187号 WINTER 目次を見る
目 次
- ≫ 2年近く前にそれまで勤めていたお2人の歯科衛生士が順に退職し、大変だったと伺いました
- ≫ 最初、なぜ保月さんに声をかけられたのでしょうか?
- ≫ 保月さんは秋本先生から声をかけられたとき、どんな気持ちでしたか?
- ≫ 伊豫さんは保月さんから誘われた時にどう思いましたか?
- ≫ 前任のお2人は退職するまで長く勤めておられました。歯科衛生士さんに長く働いてもらうために心がけていることはありますか?
- ≫ 職場の環境面で心がけていることはありますか?
- ≫ お2人から見て、秋本歯科診療所の魅力はどんなところでしょうか?
- ≫ お手本となる先輩がいない中で、歯科衛生士業務をスタートしたわけですが、心配はなかったですか?
- ≫ 今度は診療の様子を伺いたいのですが、保月さんと伊豫さんが普段、心がけていることはありますか?
- ≫ プロケア、セルフケアのお話がありましたが、皆さんがおすすめの歯磨きグッズなどはありますか?
- ≫ あらためて秋本先生から歯科衛生士不足について、歯科医院は今後、どのように対処していけばいいのか、お考えをお聞かせください
- ≫ 受付業務を担当されている秋本先生の奥様にもお話を伺いました
横浜市中区 秋本歯科診療所
院長 秋本 尚武 歯科衛生士 保月 華音/伊豫 若菜
―2年近く前にそれまで勤めていたお2人の歯科衛生士が順に退職し、大変だったと伺いました
秋本Dr.:当院は開業して10年目になりますが、それまでは歯科衛生士不足で悩むなんてことを想像すらしていませんでした。もともと当院は歯科衛生士である妻と2人で始めましたが、開業して半年くらい経って、患者さんも増えた時にタイミングよく近隣の歯科衛生士学校から実習生が2人通うことになりました。実習生なのですべての業務が行えるわけではありませんが、それでも人手があることでとても助けられました。それから、ありがたいことに彼女たちは卒業後の進路として、当院で働くことを選んでくれて、ずっと歯科衛生士業務を支えてくれていました。
ところが、コロナ禍が始まってしばらくすると、1人が育児休暇を取得して、その後退職し、さらにその育児休暇中に以前実習生だった歯科衛生士が就職しましたが、1年足らずで退職しました。そこでちょうどその頃実習生として通っていた保月さんに声をかけ、なんとか難を逃れたと思った矢先、今度はもう1人の歯科衛生士からも退職の意向を伝えられ、「これは大変だ」と思いました。急いで保月さんに相談したところ、同じ歯科衛生士学校で親友だった伊豫さんを紹介してくれて、現在に至ります。
―最初、なぜ保月さんに声をかけられたのでしょうか?
秋本Dr.:実習生として通っていたときに少しでも手があくと、「何かやれることはありませんか」と聞いてきたんです。これまでも優秀な実習生はたくさん見てきましたが、積極的に仕事を探そうとしたのは彼女が初めてでした。歯科衛生士は患者さんやスタッフときちんとコミュニケーションが取れるかどうかが大切で、それによって院内全体の雰囲気も変わってきます。彼女の積極的で前向きな人柄に惹かれ、妻も「お願いするなら保月さんがいい」ということですぐに声をかけました。
―保月さんは秋本先生から声をかけられたとき、どんな気持ちでしたか?
保月DH:ちょうど国家試験の最中で就職活動をしていた時期でもありました。秋本歯科診療所みたいな職場で働きたいという気持ちはあったのですが、空きがないと思い込んでいたので本当に驚いたし、嬉しかったです。
私は勉強が苦手で失敗も多かったのですが、そんな私に怒鳴ることもなく、イチからいろいろなことを教えてくれて、学校の勉強まで面倒をみてくださったのが秋本先生です。だから先生には感謝しかないです。
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秋本院長は長年「ソアリック」を愛用している。「タービンや超音波スケーラーなどのコントロールがしやすくて気に入っています」と秋本院長。 -
ソアリックのバキュームタンク自動洗浄システムは秋本院長がお気に入りの機能のひとつ。「バキュームの中はよく汚れるので、毎日必ず洗浄しています」と秋本院長。 -
開業当初から活躍しているウォッシャー・ディスインフェクター。針刺し事故の防止や時短に貢献している。
―伊豫さんは保月さんから誘われた時にどう思いましたか?
伊豫DH:ずっと前から保月さんから「先生も奥さんもいい人」と聞いていたので、「会いたいな」と思っていました。それで、実は治療相談で患者として受診したことがあったんです。そしたら噂通りに優しくて、 「いいな」と思いました。だから、誘われた時は私も嬉しかったです。
―前任のお2人は退職するまで長く勤めておられました。歯科衛生士さんに長く働いてもらうために心がけていることはありますか?
秋本Dr.:前任の2人とは妻も含めて家族のような付き合いをしていました。今の2人になってからもそうなのですが、みんなで食事によく行くし、研修と観光を兼ねた旅行を企画することもあるし、本当に家族のように付き合っています。
伊豫DH:みんなで食事をしていたら家族と間違われることもあります(笑)。
秋本Dr.:顔は似ていないのにね(笑)。知らない人からすると歳が離れているのに4人とも仲がいいので、不思議な関係に見えるようです。
―職場の環境面で心がけていることはありますか?
秋本Dr.:開業当初から妻が受付業務を行っていて、忙しくならないように予約の調整をしてくれているため、残業はありません。労働時間にはずっと気をつけています。設備で言えば、開業時からウォッシャー・ディスインフェクターを導入しています。洗浄業務が自動化されるので時間を有効に使えますし、針刺し事故の防止にもなります。ウォッシャーは導入してよかった設備のひとつですね。
保月DH:私は最初の実習先が当院で、ウォッシャーを初めて見ました。てっきりどの歯科医院にもある設備だと思っていたら、次の実習先にウォッシャーがなくて驚いた記憶があります。
伊豫DH:私もここで初めて見ました。作業の時短になるのは嬉しいですね。
―お2人から見て、秋本歯科診療所の魅力はどんなところでしょうか?
保月DH:先生も奥さんも人柄が素敵なんです。特に奥さんとは初めてお会いした時、すぐに好きになっちゃいました。今でも時間が空いたら受付に行って奥さんとお喋りしています(笑)。
伊豫DH:私も初めて挨拶をした瞬間から「この人について行こう!」と思ったくらい、奥さんの優しい人柄に惹かれました。知らない患者さんが来院された時には名前やどういう人かということを教えてくれて、「大丈夫だから」と安心させてくれるのも嬉しいですね。
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受付の横にはたくさんのセルフケアグッズが並ぶ。保月歯科衛生士と伊豫歯科衛生士が勤務するようになって以来、セルフケアグッズの売れ行きも好調なのだとか。 -
院内では「衛生士の紙」と呼ばれる記録用紙。患者さんの趣味やお孫さんの名前など、雑談で気になったことは何でもここにメモ書きして、会話の引き出しを増やしている。 -
独自で制作された「セルフケア問診票」。セルフケア用品を使用するタイミングをはじめ、詳細なチェック項目が記載されている。
―お手本となる先輩がいない中で、歯科衛生士業務をスタートしたわけですが、心配はなかったですか?
保月DH:アルバイトとして当院で働いたこともあったので、だいたいの業務内容は頭に入っていました。でも、3月中旬くらいに正式に働き始めて数日で先輩が退職し、しかも4月からは新しい実習生が来て、今度は私たちが教える立場になりました。そんな状況だったので、最初の頃は記憶がないくらい忙しい毎日でした。
伊豫DH:もし分からないことがあっても、先生が時間を割いてくれて、TBIなどの歯科衛生士のテクニックについても細かく教えてくれたので、不自由を感じたことはありません。
秋本Dr.:大学で長く学生を指導していた経験があるので、彼女たちに伝えることはすべて基本通りのことです。日によって言うことが変わるとか、そういうことがないので、分かりやすいのかもしれません。よく「新人教育が大変だ」という話を聞くことがありますが、私自身はあまりそう感じたことはありません。どちらかと言えば、「見て覚えて」というやり方なのですが、患者さんへの説明についてもすべて私を真似てもらえばいいと思っています。基本的に怒ることもありませんし、彼女たちがスケーリングなどを行った後は必ず私がチェックをしますが、その時も「歯石が取れていないからこうしろ」みたいなことは言いません。やり直しもさせませんし、やり直しが必要な時は私が処置をします。ただ、彼女たちから「どうしたらいいですか?」と聞かれた時は、きっちりと教えるようにしています。
保月DH:先生から怒られたり、頭ごなしに命令されたりしたことはないですね。
伊豫DH:私も記憶にないです。
―今度は診療の様子を伺いたいのですが、保月さんと伊豫さんが普段、心がけていることはありますか?
保月DH:先生と奥さんが大好きなので、お2人に迷惑がかからないように。そして、お世話になっているので恩返しがしたくて、頑張って患者さんをケアして笑顔で帰っていただくことが今できる恩返しだと思って頑張っています。
伊豫DH:私も保月さんと同じで皆さんに迷惑がかからないように気をつけています。ただ、やっぱりいちばん大切なのは患者さんなので、次回も来院していただけるように口腔内をきれいにして帰っていただくことを心がけています。
秋本Dr.:実は2人が勤務するようになって、予防処置が終わったほぼすべての患者さんから「気持ちよかった」という感想をいただくようになりました。たぶん、技術的なことではなく、触られ方とか会話とかそういう部分で患者さんから喜ばれているんだと思います。あとは褒め上手なのか、セルフケアを頑張ってくれる患者さんが増え、プラークスコアが一桁台の方がこの1年で多くなりました。これは彼女たちのすごいところだと思っています。
先日、彼女たちから「TEKを覚えたい」という相談を受けました。私としては嬉しいけれど、まずはプロケアをしっかり行って、セルフケアの大切さをしっかり伝えられる歯科衛生士になって欲しいと思っています。
―プロケア、セルフケアのお話がありましたが、皆さんがおすすめの歯磨きグッズなどはありますか?
保月DH:私は唾液の量が多いので泡立ちが少ないCheck-Upの歯磨剤が好きでよく使っています。
伊豫DH:私も香味がやさしいCheck-Upの歯磨剤が好きですね。あとはステイン除去を期待して、Brilliant more Wを使うこともあります。
秋本Dr.:私自身は以前からプラークコントロールが大切だと考えているので、セルフケアグッズの販売には力を入れています。「Check-Up standard」は、以前と比べてフッ素濃度が高くなり、滞留性も上がっているので、よりう蝕予防が期待できると考え、当院でも扱っています。
保月DH:先生がセルフケアグッズに理解を示してくださるのも歯科衛生士として嬉しいですね。
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プラークコントロールを重視する秋本院長のお考えのもと、セルフケアグッズの販売にも注力している。 -
―あらためて秋本先生から歯科衛生士不足について、歯科医院は今後、どのように対処していけばいいのか、お考えをお聞かせください
秋本Dr.:私は30年近く大学で指導する立場だったので、学生たちの気質の移り変わりを間近で見てきました。実は、以前は学生によく怒っていたんです。けれども、ある時期から怒ると逆に反抗する学生が増えたように感じました。今の若い世代はたぶん、怒って何かをやらせようとか、反省させようとか、そういう発想では育てることは無理なんじゃないかと思っています。
以前、実習で来ていた歯科衛生士から、勤務先を「1日で辞めました」と連絡がありました。理由を聞いたら「院内が汚れているのにたくさんいる歯科衛生士の誰ひとり片づけようとしなかったから」ということでした。それで「こんな職場は耐えられない」と。そうした積み重ねで職場の環境は良くも悪くもなると思っています。そして、それを良くできるのは院長だけじゃないでしょうか。
私の場合は前任の歯科衛生士たちも今の2人も偶然出会えたので何よりだったのですが、歯科衛生士たちへの感謝の気持ちは常に忘れないようにしたいと思っています。
受付業務を担当されている秋本先生の奥様にもお話を伺いました
秋本 圭子さん
歯科衛生士さんはいてくれるだけでありがたい存在だと思っています。歯科医院は患者さんが来院していただかないことには成り立たないですし、歯科衛生士さんがいてくれないとうまくまわすことができません。だから、まずは皆さんへの感謝の気持ちをいちばん大切にしています。
受付業務としては、2人がなるべく忙しくなりすぎないように予約を調整しています。また、時間がある際には片付けなども手伝うようにして、うまく業務がまわるように陰から支えることを心がけています。
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