110号 WINTER 目次を見る
■目 次
- ≫ はじめに
- ≫ パナビアF 2.0の特徴
- ≫ 適応症例
- ≫ 使用手順
- ≫ さいごに
■はじめに
1998年8月に「パナビアフルオロセメント」を上市してから5年が経過する。「パナビアフルオロセメント」は「パナビア21」を基盤にフッ素徐放性とデュアルキュアの2つの機能を付与し、さらなる歯科医療の発展に貢献し得ることを追求して開発した接着性レジンセメントである。
特にデュアルキュア機能における光硬化はオキシガードⅡの塗布省略やチェアータイムの短縮といった操作性の向上にも寄与するが、本質的にはセメントラインのシャープな硬化と耐摩耗性の向上を達成するために付与した機能である。
「パナビアフルオロセメント」にはその光硬化特性を支える技術として独自の高感度光触媒を採用しているが、近年、高出力かつ様々な光源を用いた光照射器が次々に登場するなか、これらの光照射器に対応するとともに、光硬化特性がより一層向上した「パナビアF 2.0」を開発した。
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図1 パナビアF 2.0 ペースト
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図2 EDプライマーⅡ
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図3 アロイプライマー
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図4 オキシガードⅡ
■パナビアF 2.0の特徴
「パナビアF 2.0」は「パナビアフルオロセメント」と同様に、接着セメント<パナビアF 2.0 ペースト>(図1)、歯質接着性プライマー<EDプライマーⅡ>(図2)、金属接着性プライマー<アロイプライマー>(図3)、および表面硬化剤<オキシガードⅡ>(図4)より構成される。
その特徴は、「パナビアフルオロセメント」から継承されたフッ素徐放性(図5)とデュアルキュアの2つの機能を有することだけでなく、デュアルキュア機能の面で“各種光源の光照射器へ対応したこと”および“光硬化特性を向上させたこと”であり、接着性レジンセメント特有の光硬化特性をさらに活かすことを狙ったものである。
なお、歯質・各種修復材料への接着強さ(図6)や機械的強度についても、「パナビアフルオロセメント」と同様に高い性能を発揮する。
1. 各種光源の光照射器への対応
「パナビアフルオロセメント」に採用した独自の高感度光触媒は、紫色の可視光線およびそれより短波長の光で活性化するもので、セメントラインのシャープな硬化と耐摩耗性の向上においてその優位性がある。
「パナビアF 2.0」ではこの高感度光触媒とともに青色の可視光線で活性化するカンファーキノンをバランス良く配合したこと(Twin Photo InitiatorSystemと称する)で、これら臨床上のメリットを維持しながら440~500nmの狭い波長域のプラズマアーク照射器や、LED照射器も使用できるようになった(図7)。
また、「ハイパーライテル」や「アークライトⅡM」のような高出力タイプの光照射器を使用する場合、それらの照射性能の恩恵に浴し照射時間を大幅短縮できることも臨床上大きなメリットとなる(図8)。
2. より一層向上した光硬化特性
独自の高感度光触媒とカンファーキノンを組み合わせたことにより、「パナビアフルオロセメント」と比較して、硬化深さ(図9)や耐摩耗性(図10)の面でも光硬化特性の向上を果たした。その一方、相反する性質である環境光による硬化反応を「パナビアフルオロセメント」より遅くすることができ、ペースト採取から合着までの一連の操作でゆとりが拡がった(図11)。
相反する特性を両立できたのは、活性化波長が異なる2種類の光触媒を環境光や光照射器の光の波長に合わせてバランス良く配合したことによるものである。
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図5 フッ素徐放のメカニズム
独自に開発した「特殊処理フッ化ナトリウム」を配合しており、フッ素徐放機能を有している。特殊処理の作用により、本来の接着性能、理工学的特性を損なうことなく、フッ素イオンを放出する。
図6 歯質・各種修復材料への接着強さ(サーマルサイクル3,000回後)
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図7 パナビアF 2.0の光重合波長域
図8 各種光源の光照射器と照射時間
■適応症例
「パナビアF 2.0」は「パナビアフルオロセメント」と同様に、金属製のクラウン、ブリッジおよびインレー等の一般合着をはじめ、高い接着強度および材料強度が要求されるハイブリッドセラミックス「エステニア」やポーセレンのような審美的な補綴修復材料の合着、支台築造(メタルコアの合着、ポストの固定およびコンポジットレジンの接着)、さらには接着ブリッジ、接着スプリントなど適応症例は多岐にわたる(図12)。
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図9 硬化深さ
図10 耐摩耗性
図11 環境光への安定性
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図12 パナビアF 2.0のシェードと適応症例
■使用手順
「パナビアF 2.0」の使用手順は「パナビアフルオロセメント」と同様であるが、基本的な使用手順を以下にまとめる。詳細は製品の添付文書をご覧いただきたい(図13)。
1. 補綴修復物の前処理
金属表面はサンドブラスト処理をおこない、特に貴金属合金の場合は「アロイプライマー」を塗布する(卑金属の場合は「アロイプライマー」の塗布は不要)。
ポーセレン、ハイブリッドセラミックス「エステニア」、コンポジットレジン硬化物の場合は、その補綴修復材料に応じてサンドブラスト、リン酸処理後に「クリアフィルポーセレンボンドアクティベーター」と「クリアフィルメガボンド」のプライマーの混和液にてシラン処理をおこなう。
2. 窩洞・支台歯の前処理
窩洞・支台歯全面に「EDプライマーⅡ」を塗布し、30秒間放置後、エアーブローで確実に乾燥する。
根管内および窩洞の隅角部は「EDプライマーⅡ」の液溜まりができないよう、ブローチ綿花、ペーパーポイント等で余剰のプライマーを吸い取った後、エアーブローで確実に乾燥をおこなう。
支台歯が貴金属合金の場合は「EDプライマーⅡ」の塗布に先立ち「アロイプライマー」を塗布しておく。
なお、支台築造など象牙質への接着に維持力を求める場合や、仮封材の残留による影響が懸念される場合には、リン酸処理後、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする「ADゲル」にて歯面処理をおこなう(ADゲル法)。
3. ペーストの採取~合着
シリンジからAペーストとBペーストを等量採取し、20秒間均一になるまで練和する。
ペーストはデュアルキュアタイプ(光硬化+化学硬化)であるため、継続して操作をおこなわない場合は必ず遮光板で保護しておく。
Bペーストにはブラウン、ライト、ホワイト、オペークの4色を揃え、症例に応じた色調選択が可能である。
合着の手順は、「EDプライマーⅡ」を塗布していない補綴修復物側にペーストを塗布し、窩洞・支台歯に圧接する。
その後、補綴修復物から溢れた余剰ペーストを小筆等でできるだけ丁寧に除去してから、ホワイト、ブラウン、ライトを使用した場合は、必要に応じて一カ所につき、従来型ハロゲン照射器およびLED照射器では20秒間光照射し、高出力ハロゲン照射器およびプラズマアーク照射器では5秒間光照射し、ペーストを硬化させる。
光照射をおこなわない場合、または、オペークを使用する場合は、余剰ペーストを除去した後、補綴修復物の辺縁部に「オキシガードⅡ」を塗布し、3分間以上放置してペーストを化学硬化させてから水洗除去する。
図13 各種修復物の合着のフローチャート
■さいごに
接着性レジン材料は日進月歩で新たな製品が生まれているが、歯科医療の目指す、生体への侵襲を最小限とした長期的に安定した機能の回復および審美性の回復を達成するために、当社では「メタルフリー接着修復」をひとつのキーワードとして材料開発を進めている。
その中でも接着性レジンセメントは重要な役割を果たすと考えており、審美的に優れたコンポジットレジン、ハイブリッドセラミックス、その他各種セラミックス等の修復材料を長期的に安定して接着させるため、その高い材料物性をより臨床的に有用な方向に改良してゆくことを目指している。
「パナビアF 2.0」は、接着性レジンセメントの特徴的な物性のひとつである「光重合特性」に焦点を置き、耐摩耗性の向上をもたらす光硬化特性をアップさせるとともに光照射における操作性の向上を達成した。
このように「パナビアF 2.0」は、今後よりよい審美性や耐久性を求める先生方の臨床の一助となるよう、当社が期待を込めて是非ご紹介させていただきたい製品である。
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