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Interview

3Dプリンターを用いたデジタルデンチャーを成功に導くポイントとは

富山県射水市 やまざき歯科医院 院長 山崎 史晃/歯科技工士 石川 航生

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目 次

富山県射水市 やまざき歯科医院

  • [写真] 院長 山崎 史晃
    院長 山崎 史晃
  • [写真] 歯科技工士 石川 航生
    歯科技工士 石川 航生

3Dプリンターの草創期からデジタルデンチャーへの応用に取り組んでこられた山崎史晃先生と石川航生歯科技工士に、3Dプリンターの導入経緯や活用状況、さらにデジタルデンチャーを成功に導くポイントなどについて、お話を伺いました。

義歯に注力されるようになった経緯をお聞かせください

山崎 以前引き継いだ医院の院長先生が高齢で、義歯の患者さんがとても多く来院される医院だったことがきっかけです。当時、義歯に関してそれほど自信がなかった私は、試行錯誤するなかで、阿部二郎先生の下顎総義歯の吸着テクニックに関する書籍と出会いました。そしてその本に書いてある通りに試してみたら、本当に驚くほどしっかり吸着したのです。このテクニックに感銘を受け、「この技術をマスターして義歯で日本一の歯科医師になる」ことを目標に定めました。ちょうど今から20年前のことです。その後、阿部先生の勉強会に積極的に参加し学びを深めていく中で、義歯が楽しくて仕方がなくなっていきました。阿部先生の著書『誰にでもできる下顎総義歯の吸着』の「誰にでもできる」というコンセプトにとりわけ共感をおぼえ、まずは阿部先生のテクニックを完全にコピーして、マスターすることから始めました。その後、そのテクニックをもっとシンプルなものにして、今まで義歯を製作した経験がない若い先生方でも、抵抗なく取り組めるようになるためにはどうすればいいかをひたすら考え、追求する毎日でした。

  • [写真] 精度の高い印象採得と咬合採得を獲得
    デジタルデンチャーを成功に導く最大のポイントは、精度の高い印象採得と咬合採得を獲得することにある。
  • [写真] 導入されているAccuprint 3Dプリンターシステム
    導入されているAccuprint 3Dプリンターシステム。左から3Dプリンター「Accuprint 3D 4.0 pro」、洗浄器「Accuprint 3D Clean」、光重合器「Accuprint 3D LEDcure」
  • [写真] プリントされた造形物を取り出している様子
    プリントされた造形物を取り出している様子。「Accuprint 3D 4.0 pro」は、エッジの立った高精細な造形物をプリントすることができる。

それでデジタルデンチャーに出会ったわけですね

山崎 デジタルデンチャーとの出会いは、今から10年ほど前に海外メーカーを見学したのが最初です。その頃ちょうど印象採得や咬合採得など歯科医師が行う工程だけでなく、その後の技工工程にもチャレンジしてみたいと考えていた矢先のことでした。従来のアナログ技法では、とても歯科医師一人が診療の片手間でできるものではありません。しかし、デジタル機器を応用すれば「製作工程のすべてを私一人でできるのでは」と思い立ち、その後デジタルデンチャーを精力的に勉強するようになりました。しかし、実際には臨床応用のレベルまではほど遠く悩んでいた時に、3Dプリンターを用いたデンチャー製作の存在を知りました。

デジタルデンチャーを成功に導く秘訣を教えてください

山崎 ポイントは精密な印象です。印象採得と咬合採得をいかに高精度にできるかが、デジタルを活かすいちばん大事な勘どころになります。

石川さんに伺います。現在の3Dプリンターの活用状況を教えてください

[写真] 日本顎咬合学会学術大会でモリタ賞を受賞した記念の咬合器
医院のエントランスには、日本顎咬合学会学術大会でモリタ賞を受賞した記念の咬合器が飾られていた。

石川 いちばん多い用途はコピーデンチャーです。従来は患者さんの義歯をお預かりしたあとお返しするのに、どんなに早くても10分以上かかっていましたが、3Dプリンターなら義歯をお預かりして3分ほどで完璧に再現してスキャンできます。当院ではラボスキャナーを使用しているため、スキャンスピードも圧倒的に早く、高い精度でコピーすることができます。それを精密印象用のトレーとして患者さんの次回来院時に使用します。他にはスプリントやナイトガード、テンポラリークラウンなどの製作にも使用しています。

石川さんはデジタルデンチャー成功のコツは何だとお考えですか

石川 山崎院長と同じくやはり印象の精度ですね。ここは絶対外せないポイントです。デジタルは良くも悪くも完璧に再現できてしまうので、悪い部分も受け継いでしまう可能性がありますから、印象採得、咬合採得は重要です。従来は歯科技工士が模型に起こして修正したり、バイトがずれていると感じれば、咬合器にマウントする際に位置を調整することもできましたが、デジタルではそうした調整はできるだけ避けたいので、常に留意しています。

他にデジタルデンチャーのメリットとしてどんなところがありますか

石川 デザインしたデータをデジタル上で管理できるので、石膏模型の保管スペースも必要ありませんし、適宜ソフトウェアからデータを読み込んで即座に再製することができるのも大きなメリットです。
山崎 作業ステップが効率化され、やり直しや調整の頻度も少ないので、医院全体の働き方にも良い影響を与えています。土曜日曜は休診、平日は17時半に終業できる体制を取れるようになったのも、デジタル機器に依るところが大きいと感じています。

  • [写真] 現行機種
    現行機種になってから、これまで発生していた破折は大幅に減少しているとのこと。
  • [写真] 未硬化樹脂除去のため洗浄を行う
    プリント後、未硬化樹脂除去のため洗浄を行う。「Accuprint 3D Clean」は造形物をプラットフォームに付けたまま、ハンズフリーで洗浄を行える。
  • [写真] 洗浄後に光重合を行う
    洗浄後に光重合を行う。「Accuprint 3DLEDcure」は、波長の異なる2つのLEDライトを装備しているため、さまざまなインクの光重合に対応する。
  • [写真] 中央が3Dプリントデンチャー、右がより審美的で精度の高いミリングデンチャー、左は粘膜部分彩色前後の比較
    中央が3Dプリントデンチャー、右がより審美的で精度の高いミリングデンチャー、左は粘膜部分彩色前後の比較。
  • [写真] ソフトウェアの管理画面
    ソフトウェアの管理画面。スキャンしたケースはすべてソフトウェア上で管理され、必要な場合は即座にプリントすることができる。
  • [写真] ラボスキャナーでスキャンされたデジタル模型のデータ
    ラボスキャナーでスキャンされたデジタル模型のデータ。
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