126号 AUTUMN 目次を見る
CLINICAL REPORT
SPIシステムを用いた前歯部インプラントのティッシュ・マネージメント
■目 次
■はじめに
インプラントの適応拡大と共に、前歯部インプラント症例が次第に増加してきている。前歯部では臼歯部と異なる点は審美性の獲得であるが、生物学的には一般に臼歯部に比べ、歯槽堤の舌的幅径が小さく、困難な条件の中で行わなければならない。
もちろん審美性については、患者のスマイルライン、要望、それに引き替えになる手術的侵襲などを考慮し、総合的に治療計画を立案する必要があるが、近年、より審美的要求の強い患者が増えていることも事実である。
一方治療計画においては、被抜去歯の感染の有無、唇側骨壁の状態、残存歯槽骨の幅径、などを考慮し立案していくが、患者に対する手術侵襲の軽減のため、極力手術回数を減じつつ、理想的な治癒を求めるという、歯周病専門医としても、かなり高いハードルをクリアしなくてはならない。
被抜去歯にはエンド病変、破折など何らかの感染があることが多く、これらでは同時に唇側骨壁の破壊を伴い、この回復を図る必要があるため、抜歯窩即時埋入の適応は意外と少ない。また、歯槽堤の回復のためには骨造成を図るハード・ティッシュ・マネージメント、歯肉移植により回復を図るソフト・ティッシュ・マネージメントの両者の応用を考える必要がある。
SPIインプラントシステムでは、術式がシンプル(使用ドリルの本数が少ない)、またフィクスチャーのセルフタップにより初期固定の獲得が確実、などの特色を有する。
また今回使用したテーパー型の“Contact”では、先端の径が細いため本症例のような唇舌的に狭小な歯槽堤でも初期固定をきちんと得ることが可能となる。
今回はSPI Contactインプラントを使用し、抜歯後軟組織のみの治癒を待つ、いわゆるImmediate delayedでインプラントを埋入し、同時にハード・ティッシュ・マネージメント(GBR法)にて骨造成をはかり、さらに2次手術時にさらなる歯槽堤の形態の改善を図るために結合組織移植によるソフト・ティッシュ・マネージメントを行ったケースを紹介する。
■症例供覧
症例は36歳女性。上顎右側中切歯部の腫脹を主訴に来院した。
患者はさまざまな治療オプションのうちインプラントによる治療を希望した。
治療計画として、
- ①感染があるため抜歯を先行
- ②抜歯後、軟組織の治癒を待ちCTスキャンの撮影
- ③1ヵ月後にインプラント埋入(Immediate delayed placement)+GBR
- ④5ヵ月後、2次手術時に結合組織移植の併用という治療計画を立案、実行した。
(以下は写真を参照)
患者は外科的治療に対する恐怖心が強く、2度の手術侵襲、特に結合組織移植を受けることに躊躇したが、鎮静法を併用することで患者の恐怖心を軽減し、また迅速な手術を行うことで極力術後の不快症状を低減することを心がけた。
結果、患者も最終補綴の仕上がりには満足してくれている。
図1 患者は36歳の女性。右上中切歯部の腫脹を主訴に来院した。フィステル形成が認められる。
図2 X線では歯根端切除術の既往がうかがわれる。メタルコアは根尖部でパーフォレーションをおこしている。
図3 抜歯時。唇側骨は失われていた。
図4 患者のスマイルラインは高く、審美的には難しいケースである。
図5 抜歯後のCTスキャン。側骨は大きく破壊されていた。根尖部でかろうじて初期固定が得られると考え、患者の手術侵襲を減らすために、インプラント埋入とGBR法によるハードティッシュ・マネージメントを併用することにする。このような細い歯槽堤ではSPI Contactインプラントは有利である。
図6 抜歯後1ヵ月、インプラント埋入時。側の歯槽堤吸収は比較的少ない。
図7 同、咬合面観。
図8 唇側骨は失われていた。
図9 やや口蓋側よりにインプラント窩形成。
図10 インプラント埋入。初期固定は得られれたが、唇側のThreadsは露出した。
図11 自家骨、吸収性メンブレンを使用したGBR法を併用。
図12 インプラント埋入後のX線画像。
図13 埋入後6ヵ月。2次手術時。
図14 同、咬合面観。
図15 ジンジバル・フォーマーを連結。インテグレイションの状態は良好。
図16 口蓋からの結合組織を側に設置。
図17 術後2週間プロビジョナル・クラウン装着。2次手術時にインデックスを採得。歯頸部の位置は隣在歯と揃っている。
図18 オールセラミックスによるアバットメントを作成。ラボワークは、以下も含め協和デンタル、木村健二氏。
図19 PFMクラウンを左側前歯部も含め作成。
図20 術後4ヵ月。口腔内写真。
図21 同、X線画像。
■おわりに
前歯部インプラントは術者としての総合力を問われる非常にテクニック・センシティブな治療である。
特に結合組織移植では、解剖学や生物学を熟知しないと、口蓋からの出血や神経麻痺など、思わぬ合併症を招くことになる。
前歯部インプラントを志す歯科医は、これらを十分に習得したうえでとりかかることを強く推奨する。
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