189号 SUMMER 目次を見る
目 次
- ≫ Ⅱ級コンポジットレジン修復を第一選択にされるようになったきっかけを教えてください
- ≫ Ⅱ級コンポジットレジン修復のメリットはどんなところでしょうか?
- ≫ 拡大視野下で行うことについてはいかがでしょうか?
- ≫ Ⅱ級コンポジットレジン修復を成功に導くポイントは何でしょうか?
- ≫ 器材選びの大切さが分かりました。その他に注意点はありますか?
- ≫ 最後に、Ⅱ級コンポジットレジン修復にこれまで取り組んでこられたことについて、感想をお願いします
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神奈川県川崎市 オズ通り歯科医院
院長 有田 まき 副院長 小川 明宏
近年、Ⅱ級コンポジットレジン修復を積極的に行っているオズ通り歯科医院の有田まき院長と小川明宏副院長に、導入経緯や現状、そして成功のポイントなどについて、お話を伺いました。
Ⅱ級コンポジットレジン修復を第一選択にされるようになったきっかけを教えてください
有田Ⅱ級コンポジットレジン修復は、適合精度や咬合力への耐久性といった点に関して、ずっと疑念を抱いていました。ところが、「JT コンセプト マスターコース」に参加させていただいた時、そうした疑念を覆すような、科学的根拠に基づいたお話をたくさん教えていただきました。それがきっかけで、2020年からⅡ級コンポジットレジン修復を積極的に行うようになり、現在では全治療数の約2割を占めるまでになりました。
小川私は歯科医師になりたての頃、“コンポジットレジンはすぐに脱離したり、チッピングする”という悪いイメージを抱いていました。しかし、現在の接着技術の高さやコンポジットレジン修復の可能性を知った時は衝撃を受け、それまでのコンポジットレジン修復のイメージが一変しました。
Ⅱ級コンポジットレジン修復のメリットはどんなところでしょうか?
有田即日修復が可能なことと、健全歯質を温存しながらMIの考えに則った治療が行えること。それらは患者さんと歯科医師の双方にとって大きなメリットだと思います。
小川もしも破損や脱離といったトラブルが発生したとしても、比較的リペアが行いやすい点も挙げられると思います。間接修復のやり直しは手技としてのハードルが高く、日数がかかることもありますが、直接修復であれば、基本的に即日で行うことができます。また、切削量を最小限に抑えられるため、いざとなれば直接修復から間接修復へのやり替えも比較的容易です。残存歯質量や歯髄の状態などにもよりますが、最初から歯質を削合し、間接修復を行うのではなく、まずは直接修復を行うことも多いです。
拡大視野下で行うことについてはいかがでしょうか?
有田精密な治療が行えるため、予後の成績向上につながることは確かです。高倍率の視野が実現することによって、これまで見えなかったものが見えるようになるだけではなく、ミラーテクニックで死角が見えるようになる点も大きなメリットです。特にⅡ級修復は直視で見えにくいケースが多いので、その意味でもマイクロスコープを導入して良かったと思っています(図1)。
Ⅱ級コンポジットレジン修復を成功に導くポイントは何でしょうか?
有田症例に合わせて隔壁を行う器材を適切に選ぶことが大事だと思います。ギャリソンのマトリックスシステムは、以前にも使用していた時期がありましたが、現在の『コンポジタイト3D システム』は改良が進み、適合のクオリティが向上しました。実際にマイクロスコープで確認しても、隔壁と歯質の適合性などとても良く、Ⅱ級修復の際にはとても重宝しています(図2)。
小川器材選びに似た話にはなりますが、隔壁と歯質との適合が良くない場合は、サイズや形態が異なるマトリックス・ウェッジを使用すれば適合が良くなることが多いので、もったいないと思わず、躊躇せずに交換することが大事だと思います。リング状リテーナーやウェッジにおいても、症例に合わせたサイズ選びが大切です。その実例として、次の症例を紹介したいのですが、図3~8は左上の奥歯が欠けたという主訴で来院された20代前半の女性です。う蝕は歯髄までは達していなかったものの、う窩が大きく、間接修復を行うことを検討しました。しかし、侵襲性のことを考え、まずは直接修復をトライし、もし上手くいかなかった場合には間接修復に移行することを患者さんに伝え、処置を進めました。術後、患者さんから何かを指摘されたわけではなかったのですが、下部鼓形空隙が少し広がった形状に仕上がっていたことに気づき、将来的に食片圧入やプラークが蓄積する可能性を考え、再度コンポジットレジン修復を行いました。この症例の場合、最初にもっと豊隆が強めのマトリックスバンドを選択していれば、おそらく適合も良く、適切な形態を形成できたのではないかと思います。
図1 患者さんに治療内容を説明する際には、マイクロスコープで撮影した治療中の動画と画像を活用している。
図2 Ⅱ級コンポジットレジン修復に使用する器材類。
器材選びの大切さが分かりました。その他に注意点はありますか?
有田当たり前のことをきっちりと行うこと。そのためにも説明書を読むことをお勧めします。特にプライマー処理はメーカーが推奨する時間を守らないと、それだけで接着性が落ちてしまいます。忙しい時には、つい急いで次の処置に移ってしまいがちになりますが、私の場合はアシスタントに時間をカウントしてもらい、エラーを起こさないように心がけています。
最後に、Ⅱ級コンポジットレジン修復にこれまで取り組んでこられたことについて、感想をお願いします
有田コンポジットレジン修復やマイクロスコープなど、さまざまなセミナーに参加し研鑽を積みました。始めるにあたっては、修練の時間がある程度必要になるかと思います。ただ、低侵襲性や審美性、即日で修復できることを考えるとメリットが多い術式だと感じています。
小川私は経験が浅い状態から学んだこともあり、現在では「Ⅱ級窩洞に対して直接修復の選択肢がない」という状態は考えられません。そのくらい日々の臨床には欠かせない術式だと思っています。
図3 20代女性。左上の奥歯が欠けたという主訴で来院。う窩が大きかったが、まずは直接修復を選択した。
図4 う蝕を除去し窩洞形成を終えた状態。MOD窩洞に対し、片方ずつコンポジットレジン修復を行うことにした。
図5 「コンポジタイト3D システム」を用いて隔壁を設置し近遠心面を修復することで窩洞の形がⅠ級に変わった。
図6 充填後の状態。近遠心面のコンタクトが回復でき、問題なく歯冠修復が行えた。
図7 ミラーを用いて口蓋側からの形態を観察したところ、近心の下部鼓形空隙が少し広がった形状に仕上がっていた。
図8 食片圧入やプラーク蓄積の可能性を考え、再度コンポジットレジン修復を行った。
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- Interview 現在、II級コンポジットレジン修復は日々の臨床に欠かせない術式になっています
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