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神奈川歯科大学附属「歯科・健脳クリニック日本橋」認知症予防に向け本格運用を開始

神奈川歯科大学 先端臨床医学系 口腔再建学分野 特任教授 歯科・健脳クリニック日本橋 院長 児玉 利朗/神奈川歯科大学 臨床先端医学系 認知症医科学分野 認知症・高齢者総合内科 教授 眞鍋 雄太

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[写真] 神奈川歯科大学 先端臨床医学系 口腔再建学分野 特任教授 歯科・健脳クリニック日本橋 院長 児玉 利朗
神奈川歯科大学
先端臨床医学系 口腔再建学分野 特任教授
歯科・健脳クリニック日本橋
院長 児玉 利朗

本誌185号(2023年6月1日発行)において、開院に伴うプレスリリースの模様をご紹介した神奈川歯科大学附属「歯科・健脳クリニック日本橋」。開院から3ヵ月が経過した現在の運用状況を、院長の児玉利朗先生と、認知症専門医の眞鍋雄太先生に伺いました。

<児玉利朗 院長>

当院は、患者様の口腔内の状況や要望に合わせて治療のプログラムを決定していくオーダーメイドの自費診療専門クリニックです。
通常の歯科医院に見られるような疼痛が主訴で来院する方はほぼいらっしゃらず、今後の治療方針についてカウンセリングを望んで来院される方や専門的な治療依頼の紹介が多い印象です。ですから、初診の場合、まずカウンセリングルームで時間をかけてお話を伺います。当日検査を希望される方は、口腔内検査・X線検査・歯周組織検査・P.g 菌などの臨床検査を行い、その結果をご説明します。次回来院時にはその検査結果を資料としてお渡ししています。その後、策定した治療計画を双方向的に相談し、ご納得いただいた後に治療が始まります。当院では、歯周治療、インプラント治療、補綴治療、マイクロエンド治療を各専門医が専門性の高いレベルで治療を行うだけでなく、事前に実施した細菌検査や歯周病の状態についての口腔内状況を確認し、場合により内科への対診を実施したうえで治療を進めます。その背景としては、P.g 菌のレベルによってアルツハイマー型認知症の原因の1つとされている「アミロイドβ」への対応が変わってくることから、医科と随時連携しながらの治療が重要となってきます。さらに、内科受診の患者様についても同様の対応を実施します。近年では、歯周病に関しては全身疾患との関係性が強いことが知られており、アルツハイマー型認知症や糖尿病、心疾患や脳梗塞はその最たるものと言えるでしょう。その点において、当院では認知症のリスク因子を減らすために徹底した歯周病治療を行う体制が整っていることが大きな特長です。
現在のところ当院には検査を受けて現状を確認したいという方が多く、歯周病の場合でも軽度から中等度の方がほとんどですが、今後は重度の歯周病の方が来院されるケースも増えることが予想されますので、各科専門医チームによるオーダーメイドの歯科治療を医科歯科連携のもと、引き続き提供して行く所存です。

  • [写真] クリニックの外観
    クリニックの外観。日本橋三越本店 新館5階にある。
  • [写真] 受付・待合室
    受付・待合室。和のテイストをベースに上質で高級感を感じさせる。
  • [写真] 患者さんを診療室へと導く導線
    患者さんを診療室へと導く導線。向かって左側には歯科診療室、右側には認知症診断室などが並ぶ。
  • [写真] カウンリングルーム
    診療室に入る前にカウンリングルームで「Trinityアニメ」などを使いながらじっくりと患者さんの要望をヒアリングする。
  • [写真] X線室
    X線室には、CT専用、パノラマ+セファロ用、デンタル用と用途別に3種類のX線装置を導入。
  • [写真] 歯科診療室
    おもに保存・歯周治療を行う歯科診療室。医療機関向け空気浄化装置も設置し、クリーンな診療空間を実現。

<眞鍋雄太 先生>

[写真] 神奈川歯科大学 臨床先端医学系 認知症医科学分野 認知症・高齢者総合内科 教授 眞鍋 雄太
神奈川歯科大学
臨床先端医学系 認知症医科学分野
認知症・高齢者総合内科
教授 眞鍋 雄太

当院に来院する方は50代、60代の方が多く、明らかな認知症の症状が出ているわけではありません。ところが歯科に来院されて歯周病のリスクが高い場合、その患者さんは私のところに紹介されます。そこで認知機能をチェックしてみると、アルツハイマー病が見つかるケースも実際にありました。アルツハイマー=認知症ではなく、アルツハイマーが「ステージ4」という段階になって初めてアルツハイマー病に伴う認知症、すなわち「アルツハイマー型認知症」と診断されます。そういう方は、症状こそみられませんがアルツハイマー病を発症している状態であり、認知症を発症させないために、早い段階からの予防的介入が必要になります。
当院では脳内に蓄積したアミロイドβ蛋白を可視化する「アミロイドPET」という検査を導入し、症状が現れる前にアルツハイマーの予兆をとらえることが可能です。さらに今年の秋にはアルツハイマー病の抗体治療薬が厚生労働省により認可される予定もあり、それらを活用することで近い将来アルツハイマー病に罹患しても認知症を発症しない時代が来るはずです。私はこのクリニックの存在意義もそのような予防的介入を他に先駆けて行うことにあると考えています。
一般的に私たちの脳神経内科領域の医師は、認知症性疾患の診察をするにあたり、「神経学的診察」を行います。意識明晰度や認知機能の評価をするために認知機能検査を行います。また、「打腱器」を使用して関節の腱反射も診ます。腱反射の亢進や病的な反射を認める場合、「この方は脳のあそこの場所に異常がある」ということを予測することができます。さらに筋肉の抵抗や萎縮の有無を診ることで、特定の神経変性疾患や筋原性疾患、中枢神経の問題なのか、末梢神経の問題、筋肉そのものの問題なのかを確認します。
「新オレンジプラン」(認知症施策推進総合戦略)で目標として掲げられていますが、医療従事者は職種に関係なくあまねく認知症疾患に取り組んでいく必要があります。今や認知症は誰もが関わる可能性のある身近な病気です。歯科の先生方にも、長年診ている患者様で「最近ちょっと様子がおかしいな」と感じたご経験があると思います。そんな状況に遭遇したら、最寄りの脳神経内科医や老年精神科医、認知症サポート医にご紹介いただければと思います。

  • [写真] 歯科診療室で歯周基本検査を行っている様子
    歯科診療室で歯周基本検査を行っている様子。
  • [写真] 神経診察①
    神経診察① :「打腱器」を使って、反射の亢進がないかを調べる。
  • [写真] 神経診察②
    神経診察②:病的反射の有無を確認して、錐体路という神経経路に異常がないかを確認する。図はTrömner反射を確認しているところ。
  • [写真] 神経診察③
    神経診察③:上肢の姿勢時振戦(手の振え)の有無や、誘発性振戦の有無を診ている。
  • [写真] 神経診察④
    神経診察④:パーキンソン症状の一つ、筋強剛の有無を確認する。筋肉の緊張が亢進していると、他動的に関節を動かした時に、ガクガクとした抵抗を感じる。
  • [写真] 「アミロイドPET」診査
    画像で「アミロイドβ」の集積の程度を診る「アミロイドPET」診査。赤く染まっている部分が集積したアミロイド。

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