127号 WINTER 目次を見る
■目 次
■はじめに
クラレメディカル社の技工製品 硬質レジン『エプリコード』、ハイブリッドセラミックス『エステニアC&B』の技工情報サービスをご存知でしょうか?
フリーダイヤルでは、歯科医師から頂いた模型と技工指示書(デジタル機器を含む歯冠色情報伝達)があっても、ペースト築盛時に、どれを使って色調再現するのがベストなのか等、テクニカルマニュアル本からは見えにくい部分や臨床技工上で戸惑ったところをフォローすべく20数年間対応しています。
今回Dental Magazineの中で、『エステニアC&B』を技工指示書のみでの色調再現で技工料金アップにもトライしたいが、材料コストを考えたとき、どこからスタートなのかをテーマに、「臼歯部」「前歯部」「インレー」「ラミネートベニア」「研磨」「ノンメタルBr」など、順次紹介してみたいと思います。
また『エプリコード』についても、「気泡が入らない築盛」「色調の微調整」「マージン部ブラックラインの対処法」「Brのオベイドポンティック技工」など報告したいと考えています。
第1回目は、「臼歯・前歯編」です。
■臼歯
1. ジャケットスペーサー塗布
ジャケットスペーサーをできるだけ薄く塗布。歯頸部寄り1.5mmは塗布しない。Set時のレジンセメント層の確保と重合後、ジャケットクラウン(以下JC)をはずす時の破折防止。ただしパラフィンWAX等での対応は重合中に油性分がJC内面に浸透し、Set後の脱離要因につながる。
2. オペーク塗布・重合
築盛時、色調チェックがしたいのでスペーサーの上にオペークを塗布・重合。なお、このオペークはJC研磨時内面に50ミクロンのアルミナを2.0気圧以下でサンドブラストして取り除く。
3. オペーシャスデンチン築盛・重合
Set時はオペークがいらないのでオペークの上に分離材(マージンセップor CRセップⅢ)を塗布後、オペーシャスデンチン築盛重合。ただし、レジンセメント色がわからない時は歯頸部まで築盛する。
4. サービカル築盛・重合
ジャケットクラウンを口腔内にSetすると、前歯方向から頬側面を見ると光が頬側面を透過していくため、指示色調のデンチンから築盛すると色が足りなく、浅く見えるので通常は使わないサービカルを凸にならないよう薄く築盛する。
5. 白帯築盛
DA1またはDB1を歯頸部寄りに築盛する。
6. デンチン築盛①
クリアランスが1.5mm前後のときは支台歯の高さまでマージン部から少しずつ薄くなるように築盛する。
7. デンチン築盛②
上顎大臼歯なので外周を4分割して、気泡が入らないように一ヵ所ずつ築盛する。近心頬側咬頭から築盛し、筆に少量のモデリングリキッドをつけて形態を整える。このとき気泡があれば透明な層が内面にでき、白濁していればペーストがシワ状になっているので筆等で押し開いて整える。
8. デンチン築盛③
同様に遠心頬側咬頭を築盛する。
9. デンチン築盛④
同様に遠心舌側咬頭を築盛。
10. デンチン築盛⑤
円を描くように同様に近心舌側咬頭を築盛する。
11. 咬合面築盛
クリアランスにもよるが、咬合面のオペーシャスデンチンの上にCE1を築盛することで自然な小窩にトライする。デンチンを築盛するとインサイザル色の築盛スペースが少なくなる。また、サービカルは少量で下地のオペーシャスデンチン色をおさえる力がある。
12. CT2築盛①
咬頭エリアに薄く築盛することで、透明感と色調の深みを出す。
13. CT2築盛②
4 咬頭エリア築盛。
14. エナメル築盛①
頬側にはそのシェードのエナメルを、舌側は少し透明性を抑えて明るくし、咬合面にメリハリをつける。
15. エナメル築盛②
16. T1築盛
頬側咬合面外周にT1築盛。このあと形態の足らない所があったら歯頸部から切端にかけて1/2まではCT2を、そこから上はT1を築盛する。ただし隣接部はCE-Oを築盛する。
17. 咬合面築盛①
1咬頭内斜面ずつ隆線を築盛し、細筆で整える
18. 咬合面築盛②
副隆線などをE1、E0、CE、WEなどで整える。
19. コンタクト築盛
隣在歯に、金銀パラジウムなど銀色の修復物がある場合はCEを築盛し、暗くならないようにする。また、GOLDがある場合はCE-Oを築盛し、ブルーっぽくならないようにする。
最終光重合(5分)・加熱重合(110℃、15分)
20. ステイン塗布
研磨・完成後、小窩をカーバイトバーで削合し、アドオンプライマー塗布・乾燥後、モデリングリキッドを薄く塗布し、クロマゾーンカラーステインを塗布。30秒間光重合後、ステイン光重合時の未重合がある状態で小窩部にダイナシールを塗布・3分間重合を行う。
■前歯
ビタシェードを確実に再現しながら天然歯に見られる深みのある色調にもトライした築盛方法である。臼歯部同様、口腔内でどう見えるかを考えて、少なくともこの程度のペースト種類の築盛からスタートする。
1. ジャケットスペーサーの塗布
ジャケットスペーサー(以下JS)をできるだけ薄く塗布。歯頸部寄り1.5mmは塗布しない。パラフィンワックスなどはJC内に油が残り接着阻害の可能性があるので、使用しない。
2. 色調確認用にオペークの塗布・重合
JSの色調を遮蔽。築盛時の色を確認するためなので、オペーク(以下OP)は1回塗布でOK。OPの色調は基本色調を塗布する。JS硬化後、分離材を塗布してからOP塗布。プライマーは必要としない。C&Bは光重合前と後でペーストの色調変化がほとんどおこらないので築盛中に色調確認ができるのでOPは必要。
3. オペーシャスデンチンの築盛・重合
OP重合後、マージンセップ(以下MS)またはCRセップⅢを塗布し、オペーシャスデンチン(以下OD)を歯頚部まで築盛する。歯頸部までODを築盛する意味はレジンセメントの色調を反映させないため。なお、マージン部はODが厚くならないよう注意する。厚くなると照射時間を長くしても内面は重合しない。
4. デンチンの築盛・重合①
歯頸部は厚く、少しずつ薄くなるように支台歯切端まで築盛。
5. デンチンの築盛・重合②
歯頸部寄りと切端寄りに白帯の入るスペースを作る。
6. 白帯築盛
シェードテイキングや画像がない状態でビタシェードにトライしながら、天然歯を意識した色調再現で白帯を築盛したい時は、CEやWE・ステインなどでは強く出すぎる可能性があるので、DB1かDA1を築盛する。
7. 隣接面デンチン築盛
両隣接部にデンチン(以下D)を築盛して、形を整える。両サイドに厚くDA1、DB1が出過ぎないように。インサイザル色のペースト築盛分を考えてDを築盛する。また両サイドは光がよく透過するのでDA1、DB1を厚く築盛しないように。
8. 舌側歯頸部デンチン築盛
舌側面中央部はODが出たままである。
9. シリコンコアの作成①
指状構造の位置がブレないように切端部をはずしておく。
10. シリコンコアの作成②
上顎右側1番の切端より少し短くシリコンをカットする。指状構造が長くならないようにするためと、あとインサイザル色築盛分をあけておく。
11. 指状構造築盛①
まだインサイザルを築盛していないことを考えて築盛。
12. 指状構造築盛②
指状構造の位置を確認。
13. 指状構造
指状の幅と高さを変えながら形を整える。基本色のD A 3のみでもよいが、指状をD A 3、D A2、DA3.5、ステインなどでより自然感にトライ。
14. エナメル築盛
指状構造に気泡が入らないように切端1/4部に築盛する。指状構造をより明確にするときはT0を凹に築盛してフラットにしてからエナメル(以下E)を築盛する。また指状構造が非常にシャープなときはクロマゾーンカラーステインのクリアを内部ステインすると簡単で気泡の心配もない。
15. マメロン築盛
切端中央寄りに淡く築盛する。
16. CE1築盛
舌側中央部にほんの少し築盛することでODの色調を抑え自然感にトライできる。日本人の歯は厚くないので少量のペーストでOKである。
17. 舌側辺縁にCE-Oを築盛
築盛量にもよるが、Eよりも光の抜けを抑えながらD色が欲しいときに有効である。D色では色のメリハリが出にくい。Eでは白くなったり光透過で口腔内で暗く見える可能性がある。
18. T1築盛
切端寄り1/2に築盛。気泡混入を防止するため、近心から少量ずつ分割して築盛する。築盛後、光重合する前に必ず平筆にほんの少量のモデリングリキッドをつけてペーストを整える。このとき気泡とペーストのシワを確認する。またリキッドが多量のときは表層で層になり研磨しても艶が出ない。
19. CT2築盛
歯頸部寄り1/2まで築盛し、D色に深みと白帯などによる色調の不足を補う。
20. CE-Oを隣接部に築盛
鼓形空隙に築盛して、口腔内で光が透けて暗くならないようにする。
21. 舌側にT1を築盛
22. コンタクト築盛
BシェードのときはCE-Yを築盛する。
23. 完成
基本色調をこわさず温かみのある色調が完成。
※以上のステップでわからない点がありましたらクラレ技工情報サービス(0120-730-922)にご連絡下さい。土師が対応しています。
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