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Clinical Report
義歯のキレイをキープする-「キレイキープTM」の効果を有効に発揮させるために-
キーワード:義歯の衛生状態を向上/MPCポリマー/樹脂に化学的に結合するコーティング材
目 次
- ≫ はじめに
- ≫ 「MPCポリマー™」とは
- ≫ 使用方法
- ≫ リコール症例における適応例
- ≫ 効果とメリット
- ≫ まとめ
はじめに
皆さんはサンメディカル社の「キレイキープ」(図1)をご存じだろうか?有床義歯を「MPCポリマー」でコーティングすることで、汚れをつきにくくする効果のある材料である。当院では同システムを約2年前に導入し継続的に使用している。
本稿では、「キレイキープ」の効果を有効に発揮させるために注意している点について詳しく解説したい。
図1 「キレイキープ™」は「キレイキープスプレーⅡ」と「キレイキープライト」からなる。
「MPCポリマー™」とは
「キレイキープ」の主成分である「MPCポリマー」とは、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)という細胞膜に含まれるリン脂質に着目して開発された、生体親和性の高い化合物である。現在では人工血管やコンタクトレンズなどの医療器材に広く応用され、すでに長期にわたる実績を有した化合物である。
「キレイキープ」に含まれる「MPCポリマー」には、新たな機能として光反応性が付与されており、光エネルギーを利用して樹脂表面に化学的に結合することが可能である。これにより、主な有床義歯に用いられているアクリルレジンの他、ポリアミドやポリエステルなどの熱可塑性樹脂の表面にも「MPCポリマー」をコーティングすることができる。
「MPCポリマー」でコーティングされた義歯表面には汚れやプラークなどが付着しにくくなると報告されており1~4)、「キレイキープ」は義歯の衛生 状態を向上させる効果の高い器材だと 言える。
使用方法
「キレイキープ」の使い方は非常に簡便で、義歯床に「キレイキープスプレーⅡ」を噴霧して乾燥し、「キレイキープライト」に入れて深紫外線を照射するだけで完了する。ただし、より確実かつ効果的に行うために、当院では以下のような点に注意しながら処置している。
①義歯の清掃
義歯を新製した場合は不要であるが、リコールの場合は義歯表面の汚れを徹底的に除去しておくことが重要である。リコールの義歯への処置方法については次項で詳しく述べる。
②「キレイキープスプレーⅡ」の噴霧
洗浄時に表面へ付着した水分をエアーで完全に飛ばし、20cm程度離れた位置からスプレーを噴霧する(図2)。表面が「キレイキープスプレーⅡ」で完全に濡れるまでしっかりと行うことが重要である。
③エアーブロー
あまり強くエアーを噴射すると、まだ表面に結合していない「MPCポリマー」ごと全て飛ばしてしまうことになるため、弱圧で行う必要がある(図3)。「キレイキープスプレーⅡ」には溶媒としてアルコールが含まれており、同アルコールを揮発させるイメージで、濡れている表面を観察しながら弱圧で乾燥させるように行うと良い。
④深紫外線照射と水洗
付属している無色透明のビニール袋に、なるべく義歯床面が接触しないようにそっと入れ、「キレイキープライト」にセットし、片面3分ずつの深紫外線照射(図4)を行ったのち、水洗する。
なお、正しくコーティングが行われている場合には、水洗する際に軽く義歯床面に触れると驚くほど滑りが良くなっていることが判る(図5)。また、義歯の表面は親水性が増し、水で濡れているとツヤツヤとした光沢が見られるようになる(図6)。
図2 義歯床全体に満遍なく塗布できるように約20cm離してスプレーすると良い。
図3 エアーは弱圧で、溶媒(アルコール等)だけを揮発させるイメージで行う。
図4 付属のビニール袋に入れ、「キレイキープライト」にセットし、深紫外線を照射(片面3分)する。
図5 軽く義歯床面に触れると驚くほど滑りが良くなっていることが多い。
図6 水で濡れているとツヤツヤとした光沢が見られる。
リコール症例における適応例
「キレイキープ」の性能を有効に発揮させるためには、義歯床表面が物理的に滑沢かつ、清潔である必要がある。そのため、基本的には新製義歯に対して実施するのが理想的だといえる。しかしながら実際の臨床現場においては、すでに使用が開始されている義歯に対して「キレイキープ」を行う場合も少なくない。そこで、リコール症例において「キレイキープ」を効果的に適用するためのポイントについて解説する。
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