(図7)
StageⅡ 関節円板無転位付着部弛緩型
・外側翼突筋が過剰収縮(下顎変位)して円板を持続牽引。
・後方靭帯は健全。
・外側極の後方靭帯が弛緩(内側正常)。
・間欠性クリック始まる。
Ⅲa 関節円板内方変位(図8)
StageⅢa
・外側翼突筋が過剰収縮(下顎変位)して円板を持続牽引。
・後方靭帯が弛緩(伸びる)。
・円板変位、円板後方部圧迫。
・円板後肥厚帯が平坦。
Ⅲb 関節円板中心部部分前方変位(図9)
StageⅢb 外側極の慢性相反性クリック
・外側翼突筋上腹の筋線維が伸びる。
・後方靭帯が進行性に伸展、ちぎれる。
・咬合圧は円板半分にかかる。
Ⅳa 関節円板外極部前方転位(図10)
StageⅣa 外側極の円板前方偏位
・ドプラー回転無音滑走的クリック。
・外側翼突筋上腹が持続的に牽引する。
・顆頭― 円板集合体は斜面に引きおろされる。
・挙上筋が顆頭を押し上げる(咬合干渉)。
・円板後方靭帯および内側極、外側極の靭帯を引き伸ばす。
・挙上筋が顆頭を引き上げることに対抗して円板を前方に持続牽引し、前に引きおろす。
・円板、円板後方組織、後方靭帯の進行性変型が起こる。
Ⅳb 関節円板完全前方転位(図11)
StageⅣb 関節円板完全前方転位
・円板がさらに前方偏位。
・円板後方肥厚部が変型。
・後方靭帯が伸展。
・外側翼突筋上腹の長期牽引(外側極が慢性クローズドロック、内側極慢性相反性クリック)。
・円板は顆頭前方で完全にロック。
・後方靭帯がさらに伸展。
・挙上筋により、顆頭から円板後方に圧力(クローズドロック)。
・後方組織(神経、血管豊富)を圧迫、疼痛。
・円板は顆頭の前にたたまれる(長期にわたって円板後方に圧力がかかった印)。
Ⅴa 関節円板穿孔(図12)
StageⅤa
・関節崩壊の最終段階。
・顆頭はすり減り、関節窩も平坦。
・円板が完全偏位、円板後部に鎮座。
・円板の穿孔。
・骨と骨の接触。
Ⅴb 関節円板線維性癒着(図13)
StageⅤb
・骨変性関節炎。
・関節円板の癒着。
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図6 Ⅰ 健全なT.M.J.(構造的正常) -
図7 Ⅱ 関節円板無転位付着部弛緩型 -
図8 Ⅲa 関節円板内方変位 -
図9 Ⅲb 関節円板中心部部分前方変位 -
図10 Ⅳa 関節円板外極部前方転位 -
図11 Ⅳb 関節円板完全前方転位 -
図12 Ⅴa 関節円板穿孔 -
図13 Ⅴb 関節円板線維性癒着 -
図14
※図6~11:M.Piperより
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