192号 SPRING 目次を見る
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口腔機能発達不全症への取り組みと定期的な来院に繋げる創意工夫で真に支持される小児歯科診療を実践
目 次
- ≫ クリニックの特色【施設・設備】
- ≫ クリニックの特色【診療】
- ≫ スタッフ教育と院内をまとめるための工夫
- ≫ 今後の抱負
- ≫ 小児歯科を目指す先生方へのメッセージ
- ≫ クリニックでさまざまなトレーニングに携わっておられるお二人にお話を伺いました
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愛知県豊橋市
医療法人Bright Beans
豊橋キッズデンタルクリニック
理事長 中野 崇
小児歯科に特化し、「育つ力を自然に伸ばし、健康な口腔の成育」を支援すべく、さまざまな取り組みを行う「豊橋キッズデンタルクリニック」。同クリニックが注力する口腔機能発達不全症に対するアプローチや、定期的な来院を促す工夫や考え方などについて、理事長の中野崇先生とスタッフの方々に伺いました。
クリニックの特色【施設・設備】
当院は2階建てのテナントに入居し、1階をオープンスクール(親子教室)や小児矯正のアクティビティなどを行う健康増進スペース、2階を診療スペースとしています。診療フロアの中央にはフラットタイプの「スペースラインHPO-0」を、フロアの両サイドに設けた個室と半個室には背板が起こせる「スペースライン スピリットV」を設置。歯科衛生士によるメインテナンスの場合は「スペースラインHPO-0」、印象採得や検査がある場合は「スペースライン スピリットV」と使い分けています。フラットタイプの診療台は、どこに頭を置くかということを子どもが即座に理解でき、治療が終われば背板が起こされるのを待つことなく診療台から降りることができるので、治療がスムーズに行えるというメリットがあります。個室と半個室に関しては、大きな声が出てしまう子どもや、抑制などが必要な場合は個室に、笑気吸入鎮静法を使用するなど、換気への配慮が必要な場合は半個室に案内しています。
2014年に開業した「豊橋キッズデンタルクリニック」。大型駐車場完備の向山フォレスタ内にあり、遠方からも多くの患者さんが訪れる。
親子で楽しく学べる専用施設やキッズスペースが整う開放的な1階フロア。同院のマスコットであるフクロウが仲間と住む森をイメージしている。
2階の診療フロアにはフラットタイプの「スペースラインHPO-0」を設置。カウンセリングルームやX線室もポップな色合いでまとめ、治療の恐怖を感じることなく受診することができる。
クリニックの特色【診療】
①月齢・年齢別の治療
<0~3歳>
う蝕予防やきれいな歯並びへの土台づくりは歯の萌出前から始まるため、口腔内の状態の確認や生活習慣についての健康教育、口腔育成(顔、口のマッサージやブラッシング指導)などを中心に行い、保護者には離乳食の進め方や幼児食の考え方、食具の選択についてのアドバイスなど、主に家庭での環境設定と健康教育を行います。
<4~6歳>
治療の簡単な説明(Tell)、使用器具を見せる(Show)、治療を行う(Do)の「TSD法」で対応し、歯科医院を嫌いにさせない、その子に合わせた無理のない診察を行っています。口腔内の状態と歯並びの確認、ブラッシング指導・フッ化物塗布のほか、指しゃぶりや舌癖の改善、食べ方・飲み方についての摂食機能訓練など、口の機能の発達支援も行います。
<7歳~>
原因から考えた顎顔面発育不全の評価と小児予防矯正についての説明、ブラッシング指導・フッ化物塗布、PMTCなどを行います。
②オープンスクール(親子教室)
機能発達をテーマにした全6回コースの「オープンスクール」を実施。0~1歳と、2, 3歳のクラスに分け、いずれも定員6組としています。内容は10分程度の講話とアクティビティで、各回のテーマに合わせて歯科衛生士、管理栄養士、保育士が順番に講師を担当します。参加できるのは、2階の診療に通う患者さんのみ。初診の問診や診療で、生活の中で感じる口の機能に関する不安(食べるスピードや量、お口ポカンや口呼吸など)を保護者にヒアリングし、必要に応じて誘導しています。最近は口コミで情報が広がり、「オープンスクール」に参加するために初めて診療を受ける患者さんも増えてきました。
③プレ MFT
お口ポカン、口呼吸、かたいものを噛むのが苦手、咀嚼が少ない、発音が不明瞭など、口腔機能の発達と関わりのある問題を解決するため、口の機能を高める「プレ MFT」(全6回・6か月)を導入。歯科衛生士と助手が中心となり、口唇閉鎖力と舌圧を測って口腔周囲筋の調和を整えるトレーニングや、指しゃぶり・歯ぎしりなどの習癖指導、食べる機能に必要な舌の挙上、正しい嚥下、鼻呼吸の練習、障がいのある子どもの発育過程と発育環境に応じた摂食・嚥下機能療法をプレ MFTとは別に行っています。
④ORT小児矯正
![[写真] 豊橋キッズデンタルクリニックのスタッフの皆様](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2025/03/192-10_staff02.jpg)
「ORT(Oral Root Therapy)小児矯正」とは、乳歯から永久歯への生え変わりの時期(6~8歳)に行う原因から考える予防矯正を意味しています。実際の診療では、呼吸方法や鼻閉の有無の確認、舌小帯の状態、口蓋形態や成長方向などの指標を計測した上で、歯並びが悪くなる原因そのものにアプローチして改善を図ります。同時に、指しゃぶりや口呼吸など、歯並びを悪くする習慣の改善もサポートしていきます。
アレルギーなどによる鼻閉(根本原因)があると口呼吸(代償性原因)を引き起こし、口呼吸を継続すると、結果として不正咬合(結果的原因)を招きます。ですから、不正咬合を治療する際には、根本原因、代償性原因を診察・診断し、状況によっては医科と連携をとりながらアプローチすることが大切です。
⑤身体調和法・Shiseiアカデミー
乳児や低年齢の幼児には歌に合わせた体操やマッサージを通して、子どもの筋肉や関節の緊張を緩め、体の左右差をなくし、重心を体の中心に持たせることで動きやすい体をつくり、脳の発達を促すという「身体調和」の考えを取り入れ、子どもの発育を支援しています。昨年6月には、5~8歳の子どもを対象とする「Shiseiアカデミー」を開講。子どもの体の発達や遊びに精通した保育士が中心となって、体を動かすために必要な筋肉と関節、正しい姿勢、正しい呼吸を身につける全身運動のトレーニングを週1回、1年間継続します。
⑥小児在宅歯科診療
歯科衛生士による口腔ケアがメインで、障がいのある患者さんなど、通院が困難であると判断した場合に、小児在宅歯科診療を案内します。愛知県と豊橋市の歯科医師会と連携し、訪問歯科診療・小児在宅歯科診療が可能な医療機関として登録した上で、当院ホームページ上で告知したり、豊橋市福祉事業会にパンフレットを設置するなどして周知しています。
⑦医科との連携
豊橋市民病院の開放型病床システムを利用し、多発性う蝕の全身麻酔下集中歯科治療を行っています。手術当日は医師、歯科衛生士、歯科助手が器材を持参して現地に赴き、手術中の全身管理は麻酔科の医師が担当します。対象となる患者さんは、家庭での口腔ケアができていて、う蝕の進行がコントロールされており活動性が低くなっていること、キャンセルしないなど、いくつかの条件を設定しており、担当歯科衛生士、衛生士マネージャーと相談しながら選定します。
⑧クリニック外での口腔保健支援
大学時代から乳児院で暮らす子どもの口腔保健支援をしており、開業後も継続しています。里親の中には子育て経験のない人もいるので、育児の不安を聞いてアドバイスをすることもありますし、必要があれば講演なども行います。乳児院は0~2歳の子どもが多く、年齢が低いほど食事の悩みの割合が高くなるため、口腔保健支援もとても重要です。
個室診療室は子どもの状態や特性、治療の内容に合わせて案内。子どもが騒いでも気にすることなく、また、他の子どもの声や治療の音も聞こえないので、リラックスして治療に臨むことができる。
「オープンスクール」では、冒頭に中野理事長が口腔機能や姿勢などに関する講話を10分程度行っている。
歯科衛生士や管理栄養士、保育士がそれぞれの専門知識を生かして学びと遊びの場を提供する「オープンスクール」。0, 1歳と2, 3歳にクラスを分け、定員6組の少人数で実施している。
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