117号 SPRING 目次を見る
■目次
- ≫ はじめに
- ≫ 1. インナーワックス
- ≫ 2. サービカルワックス
- ≫ 3. ハードワックス
- ≫ 4. ストーンハードワックス
- ≫ おわりに
■はじめに
昨今、歯科技工界においてCAD/CAM、オ-ルセラミックスなど新材料や新技術の進歩が著しく、脚光を浴びている。しかし、補綴物製作においてはロストワックス法が大半を占め、技工界を支えているのが現状である。
現在、多くのメーカーから様々な用途のワックスが販売されている。カービング法、盛り上げ法などの技法に対して、ワックスの選択は好き嫌い、慣れなどワックス操作のしやすさなどの観点から選択されていることが多いと思われる。
ワックスアップの大きな目標、目的の一つに補綴物の適合精度を上げることが大事と考えられる。より良い補綴物を求め、新しいワックスにTryしていくことも大事であろう。
そこで私たちは、今回新しく発売されたカールベルグクラウンワックスを使用しての簡単な実験及び、実際に使用しての操作性などの感想を述べてみたい。
■1. インナーワックス
色調はグリーンが用意されている(図1)。
このワックスは石膏模型面において流れがよく収縮も少なく追加でワックスを盛る際も、境目がスムーズである(図2、3)。また、適合において最も重要なのは石膏模型に密着していることである。そこでインナーワックスを用いて簡単な実験により可視的評価を行い密着状態を観察してみた。
実験使用材料と方法
ワックスを内面から確認するためにすりガラスを用い、その上にワックスを盛り、裏から観察することで、密着状態を確認する。分離材は筆者が臨床で使用しているシーサーバリアを用いた。
結果、密着度は高く、粘性が少ないためインナーワックスとしての要件は満たしていると思われる(図4、5)。
ストーンハ-ドワックスをインナーワックスの上に盛った実験においても浮き上がりはなく、しっかりとした密着状態を確認できたので、相性は良いと思われる(図6、7)。
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図1 インナーワックス。グリーン色をしている。 -
図2 インナーワックスの盛り上げ。石膏模型面において流れが良い。 -
図3 インナーワックスを一層コーティングした状態。 -
図4 表から見た状態。 -
図5 裏から見た状態。はがれた所は見当たらない。 -
図6 ストーンハードワックスを重ねて盛った状態。 -
図7 裏から見た状態。良好に密着している。
■2. サービカルワックス
色調はブリリアントレッドが用意されている(図8)。マージン部のワックスとして視認性に優れ、マージン部の密着状態を確認しやすくするために、透明感が強くなっている。
盛り上げ感はベタベタした感じは無く、削った感じも適度な硬さがあり、切削カスも付着しにくいためマージン操作が楽であった(図9、10)。
弾性にも優れているため、ワックスパターンの着脱を行うにおいても変形が少ないと思われる。
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図8 サービカルワックス。透明感があり、マージン部が確認やしすくなっている。色はブリリアントレッド。 -
図9 サービカルクックスの盛り上げ。マージン部をオーバーさせて盛り上げている。 -
図10 サービカルワックスを盛り終わったところ。マージン部が透けて確認できる。
■3. ハードワックス
色調はレッド、ブルー、アイボリー、グレーの4種類が用意されている(図11)。
このワックスは後述するストーンハードワックスと同じ特長を持っているが、ストーンハードワックスよりもやわらかいワックスとなっている。
咬合面を除く頬舌側など歯冠の回りに盛る際、追加ワックスとのなじみも長く、手早く外形を築盛しやすい(図12〜14)。
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図11 ハードワックス。カラーはグレー、ブルー、レッド、アイボリーの4色が用意されている。 -
図12 各カラーのワックスを型に流し、視認性の確認。オペーク感が強調され、ワックスパターンの表面性状、視認性は高い。 -
図13 適度なフローにより追加も自然な継ぎ目で盛りやすい。 -
図14 ハードワックスによって歯冠全周の豊隆を盛り上げて形成する。
■4. ストーンハードワックス
色調はハードワックスと同じレッド、ブルー、アイボリー、グレーの4種類が用意されてあり、歯冠形態を回復するためのワックスである(図15)。
今までのワックスよりも硬度があり、ワックスパターンの表面性状、視認性を高めるために、オペーク性を強めてあるので、不透明度が高く、内部を透かしにくい色調となっている(図16)。
特長は、単に硬いのではなく、適度な弾力を備えているため、カービング操作が楽で、適度にフローがあり、盛り上げも楽に行える(図17)。
また、切削感がシャープで彫刻しやすく、切削カスがワックスパターンに付着しにくいため、刷掃性に優れている(図18〜20)。
また、硬さがあるのでミリングワークにも使用することができる(図21〜23)。
個人的にはもう少し硬くてもいいかなと思うが、十分に臨床に応用できる。
最後にワックスアップとアズキャストの比較写真(図24〜28)を紹介する。
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図15 ストーンハードワックス。ハ-ドワックスと同じグレー、ブルー、レッド、アイボリーの4色が用意されている。 -
図16 ストーンハードワックスのワックスパターン。 -
図17 盛り上げ法による咬合面の回復。 -
図18 他社のワックスによるカービング。エバンスやワックスパターンにワックスが付着してしまい操作性が悪い。 -
図19 カールベルグワックスでは切削感がシャープで切削カスも付着しにくい。 -
図20 ワックスアップの完成。 -
図21 ワックスミリングにおいても、硬さがあるため安心してミリング操作を行える。 -
図22 ワックスミリングの終了したワックスパターン。ミリング面もきれいである。 -
図23 ミリング面の完成。 -
図24 ワックスパターン頬側面観。 -
図25 アズキャスト頬側面観。 -
図26 ワックスパターン咬合面観。 -
図27 アズキャスト咬合面観。 -
図28 研磨完成。
■おわりに
今回、実際にカールベルグワックスを使用してみて感じたことは、ストーンハードワックスにおいては、従来のワックスより切削感がよく適度な硬さを持っているため、非常に使いやすい。
インナーやサービカルワックスにおいてもベタベタした感じが無く扱いやすいワックスであると思う。
また、各ワックスが必要な条件を満たしているため、安定した適合が得られると考えられる。この種のワックスにしては、価格も安価なのでエンドユーザーとしても大変ありがたい。
各社から様々な材料が販売され、エンドユーザーとしては何がいいのか悩む所だと思いますが、本稿が新しいワックスを選ぶ際のひとつの参考となれば幸いです。
- 1) 根〆 まり:ワックスアップ 歯科技工別冊,2003.
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