189号 SUMMER 目次を見る
目 次
- ≫ Ⅱ級修復の現状と 接着システムの進化
- ≫ フロアブルレジンの登場によりⅡ級修復は新たなステージへ
- ≫ 初発う蝕か再修復かで窩洞形成の方法が変わる
- ≫ 隣在歯との接触点、隣接面、咬合面形態の再現のポイント
- ≫ 大型Ⅱ級窩洞への対応
- ≫ 『ストラタG システム』
- ≫ 仕上げの形態修正と研磨操作
- ≫ Ⅱ級CR修復の未来像
![[Ⅱ級コンポジットレジン修復特別鼎談] 世代の異なる3名の臨床家が語る「Ⅱ級コンポジットレジン修復」の現在と未来 畑山 貴志×秋本 尚武×田代 浩史](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2024/06/189-2_doctor01.jpg)
Ⅱ級修復の現状と接着システムの進化
![[写真] 横浜市中区 秋本歯科診療所 院長 秋本 尚武](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2024/06/189-2_doctor02.jpg)
秋本Ⅱ級窩洞に対して、依然としてインレー修復を選択される先生が多いと耳にします。たしかにコンポジットレジン(以下:CR)によるⅡ級直接修復には、隣在歯との接触点と隣接面・咬合面形態の同時回復が必要とされる難しさがあります。また、過去には体部破折といって修復した隣接面の一部が外れてしまうトラブルも頻繁に発生しました。照射器や接着材の性能、CRの物性などが主な原因だったと考えられますが、先生方がCRによるⅡ級直接修復に踏み出せない理由もそこにあるのではないかと感じています。しかし、近年では、器材や術式が目覚しい進歩を遂げたことで、ある程度の技術を備えれば、きちんと治療できるようになってきているとも考えています。
特にボンディング材の発展には目を見張るものがあり、『クリアフィル メガボンド』(クラレノリタケデンタル、以下:『メガボンド』)が上市されてから、多くの症例に対してCR修復を選択することが可能になりました。『メガボンド』の2つのステップにはそれぞれ役割があって、1つは確実な接着ができるということ。もう1つは少し粘性があるボンディング材なので、重合収縮や応力緩和などに良い影響をもたらしていると考えられます。
田代そうした信頼度の高いボンディング材を応用していく中で、もう1つの大きな変化が光照射器でした。Ⅱ級修復の深い部分まで光が届くかどうかは、『メガボンド』のパフォーマンスを出せるかどうかの大きな分岐点になります。ハロゲンからLEDタイプの『ペンキュアー』になり、さらに高出力の『ペンキュアー2000』(モリタ製作所)へと進化したことで、『メガボンド』、そして現在の『メガボンド2』が持つ接着力を高い次元で発揮できるようになったと感じています。
フロアブルレジンの登場によりⅡ級修復は新たなステージへ
![[写真] 静岡県浜松市 田代歯科医院 院長 田代 浩史](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2024/06/189-2_doctor03.jpg)
秋本充填操作において、ペーストレジンしかなかった時代には、隣接面に限らず、とにかく形態を作るのがとても大変でした。その頃は、レジンで咬合面形態を作るという発想自体があまりなかったと思います。そういう意味では、多くの先生方がⅡ級修復には苦労されていた印象があります。
田代フロアブルレジンの操作性と物性のバランスが本当に整ったのは、初代の『クリアフィル マジェスティ ESフロー』(クラレノリタケデンタル、以下:『ESフロー』)が上市されてからだと思います。Highフロー、Lowフロー、Super
Lowフローと用途に合わせた3種類のフローがラインナップされ、活用の幅が一気に広がりました。現在のⅡ級修復では、周囲を歯質が囲んでくれているので、細かい色の選択に苦労することはそれほどありません。また、隣在歯との境目にあって暗く見えがちですから、明度が高めのフロアブルレジンが有利だと思います。そういう場所に、狭いところに流れて、形態もうまく作れるようなバリエーションが揃ってきたのが、この10年くらいの間ではないでしょうか。フィラーの含有率や耐摩耗性の観点から不安を感じる先生もいらっしゃると思うのですが、研究データから検証すると、十分使える製品になっていると考えて良いのでしょうか。
畑山実際の使用感はフローのタイプによってかなり違うと感じますが、耐摩耗性の観点から見ると、Highフローにも多くのフィラーが含有されていますので、咬合面にHighフローを使ってもそれほど問題にならないと考えています。逆に、どのフロータイプを使っても安定した結果が得られるのが『ESフロー』の特長の一つと言えるかもしれません。
田代私は窩底部にはHighフローを薄く伸ばして使います。それで初めて『メガボンド2』の接着が完了したという感覚を持っています。2層目には主にLowフローを使って、最終層はペーストタイプのCRを使って小窩裂溝の形態を付与していく方法が多いです。
畑山私も最初のライニングはHighフローで行います。その後Lowフローに変えて積層していき、最終的な咬合面形態を作るときにSuper Lowフローを使うこともあります。ただ、多くの場合はLowフローで、細いチップを使って咬頭ごとに作成していくと、十分きれいな咬合面形態に仕上げられると思います。
秋本私はここ15年くらい、フロアブルレジンだけで充填しています。当初、臼歯部でも充填可能な物性のフロアブルレジンが出たときに、「フロアブルレジンだけでどこまで充填できるんだろう」と思いながら、今までずっとやってきました。Ⅱ級修復ももちろんフロアブルレジンだけを活用しています。皆さんにもぜひトライしていただきたいと思います。
初発う蝕か再修復かで窩洞形成の方法が変わる
![[写真] 東京医科歯科大学 う蝕制御学分野 助教 畑山 貴志](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2024/06/189-2_doctor04.jpg)
秋本Ⅱ級CR修復では、どのような 窩洞形態をつくるかがとても重要で す。ただ、その症例が初発のう蝕なの か、インレーなどの再修復なのかに よって大きく変わってきます。初発の う蝕の場合には、術者自身が充填しや すい形態に持ちこむことが可能です。 その際に、いかに窩洞を広げずに、か つ確実に感染歯質を除去した上で形成 を終えられるかに、Ⅱ級CR修復成功の ポイントがあると思います。また、イ ンレーの再修復の場合には、窩洞の形
態はあらかじめ決められているので、 その窩洞を広げずに感染歯質だけを除 去します。その後の接着操作について は、現在の『メガボンド2』であれば プライマーを塗って20秒待つなどの ルールは、メーカーの推奨通りに行う ことが重要です。さらに光照射につい ても、「青い光が出ていればいい」とい うことではなく、光で硬化する材料の 場合、光の強度や距離は常に留意して おかないと、プライマーやボンディン グ材をどれだけ丁寧に扱っても、期待 した性能が発揮されない可能性があり ます。
田代『メガボンド2』を使用する場合、 プライマーのさらっとした性状とpH 2.0程度という状況を考えれば、一滴ず つでは足りない可能性があることは、 セミナーなどでよくお話しします。特 に実習模型の人工歯は大規模で充填し やすい窩洞形態が多いので、最低でも プライマーは2滴、ボンドは1滴を出し て、まずはマージンから塗っていきま す。プライマーはサーッと垂れて窩底 に溜まりますから、それをすくい上げ てもう一度塗るとか、新鮮な液を2回
程度追加して、心の中でゆっくり20秒数えます(笑)。それを行うことで、窩 洞全体に『メガボンド2 プライマー』 の脱灰能力をしっかりと機能させるこ とができますので、塗り方と液量は窩 洞の大きさに合わせることが重要だと 考えています。そして、ボンディング 材に関して光照射を疎かにしないとい う、先ほどの秋本先生のお話につな がっていくと思います。
隣在歯との接触点、隣接面、咬合面形態の再現のポイント
![[写真] 対談風景](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2024/06/189-2_doctor05.jpg)
田代秋本先生がお話しされたように、初発のう蝕は術者が窩洞形態を決められるため、比較的アプローチしやすいと思います。私の場合、小さな窩洞だと、使い慣れていてコストも安価なトッフルマイヤータイプのマトリックスシステムを使うことが多いです。介入の第一段階として、そうした手軽な選択肢を持つことも重要です。ただ、インレーなどの再修復で、術者が窩洞の形態をコントロールしにくい場合には、『コンポジタイト3D
システム』(ギャリソンデンタル)を上手に活用していかなければいけない状況になってきます。現在S、M、Lと3種類のリテーナーがありますが、Lタイプが追加されたことによって、咬頭を失った大きなⅡ級窩洞など、これまで間接修復の適応症だったケースに対して、CRによる直接修復が可能になったと感じています。
秋本マトリックスシステムの革新的な変化でしたね。
田代ただ、そこで今度はどのシステムがどの窩洞にもっともフィットするのかを、皆さん悩むようになり始めたわけです。私はSサイズを普段よく使っていますので、Sサイズを使ったときに、隣接面歯質の喪失程度がこのくらいだとうまくいく、というイメージが体に染み付いています。従って、そのイメージにいかに近づけるかを目標にしています。MIの精神から健全歯質を削ってはいけないと思うがゆえに歯質を残しすぎて、うまくリテーナーが適応できないケースも実は意外にあって、その場合は、本当は残しておきたいんだけれども、少しだけ健全歯質を削ることで、適応しやすくなるという場面もあります。さらに、Sタイプで足りない場合にはMやLタイプを試していく。Lでも足りないような大型の窩洞であれば、一度ある程度のところまで持っていってから、さらにもう1回形を削り直して得意な形に持っていくように、パターンに分けて行っています。
Ⅱ級コンポジットレジン修復の10年フォローアップ症例 秋本 尚武先生
図1 5 の冷水痛が主訴。二次う蝕が疑われたためメタルインレーを除去し、CR修復を行うことにした。
図2 ラバーダム防湿後、窩洞形成を終え隔壁を設置した様子。歯肉側マージン部が、隔壁システムでしっかりと封鎖されているのが判る。
図3 接着処理後、「クリアフィル マジェスティ ESフロー」(クラレノリタケデンタル)による充填修復。
図4 形態修正・研磨を終えた術後の様子。
(初回治療日: 2012年12月25日)
図5 術後6年4ヵ月経過のフォローアップ観察。CR修復部は異常なく機能・維持できていた。
( 観察日: 2019年4月25日)
図6 術後約10年経過のフォローアップ観察。CR修復部に若干の変色は認められたが、その他臨床所見はなかった。
(観察日: 2022年12月20日)
大型Ⅱ級窩洞への対応
![[写真] コンポジタイト3D システム](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2024/06/189-2_photo02.jpg)
畑山大型Ⅱ級窩洞には間接法を選択される先生が多いと思います。ただ、間接法の場合、仮封を挟む2回法で行うことが多いですから、患者さんは仮封を気にしながら、次の治療日までお待ちいただかなくてはなりません。そういうケースにおいて、『コンポジタイト3D
システム』のLタイプリテーナーを用いることで、その日のうちに治療を終わらせることができます。咬頭を被覆した場合、チッピングなどが発生する可能性はゼロではありませんが、直接CR修復ではリペアが可能ですから、患者さんに「もし欠けてしまったら、欠けた部分だけ治せますから、すぐ教えてください」とお伝えしておくと、とても安心されますね。
秋本直接修復では、削った部分に直接接着処理を行うことができますので、どんなに大きな窩洞であっても、削ったその場で接着処理を行うことができるのは非常に大きなメリットだと思います。そういう意味では、窩洞の大小に関係なく直接CR修復が行えるところが魅力なんですね。ただ、大きなインレーが外れたときに、直接CR修復で試してみようとすると、従来のリテーナーではどうしても難しいところがありましたので、田代先生が先ほどお話しされたような、何回かに分けて充填してからリテーナーを装着するなどのテクニックが必要でした。しかし、Lタイプのリテーナーが発売され、それが一度にできるようになったことは、ある意味、Ⅱ級修復に対する直接修復の適用範囲が広がったとも言えます。
『ストラタG システム』
畑山昨年発売された『ストラタG システム』(ギャリソンデンタル)が、従来の『コンポジタイト3D システム』から大きく変わったと感じるのは、リテーナーです。『コンポジタイト3D システム』で対応できる症例もたくさんありますし、私自身満足していました。しかし、今回、『ストラタG システム』を模型にセットしてみると、把持するラバーの部分が従来よりもややソフトになっている印象があります。さらに上部鼓形空隙の部分も、羽を伸ばしたように、少し内側に入り込んでいます。これまでⅡ級修復を行うときに、上部鼓形空隙の形が少し開き気味になってしまい、隣在歯が近くて形態修正が難しい場面がありました。そういうケースでも『ストラタG システム』は上部の漏れも少なく、少し内側に入り込んだ形状で仕上げられるため形態修正も行いやすいです。解剖学的に見ても、健全歯に近い隣接面形態を仕上げやすい印象を持ちました。詳しくは、この鼎談の後に続くClinical Reportに書いていますので、ご一読いただければと思います。
Ⅱ級コンポジットレジン修復のリペア症例 田代 浩史先生
図1 6CR修復部の部分破折が主訴。窩洞形成前に咬合接触点を確認。
図2 ラバーダム防湿と隔壁設置を行い、窩縁部エナメル質へのセレクティブエッチング処置。
図3 旧CR修復部への「ポーセレンボンド アクティベーター」(クラレノリタケデンタル)と「クリアフィル メガボンド2」プライマーとの混和液によるシランカップリング処理。
図4 窩洞全体へ「クリアフィル メガボンド2」(クラレノリタケデンタル)を用いてボンディング処理。
図5 隣接面窩底部へ「クリアフィル マジェスティ ESフローUniversal High」(クラレノリタケデンタル)を用いてライニング。
図6 ペーストレジンを充填し補修修復が完了した様子。
仕上げの形態修正と研磨操作
田代Ⅱ級修復の仕上げでもっとも留意すべきことは、隣接面歯肉側から立ち上がる部分だと思います。そこは最後に研磨で仕上げるのが難しいので、いかに歯肉側にきちんとマトリックスを挿入し、適切な位置でレジン充填ができるか。ウェッジの役割ももちろん大事ですが、ラバーダムシートもマトリックスを窩洞の歯質側に押してくれることによって、その段差が必要最小限になるわけです。それでも、ボンディング材のバリや薄く伸びたフロアブルレジンの張り出しなどは当然出てきます。歯肉に近い部分の仕上げについては、最初にメスやレジンナイフのようなもので歯肉側の細かいバリを剥がし取っておいて、その後、プラスチックストリップス(ニッシン)を600番(中研磨)から1000番(仕上げ研磨)へと段階的に細かい目のものに変えながら、コンタクトポイントに触れないように、側方から挿入して歯肉側研磨を2段階で仕上げていく方法で行っています。
咬合面については、小窩や裂溝の部分はできるだけ消えてほしくないので、窩洞の深さに対して1層目、2層目、そして最後の3層目がどういう形で残存歯質と移行的に咬頭を作れるか。さらに、最終的にできた溝が消えない程度に咬合調整が済むような分量で充填できるかが大事なポイントだと思います。しかし、やはり膨らんで充填しているので、凸の部分は多少対合歯と当たってきますから、そこは調整した後に研磨ポイントで段階的になめらかになるように磨いていくと良いと思います。
畑山ちょっと話が逸れますが、私も咬合面をペーストレジンで充填していた時期があって、当時は咬合面形態をいかにリアルに再現できるかに神経を注ぎながら充填・研磨していました。ただ、それが患者さんの希望とマッチングしていたかというと、そうではない声も意外とありました。そういう反省もあって、フロアブルレジンで咬合面形態を作るようになってから、まず治療時間がとても短くなったので、「治療が楽になった」と患者さんから感謝されるようになりました。さらに、ペーストで詰めていたときは、無意識のうちに削っていないエナメル質の上にペーストが乗ってしまうことも多かったんです。するとその後の咬合調整がとても大変でした。また、窩洞形成を行ったエナメル質の角度に合わせて、フロアブルレジンで咬頭を作成することで、余剰部分が非常に少なく、咬合調整も目に見えて楽になったと感じます。
3種類のフロアブルレジンを活用したⅡ級修復の症例 畑山 貴志先生
図1 術前写真。6古い修復物下の二次カリエスの治療。
図2 「カリエスディテクター」(クラレノリタケデンタル)を塗布し感染歯質を除去した後に「ストラタG システム」(ギャリソンデンタル)を用いて隔壁設置。
図3 「クリアフィル メガボンド2」で接着操作を行い、「クリアフィル マジェスティ ES フローUniversal High」を用いて一層ライニング。
図4 「クリアフィル マジェスティ ES フローUniversal Low」(クラレノリタケデンタル)を用いて隣接面部および咬合面象牙質相当部の充填を行う。
図5 「クリアフィル マジェスティ ES フローUniversal Super Low」(クラレノリタケデンタル)を用いて咬頭面隆線の充填を行う。
図6 術後写真
Ⅱ級CR修復の未来像
![[写真] 対談風景](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2024/06/189-2_doctor06.jpg)
秋本フロアブルレジンだけを使い始めて約15年が経過しましたが、その間大きなトラブルを経験していないので、Ⅱ級修復に限らず、どの修復においてもCR修復はもはやスタンダードな治療法になっていると感じます。一般臨床家は、まだⅠ級・Ⅱ級の咬合面の咬耗や摩耗、破折などを気にされていると思いますが、これまでの自身の臨床において、そうしたトラブルはほとんど認められていません。さらにCR修復の良いところは、リペアが可能な点です。仮に摩耗が目立つような部分があれば、その部分だけを補修したり、メインテナンスを繰り返しながら、最初に削った窩洞形態のまま、ずっと経過観察ができるのはCR修復だけがもつ利点だと感じています。今後、CR修復をう蝕治療の第一選択として考えられることをお勧めしたいですね。
田代小さくて詰めやすいと思うタイミングで介入しておくと、無理のない窩洞で精度の高いボンディング材やフロアブルレジンを使えるので、自然とその後の予後も良くなります。そうすると、まずその修復物自体が長持ちします。さらに、もしその部分に問題が起きたとしても、次の段階を最小限で削ることができれば、大きな治療に発展していくことは少ないでしょう。場合によってはすべて外さなくても部分的な修復が可能という、リペア修復が成立するケースも今後増えてくるのではないでしょうか。
畑山世界的に金属が高騰している点からも、CRによる直接修復が注目され、あらためて勉強したいという先生も増えていると感じます。ただ、一つとして同じ歯の位置関係や窩洞はないというところがⅡ級修復の難しい点です。窩洞をよく観察して、「この窩洞ならこのマトリックスで、この位置関係ならこのウェッジを使って」というふうに知識として持っていただけると、Ⅱ級修復がよりシンプルで楽しく感じてくるのではないでしょうか。
秋本個人的に患者さんにいちばん喜んでもらえて、「うまくできた」という達成感を感じる症例は、下顎の小臼歯に入っているⅡ級のメタルインレーだと思います。それをCRで治してあげると、患者さんも見てすぐに分かるので感動も大きいと思います。下顎の4番・5番に小さなメタルインレーが入っている方はたくさんいらっしゃるので、そこをCRで充填してみてください。「先生すごい!」と患者さんはとても喜んでくださいます。それを一度味わうと、「次も試してみよう」とか「もっとうまくできるように勉強しよう」と、良い流れになっていくのではないでしょうか。
田代部位としては秋本先生がおっしゃった下顎の4番・5番。具体的に言うと、4番の近心は少し難易度が高いので4・5間か、5・6間の近遠心的にスライスカットが入っていないアマルガムかメタルインレー。その部分に『ストラタG システム』のSサイズをまず使ってみるのが上達の早道だと思います。
畑山最後に私の方から一つご提案ですが、隣接面のう蝕は咬合面側から見えないことも多いですし、患者さんもう蝕の存在に気づいていないことが多いです。そこで、術前、術中、術後の写真を撮って患者さんにお見せすることをお勧めします。きれいに充填すればするほど術前術後の違いが分からなくて、「どこを治療されたんだろう」ということになりかねません。患者さんに、「この部分にCRとボンディング材を使って、さらにマトリックスシステムを用いて充填したんですよ」とお伝えしてみてください。患者さんに「そんな方法で治療してもらったんだ」と思ってくだされば口コミで伝わるでしょうし、「あの先生はできるだけ歯を削らずに治療してくれる」という評判が広がる可能性もあるでしょう。これからの歯科診療において、そうした工夫や努力はさらに重要になってくると感じています。
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