187号 WINTER 目次を見る
Technical Report
セラビアン®ZRパウダー選択の勘所~色合わせ症例へのパウダー選択基準の基本と考え方~
キーワード:PFZの優位性と応用例/強いオパール性を有したトランス陶材
目 次
- ≫ はじめに
- ≫ 1. 歯頸部(歯肉移行部)の彩度の表現
- ≫ 2. 切縁部における透明感の表現
- ≫ 3. 明度、オパール性の高い歯牙へのトランス陶材での対応方法
- ≫ 4. セラビアン®ZR FCペーストステインの有効な使用法 ~PFZのエクスターナルステインとして~
- ≫ おわりに
はじめに
現在、前歯部審美領域の補綴装置製作においては、オールセラミックスが主流である。ジルコニアディスクの強度面、透過率、品質向上によりステインテクニックによるフルジルコニアクラウンの需要が高まっているが、筆者の認識では、従来のPFZ(Porcelain
Fused
Zirconia)はいまだに多くの歯科技工士や歯科医師から高い信頼を受けている。また、臨床において対応する症例が、「フルジルコニアクラウンで対応可能なのか?」あるいは、「PFZでないと難しいのか?」といった判断を適切に行う必要があるため、歯科技工士と歯科医師は、ジルコニア材料の物性とカラーマネジメントの知見を有することは重要であり、歯科技工士であれば色調再現の知識とテクニックの習得と研鑽は必須であると考える。
今回、ご提示する臨床例で使用しているクラレノリタケデンタル株式会社のPFZ用陶材であるセラビアンZRは、優れた耐チッピングおよび耐クラック性能を有しているとともに、様々な天然歯の色調を再現可能な充実した色調展開がなされていることから(図1)、著者は日常臨床において安心して使用できている。本稿ではセラビアンZRを使用した前歯部補綴装置製作における陶材の選択基準とFCペーストステインのPFZにおけるエクスターナルステインとしての応用例に関して、特にセラミックワークビギナーの歯科技工士諸氏に、以下の4点にポイントを絞りお伝えしたい。
1. 歯頸部(歯肉移行部)の彩度の表現
2. 切縁部における透明感の表現
3. 明度、オパール性の高い歯牙へのトランス陶材での対応方法
4. セラビアンZR FCペーストステイン
の有効な使用法~PFZのエクスターナルステインとして~
図1 セラビアン®ZRの色調展開。(セラビアン®ZR取扱説明書より引用)
1. 歯頸部(歯肉移行部)の彩度の表現
日常臨床において、天然歯歯頸部付近(歯肉移行部)の色調を確認すると、図2で示すように彩度が高いことが多く確認できる。補綴装置のステイニングを行う際に、歯頸部の彩度を上げようとするあまりにステイン陶材にのみ頼りすぎると、不透明度が増し中間層が影になることや、パウダー陶材に比べて蛍光性が低いことなどから、明度の低下が起こりやすくなり、結果として、補綴装置完成時の色調に深みが出ないことがある。そのため、オペーシャスボディ(OB)焼成後のボディ築盛時に、歯頸部付近に対しては、モディファイヤーのピンクをボディに配合し、彩度をコントロールする手法が有効であると考える(図3)。
また、症例によっては、ライトオレンジのモディファイヤーを併用しても効果的である。
このモディファイヤーによる色調調整は、「濃すぎた」場合の修正が困難なため、目標シェードの7割程度の調整具合とし、残り3割はステイン陶材で彩度と色相を補うイメージで行うと良い。また、明度および彩度がともに高いケースでは、使用する陶材の番手を通常よりも0.5~1シェードを上げてスタートすることによって、明度低下へのフォローになると考えている。
症例1:上顎右側中切歯PFZ症例
目標歯の歯頸部付近にピンク色の色調が確認できたため(図4)、ジルコニアフレームの表面にインターナルステインおよびオペーシャスボディの焼成を行った後、ボディおよびエナメル焼成時に歯頸部側1/5程度の範囲にボディ3:モディファイヤーピンク1の比率で配合した陶材を築盛し焼成した後、最終的にはインターナルステインにて色相を調整した(図5)。パウダー陶材で彩度を調整することにより、インターナルステインの使用量は少量で抑えられる。このテクニックの利点としては、補綴装置の色調に深みを与えやすくなることと、明度を大きく下げることなく彩度を上げる調整が可能なことが挙げられる。そのため、日常のPFZ症例に対しては、非常に効果的な手法であると認識している。
図2 天然歯写真の歯牙を切り取ると歯頸部にピンク色が確認できる。-
図3 通常の症例においては、ボディ10:モディファイヤー1~3の割合で陶材を配合している。下の写真はA1B:Pinkを10:1( 左)、10:2(中央)、10:3(右)で配合したもの。 -
図4 症例1:写真上において目標歯の歯牙を切り取るとピンク色が確認できる。 -
図5 装着写真提供:かねしげ歯科/小澤謙盛先生。
2. 切縁部における透明感の表現
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