120号 SPRING 目次を見る
■目 次
- ≫ はじめに
- ≫ クリアフィルエステティックセメントキットの特長
- ≫ 適応症例
- ≫ 使用手順
- ≫ まとめ
■はじめに
昨今の審美修復材料の潮流として、従来から幅広く臨床応用されているシリカ系セラミックスだけでなく、CAD/CAMシステムの進化に伴い、ジルコニア系セラミックス、アルミナ系セラミックスなど新たな材質が登場している。
また、ハイブリッドセラミックスなどの無機物フィラーを高密度に含有したレジン系材料もその応用範囲の広さから臨床における使用頻度が高くなっている。
「クリアフィルエステティックセメントキット」(写真1、2)はデュアルキュアによるセメントラインのシャープな硬化とともに耐摩耗性に優れたコンポジットレジンセメントであり、多様化した修復材料に対応する接着性、色調/透明性のバリエーションを持つことから審美修復に積極的に使用できる製品である。
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写真1 スターターキット -
写真2 コンプリートキット
■クリアフィルエステティックセメントキットの特長
「クリアフィルエステティックセメントキット」は自動練和チップ/シリンジを採用したコンポジットレジンセメント<クリアフィルエステティックセメントペースト>(写真3)、色調確認材料<クリアフィルエステティックセメントトライインペースト>(写真4)、歯質接着用プライマー<EDプライマーⅡ>(写真5)、セラミックス処理材<クリアフィルセラミックプライマー>(写真6)、リン酸エッチング<KエッチャントGEL>(写真7)より構成される。
キットは<クリアフィルエステティックセメントペースト>5色の半量タイプと<クリアフィルエステティックセメントトライインペースト>5色と各種接着材料を組み合わせた「コンプリートキット」と<クリアフィルエステティックセメントペースト>1色と<クリアフィルエステティックセメントトライインペースト>1色と各種接着材料を組み合わせた「スターターキット」(ユニバーサル/ブラウン/クリア)セットがある。
① コンポジットレジンセメントの性質
補綴修復物の接着には歯質・修復材料への接着性と共に、セメント自身の強度も重要であると考えられる。機械的特性(耐摩耗性・曲げ強度・圧縮強度など)に劣るセメントの場合、歯ブラシや咬合によりセメントラインが摩耗することで、着色の原因となったり、補綴修復物の破折を誘発する可能性がある(図1)。
「クリアフィルエステティックセメントペースト」は従来からのコンポジットレジンセメントが持つ特性をさらに発展させ、架橋構造を持つマトリックスに高密度に無機フィラーを含有することによって高い機械的特性を実現している(写真8、図2)。
② 色調/透明性のバリエーション
「クリアフィルエステティックセメントペースト」は5つの色調/透明性のバリエーションがあり、幅広い用途に対応する<ユニバーサル> を中心とし、<ブラウン><クリア><ブリーチ><オペ-ク>より構成される。また、各ペースト硬化物の色調に対応する色調確認材料「クリアフィルエステティックセメントトライインペースト」を用いることにより、接着操作前に色調確認が行えるシステムとしている(写真9、10)。
③ 各種審美修復材料に対応する接着性
「クリアフィルエステティックセメントペースト」は対象となる被着面に応じた接着処理を行うことで各種審美修復材料への高い接着性を発揮する(図2)。
歯質に対してはパナビアF2.0で実績のある「EDプライマーⅡ」を使用する。EDプライマーⅡとペーストが接触することにより、速やかに硬化が開始されるメカニズムである点もパナビアF2.0と同様となっている。
セラミックスに対してはリン酸エッチング塗布・水洗・乾燥後に「クリアフィルセラミックプライマー」を使用する。「クリアフィルセラミックプライマー」はシランカップリング材とMDPを含有することにより、1液で各種審美修復材料に対応する点が特長である。
金属に対しては「アロイプライマー」(別売)を使用する。「アロイプライマー」は貴金属、卑金属に幅広く対応する金属用接着プライマーである。
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写真3 セメントペースト -
写真4 トライインペースト -
写真5 EDプライマーⅡ -
写真6 クリアフィルセラミックプライマー -
写真7 KエッチャントGEL -
写真8 クリアフィルエステティックセメントペースト硬化物の構造 -
写真9 クリアフィルエステティックセメントペースト硬化物とクリアフィルエステティックセメントトライインペーストの色調比較 -
写真10 クリアフィルエステティックセメントペースト硬化物、パナビアF2.0ペースト硬化物、クラパール(DC)ペースト硬化物の色調比較
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図1 強度不足のセメントによるトラブル -
図2 機械的特性、歯質及び各種修復材料への接着強さ
■適応症例
「クリアフィルエステティックセメントキット」は高い接着力及び材料強度が要求されるポーセレンやセラミックス材料、ハイブリッドセラミックス「エステニアC&B」のような審美的な補綴修復物の接着、支台築造に適応可能である。また、「アロイプライマー」を併用することにより金属材料にて作成したクラウン、インレー、接着ブリッジ、接着スプリントなどの一般合着にも使用可能である。
■使用手順(図3)
1. 補綴修復物の前処理
セラミックス材料、無機物フィラーを含有するレジン系材料「エステニアC&B」などの場合は、その補綴修復材料に応じて30~50μmアルミナサンドブラスト(0.1~0.2Mpaの空気圧で)水洗・乾燥、リン酸エッチング塗布・水洗・乾燥後に「クリアフィルセラミックプライマー」塗布を行う。金属材料の場合、30~50μmアルミナサンドブラスト(0.3~0.4Mpaの空気圧で)水洗・乾燥、「アロイプライマー」の塗布を行う。
2. 窩洞、支台歯の前処理
窩洞・支台歯全体に「EDプライマーⅡ」を塗布し、30秒間放置後、エアブローにて確実に乾燥する。根管内及び窩洞隅角部は「EDプライマーⅡ」の液だまりができないよう、ブローチ綿花、ペーパーポイントなどで余剰のプライマーを吸い取った後、エアブローで確実に乾燥を行う。
支台歯が金属の場合(貴金属・卑金属共通)は「EDプライマーⅡ」の塗布前に「アロイプライマー」の塗布を行う。
3. ペーストの採取~接着
「クリアフィルエステティックセメントペースト」は採取が簡便な自動練和チップ/シリンジを採用している。
ミキシングチップの装着前には少量ペーストを押し出し、A・Bペーストが均等に出ることを確認する。ミキシングチップを装着し、ペーストを採取し、補綴物修復内面へ塗布し、窩洞・支台歯に圧接する。
その後、余剰セメントを小筆、綿球などを用い、できるかぎり丁寧に除去した後、一ヵ所につき従来型ハロゲン、LED照射器では20秒間、高出力ハロゲン及びプラズマアーク照射器では5秒間光照射し、ペーストを硬化させる。
※取り扱い上の注意・クリアフィルエステティックセメントペーストはデュアルキュアタイプ(光+化学重合)であるため、ミキシングチップを遮光し、環境光による硬化促進に注意する必要がある。
・クリアフィルエステティックセメントトライインペーストは色調確認用のペーストで重合硬化しない。
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図3 操作ステップの概要
■まとめ
レジンセメントは「メタルフリー接着修復」を行う上で重要な役割を果たすと考えられる。その中で「クリアフィルエステティックセメントキット」は耐摩耗性と各種補綴修復材への接着性、さらに色調/透明性バリエーションを有することにより、より有用な臨床応用ができる製品として、先生方へ新たに提案させて頂く。
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