144号 SPRING 目次を見る
近年、マイクロスコープや3DXマイクロCTの技術革新が加
速するとともに、診療の見える化、診断・治療の3次元的なビジュアル化が目覚ましく進展しています。歯内療法に伴う根管形成の領域も、暗視野で行うゾーンから明視するゾーンへとシフトし、手探り的で盲目的な歯内治療を克服する方向へと向かっています。
しかし、日々現場に立つ臨床家にとって、歯内療法は避けて通ることはできず、スピード・再現性・精確性を厳しく要求される状況に変わりはありません。根管内の細菌感染の撲滅に奮闘しつつ、Transportation(根管中心軸のズレ)やファイル破折などの偶発症のリスクに常に向き合わざるを得ないのが実情です。
臨床家がこのような局面に立たざるを得ないのは、歯内療法が熟練とスキルを求められる、高度で難しい治療法であるという根源的な事実に根ざしているからに他なりません。根管系が複雑な解剖学的形態をもつために、術者が根管を直視できない状況で機械的な根管形成を行えば、些細なミスやテクニカルエラーによって難症例化し、最終的には外科処置を回避することができなくなってしまいます。したがって、歯内療法はエビデンスに即した根管形成基準、パターン化したファイルフローチャートに基づいて取り組まなければなりません。
このような視点に立ち、とみなが歯科医院では2003年から「EndoWave series」を導入し、2006年に提唱した「EndoWaveAll‑ranges version」に則した根管形成を実践してきました。その結果、狭窄した抜髄根管から根尖破壊されている感染根管まで、ほぼすべての根管に対応し、良好な結果を得てきました(詳細は「Dental Magazine vol.128」P96~99を参照)。さらに効率性を上げるべく、2010年から「EndoWave Expressversion」を考案し、複雑な根管治療のシンプル化に努めています(詳細は「Dental Magazine vol.138」P22~25を参照)。また、「EndoWave」を含めたNiTiファイルをさらに安全かつ効率的に使用するために、2011年3月に発売されたトライオートminiを用いて「Double Sword technique (二刀流法)」を実践し、スムーズな診療を心がけています。
「Double Sword technique」とは、トライオートminiを2本同時に使用し、アシスタント・スタッフがNiTiファイルの着脱を分担する3ハンド・システムです。
図1 EndoWaveをトライオートminiに装着する(図12参照)。
図2 ファイルを作業長に合わす(図12参照)
図3 Dr.が使用していたトライオートminiを受け取る。
図4 次のファイルを装着したトライオートminiをDr.に渡す。
図5 アルコールワッテでファイルをはさんだままトライオートminiからファイルをはずし、次のファイルを装着する。
「Double Sword technique」の利点は、術者が患歯から視線をそらさなくてよいため、作業の誤差を最小化できる点です。その結果として、作業の迅速化・効率化・簡略化が図られるために、術者のスキル・テクニック・熟練度に関わらず、ほぼ均質同等の治療結果が期待できます。
なぜなら、作業の標準化によって、ファイルの挿入方向・圧力・振幅が一定に保たれるため、ファイル操作上のテクニカルエラ-が減少するとともに、Transportationやファイル破折などの偶発症が起こりにくくなり、最少のステップ・最短の時間・最良の精確さで、再現性の高い根管形成を効率的に行うことにつながるからです。
さらに、チェアタイムの大幅な短縮により、患者さんも術者も精神的・肉体的な負担やストレスから解放されます。しかも、アシスタント・スタッフが根管形成に参加すれば、臨床への関心やモチベーションが高まり、治療への貢献度や、医療人としてのやりがいを自覚する契機にもなるでしょう。
このように、「Double Sword technique」のエビデンスを根底から支えているのが、トライオートminiの高性能と高機能であることは言うまでもありません。ハンドピ-スのコンパクトヘッド・軽さ・握りやすさと操作性のよさ、 各種の設定と作動中の情報をキャッチできる液晶ディスプレイの柔軟さ、NiTiファイルの破折防止機構(オ-トトルクリバ-ス・オ-トトルクスロ-ダウン)の採用、50~1,000rpmの幅広い回転速度の選択、6モ-ドを設定できるメモリ-機能など、根管形成のクオリティを高めるフルスペックの搭載は、とても心強く感じられます。
「Double Sword Technique」が、歯内療法に尽力されている多くの臨床家の方々のお役に立つことを心から願っています。
図6 Double Sword Techniqueのアシストサイドの準備物・トライオートmini 2本 ・EndoWave Express Version ・ルーラー
図7 EndoWave Express Versionの設定・#25/.06T ・#25/.04T
図8 EndoWave Express Versionの設定・#30/.06T ・#35/.04T ・#40/.02T
図9 EndoWave Express Versionの設定・LAX #50/.-01T ・LAX #60/.-01T
図10 EndoWave Express Versionの設定
図11 EndoWave Express Versionの設定・#40/.02T ・LAX #50/.-01T・LAX #60/.-01Tの長さは1mmアンダーで合わす
図12 ファイルの付け方、作業長の合わせ方
目 次
モリタ友の会会員限定記事
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- 私の臨床 トライオートmini2本を駆使した「Double Sword Technique」が構築する再現性の高い根管形成
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