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191号 WINTER 目次を見る

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SPI研修旅行記第一弾 SPIインプラント工場見学とDr.Grunderのハンズオンを受けて

医療法人 夏堀デンタルオフィス白金高輪 院長 医療法人 夏堀デンタルクリニック 理事 Brånemark Osseointegration Center, Tokyo 非常勤歯科医師 明海大学歯周病学分野 客員助教 夏堀 壮一郎/医療法人社団 奥田歯科医院 理事長 奥田 浩規

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キーワード:SPIインプラント製造工場見学/EVERGUARD Connection

目 次

はじめに

関西を活動拠点とするインプラントスタディグループ「i6」を中心とした総勢20名の歯科医師が、(株)モリタとTHOMMEN Medical社の協力のもと、約1週間にわたるヨーロッパ研修を行った。本研修は、参加者の研鑽はもとより、SPIインプラントの日本普及のための性能理解と、インプラント業界の技術向上を担うオピニオンリーダーの育成が目的であった。
本稿では、我々が足を運んだ製造工場の見学や、そこで体験したDr. Ueli Grunderのハンズオンセミナー、開発者たちとのディスカッションを通して得た経験や知識をSPIの優れたインプラントシステムの特徴と共に供覧したい。

THOMMEN Medical社 SPIインプラント製造工場見学

SPIインプラントを製造販売するTHOMMEN Medical社は、ベルン大学や有名時計メーカーの精密工場が林立する科学と技術と雄大な自然に囲まれた地域に展開する(図1)。今号の拙稿では、30年以上の臨床経験と日々進化し続ける開発者たちの熱意に支えられているSPIインプラントの持つ優れた力学的安定性と安全性能、生体親和性と超親水性に関するシステムの一部を紹介したい。

  • [写真] 記念写真
    図1 講師を務めてくださったDr.Grunderと記念写真

EVERGUARD® ConnectionとIAI封鎖の堅牢性と安全性

近年、インプラント-アバットメント接合部(IAI)の封鎖性と細菌侵入がインプラント周囲炎の発症に少なからず関連性があると考えられている1)
SPIインプラントは、側方応力に強く、マイクロムーブメントを抑えた設計2)図2)と、優れた辺縁封鎖性と応力耐性を確立したEVERGUARD Connectionを持つ3)。SPIインプラントはインプラント体開発において欠かせない力学試験の1つであるISO14801(図3)に対して好成績を残すに留まらず、さらなる応力試験を重ね、過度な応力がかかった場合には応力がスクリューに集中し、インプラント体、アバットメントの変形、破折を回避するためのセーフティシステムである抗疲労性シャフト(図4)を組み込んだ。このシステムにより、応力が原因となるインプラント周囲炎の発症やインプラント体の破折も減らすことができるだろう。

  • [図] EVERGUARD® Connectionの拡大図
    図2 EVERGUARD® Connectionの拡大図。左図:SPIインプラントの矢状方向の断面図。赤い線で示すように応力に強いバッドジョイントが設けられている。右図:矢印で示すような補強リング(A)とインターナルヘックス(B)を持つハイブリットコネクションシステムが特徴。
  • [写真] 実際のSPIインプラントに行われているISO14801応力試験の画像
    図3 実際のSPIインプラントに行われているISO14801応力試験の画像。ISO14801は、インプラントの疲労強度を比較する試験である。規定の角度に傾けたアバットメントを装着したインプラント体に対し、最大15Hzで振幅疲労加重を加える試験である。
  • [写真] 有限要素解析により、ISO14801における応力試験によって得られた画像
    図4 有限要素解析により、ISO14801における応力試験によって得られた画像。周囲骨やインプラント体への応力は分散され、アバットメントスクリューに応力が集中している。荷重時の応力をアバットメントスクリューの規定点に集中させることで、インプラント体やアバットメントを守る設計をもつ。

SLA SurfaceとAPLIQUIQのもたらすイニセルの超親水性と免荷期間の短縮

チタン製インプラントは、大気に触れた瞬間から、表面に有機化合物が沈着し、時間経過とともに疎水性表面へと変化する。このエイジング反応はインプラント体のインテグレーションの阻害を進めることが知られている4)
SPIインプラントは、従来のSand blasted and thermal acid-etched(SLA)5)surfaceに加え、水酸化ナトリウムを埋入直前にインプラント体表面に付与するパッケージシステム APLIQUIQを導入することで超親水性表面イニセルを開発した。SLA Surfaceの優れたインテグレーション能力に加え、表面エネルギーによる超親水性6)図5)を獲得させることができた。
これらは、タンパク質の付着性の向上によるインテグレーションの安定性と血餅形成の活性化7)による創傷治癒の加速に寄与する。イニセルインプラントは、現代のインプラント治療の課題とされている、埋入後の免荷期間を短縮することのできる優れた機構を持っていると言える。
上記の機能の他にも優れた特徴を多く持つSPIインプラントシステム。現在もTHOMMEN Medical社は開発と改良に余念がないということだ。今後もSPIインプラントシステムのさらなる進化に目を離すことができないだろう。

  • [写真] 超親水性
    図5 優れた表面エネルギーによる超親水性を獲得。
  • [写真] 集合写真
    図6 今回の研修旅行のメンバーとDr.Grunder、並びにCEOのLivio Marzoとの集合写真。

おわりに

この度は貴重な機会を与えてくださった「i6」の運営の皆様、ご協力いただいた( 株)モリタ、THOMMEN Medical社のスタッフの皆様、そして何より今回の旅を共にした諸先生方にこの場をお借りして厚く御礼を申し上げたい(図6)。次号は、SPI旅行記第二弾、ドイツで行われたDr.Otto Zuhrのハンズオンセミナーに関するご報告をお届けしたい。乞うご期待である。

参考文献
  • 1) Broggini N, McManus LM, Hermann JS, Medina RU, Oates TW, Schenk RK, Buser D, Mellonig JT and Cochran DL : Persistent acute inflammation at the implantabutment interface. J Dent Res, 82, 232-237, 2003
  • 2) Junya U, Junichi T, Ayako Y, Kanako Y, Joichiro H and Kitetsu S:Effect of Cyclic Loading on the Sealing Ability of Dental Implant-Abutment Interfaces. J Meikai Dent Med,50(2),97-108, 2021 Mawhinney J, Connolly E, Claffey N, Moran G and Polyzois I : An in vivo comparison of internal bacterial colonization in two dental implant systems : identification of a pathogenic reservoir. Acta Odontol Scand, 73, 188-194, 2015
  • 3) ISO 14801 Dentistry-Implants-Dynamic loading test for endosseous dental implants. International Organization for Standardization, Geneva, 2016
  • 4) Hori N, Att W. Ueno T, Sato N. Yamada M, Saruwatari L, Suzuki T. Ogawa T. Agedependent degradation of the protein adsorption capacity of titanium. J Dent Res, 88, 663-667, 2009
  • 5) Albrektsson T, Wennerberg A. Oral implant surfaces: Part 2--review focusing on clinical knowledge of different surfaces. Int J Prosthodont, 17(5), 544-64, 2004
  • 6) Stefan PH, et al. Early loading of titanium dental implants with an intraoperatively conditioned hydrophilic implant surface:3-year results of a prospective case series study. Int J Oral Maxillofac Implants, 35, 1013-1020, 2020
  • 7) Tugulu S, Löwe K, Scharnweber D, Schlottig F. Preparation of superhydrophilic microrough titanium implant surfaces by al-kali treatment. J Mater Sci Mater Med, 21(10), 2751-63, 2010

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