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Field Report

長期症例から見るメインテナンスの重要性と歯科衛生士の果たす役割

大阪市浪速区 医療法人彩真会 岡﨑歯科 院長 岡﨑 英起/歯科衛生士 北島 德美/歯科衛生士 上野 友理

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目 次

大阪市浪速区 医療法人彩真会 岡﨑歯科
院長 岡﨑 英起 歯科衛生士 北島 德美/上野 友理

  • [写真] 院長 岡﨑 英起
  • [写真] 歯科衛生士 北島 德美
  • [写真] 歯科衛生士 上野 友理

<10年先、20年先を見据えた歯科治療> 院長 岡﨑英起

人生100年時代といわれる中、生涯にわたり口の健康を維持するため、私たちが大切にしているのは、10年先、20年先を見据えた歯科医療です。
当院では初診時に「歯と口の健康を保つことが全身の健康につながり、その結果QOLが向上し、健やかで幸せな人生を送ることができる」ことを患者さんに丁寧に伝えるようにしています。同時に私たち術者側は、口腔状態だけでなく、生活環境や家族の事情など、個々の患者さんのバックグラウンドを理解し、その状況に寄り添った治療やメインテナンスを進めることが大切です。
患者さんも年齢を重ねると全身疾患を患われることが増え、口腔内の環境も変化します。例えば、複数の薬を服用された結果、唾液量低下による隣接面や根面う蝕が多発したり、歯周組織にもさまざまな問題が発生するだけでなく、脳血管障害やリウマチなどによって手が思うように動かせなくなる方も出てきます。そのような状況を常に視野に入れながら治療を行い、現在は無症状であっても将来的に予後不良が想定される歯を先に抜歯しておこうという判断も必要です。何が正解かは患者さんの年齢や状況によって異なりますから、歯科医師と歯科衛生士が密に連携し、情報を共有することが重要と感じています。

<長期症例の紹介> 歯科衛生士 北島德美

今から約25年前、岡﨑院長が勤務医の頃(1998年3月)から診ている現在80代の患者さんです。これまで4名の歯科衛生士が担当として関わり、5年前から私が担当しています。2009年の健診で舌がんを患った経緯もあり、定期的なメインテナンスを怠らない患者さんです。それでも、年齢を重ねるにつれて磨き残しが増え、臼歯部のインプラントの口蓋側の歯頸部や左下犬歯のポンティック底にプラークが溜まりやすくなったり、右上中切歯近心にセメント質剥離による歯周ポケットが発生し、炎症や出血も見られるようになりました。
自宅では手磨きをされていましたが、毎回同じ部位に磨き残しが見られるので、「ソニッケアー」の「プレミアムオールインワンブラシ」を使って磨き方を指導。その結果、全顎にわたって装着されている補綴物の形態に沿って歯頸部隣接面にブラシの毛先が到達しやすく、右中切歯の隅角や白歯部の口蓋側インプラント部分の奥までブラシが届いていることを実感されました。ソニッケアーはもはや患者さんの口腔内を守るために必要な武器の一つになっています。

  • [写真] 初診時正面観(1998年3月8日)
    図1 初診時正面観(1998年3月8日) 患者さんは62歳女性。主訴は臼歯部欠損による咀嚼障害。プラークコントロールが悪く全ての歯においてBOP(+)の状態であった。
  • [写真] 初診時パノラマ
    図2 初診時パノラマ。補綴歯は全てが失活歯であり、ストラクチャー的に予後が不安な状態であった。
  • [写真] 最終補綴物装着(1999年12月10日)
    図3 最終補綴物装着(1999年12月10日) 臼歯部欠損部にインプラントを用い咬合再構成を行った。プラークコントロールも良好で「頑張って治療して良かった」と話しておられた。
  • [写真] 術後パノラマ
    図4 術後パノラマ。多くの失活歯が残存しているのが解る。今後は患者さんと歯科衛生士の二人三脚で歯周環境を守り、二次カリエスの防止を心掛けていくこととなる。
  • [写真] 術後11年(2010年6月30日)
    図5 術後11年(2010年6月30日) 2ー11に歯肉退縮が見られるためブラッシング圧のコントロールと歯ブラシの種類を変えていただくよう指導する。
  • [写真] 術後16年(2015年2月20日)
    図6 術後16年(2015年2月20日) 5年前に歯肉退縮が見られた部位が元に戻り、歯肉ラインが整った。スタッフ一同、適正なブラッシング指導の重要性を再認識することとなった。
  • [写真] 術後21年(2020年12月24日)
    図7 術後21年(2020年12月24日) 67咬合面のセラミックが破折し上部構造のやり替えを行うこととなった。また3ー1の歯牙移動によりコンタクトが少し離開したので患者さんの希望によりクラウンによる再補綴を行った。
  • [写真] 術後24年(2023年3月3日)
    図8 術後24年(2023年3月3日) 現在の状況。術後、特に大きな問題はなく経過しているが患者さんは86歳になり唾液量が減少、失活歯の根面カリエス防止のために2ヵ月に一度のペースでメインテナンスさせていただいている。
  • [写真] 術後24年のパノラマ
    図9 術後24年のパノラマ。患者さんは術後24年間、1本の歯牙も失わずに生活できていることに幸せを感じておられる。あらためてメインテナンスの重要性を実感できた症例である。
  • [写真] 「プレミアム オールインワンブラシ」の毛は柔らかく、植毛の間隔が広いことで前歯部下部鼓形空隙にも到達
    図10 「プレミアム オールインワンブラシ」の毛は柔らかく、植毛の間隔が広いことで前歯部下部鼓形空隙にも到達し、磨きにくい歯間のプラークを除去してくれる。
  • [写真] 歯と歯ぐきの境目までしっかり磨ける
    図11 インプラント上部構造の臼歯部や口蓋側歯頸部においても、毛先の長い先端部分がしなやかに歯肉溝まで入り込む形状になってるため、「歯と歯ぐきの境目までしっかり磨ける」と患者さんご自身も実感されている。
  • [写真] ブラシの毛が唇側面を包み込むように入り込んでいる
    図12 叢生が見られる下顎前歯部では、ブラシの毛が唇側面を包み込むように入り込んでいるのが解る。(参考症例)

<当院における歯科衛生士の役割> 歯科衛生士 上野友理

[写真] 岡﨑歯科のスタッフの皆さん 当院では歯科衛生士担当制をとっています。担当制には、症状の変化や状況が理解しやすく、それぞれの家庭環境や生活習慣などをきちんと把握した上でセルフケア指導が行えるというメリットがあります。「歯石がついていないから」「着色していないから」という理由で来院されない方に対しては、「う蝕や歯周病を引き起こすのは細菌が原因で、プロケアで細菌の数を減らしても時間の経過とともに細菌は増えてきます」とお伝えし、「だから次回はこの時期に来ていただきたい」と併せて提案しています。定期的なメインテナンスの必要性を理解すれば、ほとんどの方が継続して来院されます。来院の間隔については、BOP率が目標数値より高ければ短めに、低ければ長めに設定しています。次回予約は担当歯科衛生士がチェアサイドで取るため、患者さんは、個人同士の約束という認識になり、ほとんどの方が予約を守ってくださいます。その結果、キャンセル率も歯科衛生士のほぼ全員が1桁と低い値をキープできています。

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