189号 SUMMER 目次を見る
Case Report
効率アップを目指そう!「適合性の優れた隔壁」がII級コンポジットレジン修復にもたらすメリット
キーワード:Ⅱ級コンポジットレジン修復/ダイレクトボンディング/セクショナルマトリックスシステム/適合性の優れた隔壁設置
目 次
はじめに
隔壁設置において適合性を考慮する理由
Ⅱ級コンポジットレジン修復はう蝕治療における予防拡大の理論を適応する必要がなく、健全歯質を必要以上に削除しないMI(Minimal
Intervention)コンセプトに準じて最大限に歯質保存が可能な低侵襲治療である。治療期間を含めた患者負担の軽減だけでなく、機能性・審美性ともに高い治療法であるため、チェアサイドで患者さんを笑顔にすることができる治療法であるとも言える。しかし、実際の臨床現場では隣接面修復において、隔壁を設置するためのマテリアル選択を誤り、うまくいかない経験をした歯科医師も多いのではないだろうか。
特にⅡ級修復で最も気になるのは、隣接面形態とコンタクト圧である。隣接面形態については上部鼓形空隙の形態が付与できないとフロスが挿入しにくくなることも多い。また歯肉側マージンに溢出したレジンのバリが残っている時には形態修正が必要になり、修正が困難な場合は再充填を行うことが求められる。
さらに、隣接面形態とコンタクト圧が正しく回復できていなければ術後に不快感を残してしまったり、食片圧入を引き起こしたりする可能性もあるため、術前に窩洞の状態を把握し、それに合った器具を選択していくことが重要であると筆者は考える。
隔壁の適合性を調整するための術者の努力
マトリックスワーク(隔壁)を行う前に、「コンタクトの有無」 「窩洞外形の大きさ」 「窩洞底面から隣接面の距離」を確認し、隣接面部健全歯質の喪失程度に合わせてマトリックス、ウェッジ、リテーナーを選択していく必要がある。それぞれの製品の特長を理解し、マトリックスワークを行うことで「適切な隣接面形態」 「良好なマージン適合性」 「コンタクト圧の回復」を実現できると考える。適切なマトリックスワークに必要な要件を以下に整理する。①適切な形態のマトリックスを選択 「隣接面形態の回復」②適切な形状・素材のウェッジを選択 「歯肉側におけるコンポジットレジンの溢出防止」 「歯間離開」③残存歯質量に応じて適切な形状のリテーナーを選択 「歯間離開」 「マトリックスの保持」 以上3つのポイントを厳守することでⅡ級コンポジットレジン修復のトラブルを回避し、効率的なマトリックスワークを容易に行えると考える。
過去の経験
「コンポジタイト3Dフュージョン」との出会い
筆者は大学卒業後、神奈川歯科大学附属横浜クリニックの成人歯科に入局し、歯周治療を中心に臨床に励んだ。大学病院以外の勤務先では三橋晃先生に師事してマイクロスコープを用いた歯科治療の研鑽に励む日々であった。一口腔単位の診療をするなかで、保存修復にも興味をもち、精密なコンポジットレジン修復ができるようになりたいという気持ちが芽生えてきた。コンポジットレジン修復の知識と技術の向上を目指すため、田代浩史先生が主宰のJT Concept Master Courseを受講し、「コンポジタイト3Dフュージョン」を用いたⅡ級コンポジットレジン修復に本格的に取り組むきっかけとなった(図1)。
「3Dリテーナー フュージョン」の脚部シリコンによる向上された適合性
コンポジットレジン充填時の臼歯部隣接面用「コンポジタイト3Dリテーナー フュージョン」はリング部と脚部により構成されている。脚部には残存歯面と広範囲に接触可能なシリコンが接続され、把持力も強く、良好な適合が得られる。専用のリングフォーセップスにて開脚して歯間部に装着し、強力な歯間離開効果を発揮する。脚部の裏にはウェッジを挿入できる空間があり、隣接面形態に合わせて微調整が可能である。
図1 2021年に JT Concept Master Courseを受講。田上順次先生(東京医科歯科大学 名誉教授)と田代浩史先生(東京医科歯科大学う蝕制御学分野臨床教授)とともに。
設計上の限界と適合性向上への工夫
「3Dリテーナー フュージョン」では歯冠上部へのフォローが足りないケースがある
ただ、場合によって「3Dリテーナー フュージョン」でマトリックスを固定しても、マトリックスと歯質の間にわずかな隙間が生じてしまうことがある。もし隙間のある状態で充填した場合、上部鼓形空隙に溢出したコンポジットレジンの形態修正が充填後必要となる。
また「3Dリテーナー フュージョン」は直径が大きく、筋突起に干渉するような症例では設置が困難となる場合もある。
この記事はモリタ友の会会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。
残り 2730 文字
目 次
モリタ友の会会員限定記事
- Dental Talk 世代の異なる3名の臨床家が語る「 II級コンポジットレジン修復」の現在と未来
- Clinical Report これからの直接法II級CR修復 新ストラテジー -ストラタG システムとコンポジタイト3D システムの活用法-
- Case Report 効率アップを目指そう!「適合性の優れた隔壁」がII級コンポジットレジン修復にもたらすメリット
- Trend Watching 歯科大学教育におけるMIに基づいたII級窩洞コンポジットレジン修復の現在
- Interview 現在、II級コンポジットレジン修復は日々の臨床に欠かせない術式になっています
- Field Report II級窩洞に対するMIに則った治療プランの提案事例
- Clinical Report 義歯のキレイをキープする-「キレイキープTM」の効果を有効に発揮させるために-
- Clinical Report Er:YAGレーザーを用いた歯周治療の有用性-患者の利益を最優先に考えた治療の実践-
- Clinical Report 新規骨補填材ボナーク®を用いたインプラント治療
- Clinical Report SPIイニセルインプラントを用いた審美エリアにおける抜歯後即時インプラント埋入
- Field Report あるべき下顎の位置を導き出し理想的な咬合を実現するために欠かせない「K7エバリュエーションシステムEX Black」
- Technical Report セラビアン®ZRにおけるオパシティコントロールの1提案
- Field Report 歯間部に溜まった食渣やプラークを水の力で除去する口腔洗浄器
- Field Report 口腔機能発達不全症への取り組みとガムを用いた口腔機能トレーニング
- Interview 「ご家族以外に口腔ケアに関心を持つ人を増やしたい」という思いから訪問歯科診療を実践
- Topics 「感動を持ち帰る」そんな歯医者さんに通いたい 歯科におけるコミュニケーションについて考える。
他の記事を探す
モリタ友の会
セミナー情報
会員登録した方のみ、
限定コンテンツ・サービスが無料で利用可能
オンラインカタログでの製品の価格チェックやすべての記事の閲覧、臨床や経営に役立つメールマガジンを受け取ることができます。
商品のモニター参加や、新製品・優良品のご提供、セミナー優待割引のある、もっとお得な有料会員サービスもあります。