149号 SUMMER 目次を見る
朝日大学歯学部卒業後は大学院歯学研究科に進み、足かけ14年間、母校で研究・臨床・教育に勤しみながら、口腔科学共同研究所ポスドク、口腔機能修復学講座助教授、歯科衛生士専門学校非常勤講師などに携わってきました。大学退職後の1年間は勤務医としてつとめ、3年前の4月に開業しました。
大学在籍中に培った歯周病治療からインプラント治療、咬合・矯正治療、予防管理までの包括的な総合診療、MIに基づいた審美治療が私のモットーです。痛みやストレスを抱えて来院されたすべての患者さんに笑顔で帰っていただけるように、安全かつ誠実な診療を心がけています。
最近では患者さんのニーズも実に多様化し、治療に求められる充足度も高くなったと感じる時があります。とくに、銀歯を自然な色に変えたい、変色歯を白くしたい、歯並びや噛み合わせを治したい、治療費も時間もかけたくないなどの切実な声をよく耳にするようになりました。
そのようなニーズに対処できるCAD/CAMシステムの実用性には大学院に在籍していた時から注目していました。ただ、昨年9月にセレックシステムの導入に踏み切ったのは、モリタの講習会で北道敏行先生に多くの症例を供覧していただき、私自身もデモンストレーションを通して、その有用性や将来性を確信できたからです。
今回の症例でも明らかなように、セレックACオムニカムのもつ有用性は目を見張るものがあります。「メタルフリー・通院1日・1時間のオールセラミック治療」という患者さんに与えるインパクトや説得力の大きさもさることながら、私たち臨床家のチャレンジ精神を刺激してくれる強いインセンティブも大きいと感じています。これは、適合性の高さこそが、CAD/CAMシステムとしての高品質と強みを物語る何よりの証明ではないでしょうか。
早く治療を終えたい、天然歯に近い美しい色調に変えたい、金属アレルギー体質でも不安がない、長持ちさせたい、しかし、治療費はリーズナブルに抑えたい。このような省時間から安全性・耐摩耗性・耐久性・審美性・経済性までの広範な要求をすべて充足できるのが、CAD/CAMシステムのシンプルさ、スマートさ、分かりやすさだと思います。
一方、臨床家にとっては、生体親和性の高いセラミックによる良好な適合精度や、15年後の残存率約93%という永続性、フルカラー高解像度の3D連続画像の当然の帰結として、患者さんに奨めやすく、インフォームド・コンセントがムリなく進められますので、患者さんの満足感と信頼感を自然と得ることができます。また、パウダリングスプレーも必要なく、コンタクトやマージンの微調整もまず不要ですから、時間的・精神的なストレスからも解放され、治療に専念できるのもメリットでしょう。緊急処置が生じた場合でも、あらゆる症例に対応できるソフトウェアの柔軟性があるのも、CAD/CAMシステムならではの安心です。
このようなセレックACオムニカムのシステム力を最大限に発揮するために、4名のセレック専任チームを作り、治療の予知性やエビデンスの蓄積に努めています。長期的に見れば、セレックによる良質なデザインがクリニックのブランディングにもつながるでしょう。
3月にオペ室と研修室を2階に増設しましたが、キャリアとスキルを備えたテクニシャンの採用も予定しているところです。今後は、インレー、クラウンだけでなく、ジルコニア・カスタムアバットメントの製作も視野に入るだろうと考えています。オールセラミック治療の未来は実に洋々としていますね。
図1 右側下顎臼歯部(第二小臼歯・第一大臼歯)の審美障害で当院を受診。
図2 セレック形成用 ダイヤバー(MANI社製)。窩底と窩壁との線角が尖らないようなバー形態を呈する。(左から、CE12F、EF/CE15E、EF/CE16F、EF/CE13F、EF)
図3 形成後の窩洞外形。鳩尾形を与えることなく、なだらかな窩洞外形に努める。
図4 従来の肉眼で行うshade taking(VITA社)は当然のことながら補助的に測色器(松風社)を使用する。
図5 オムニカムでスキャン後にマージンラインを設定。窩洞形成の良否により、その難易度が左右される。
図6 マージンラインの設定後、修復物の提案が自動に行われる。その後、コンタクトやカウンターの微調整を行う。
図7 当医院で使用しているビタブロック(VITA社)。前歯部にはgradationブロック(TriLuxe)を使用することが多い。
図8 ビタキャドレジン(VITA社)。当医院では三歯(40mm以内)のブリッジ症例で長期にわたり使用する場合のプロビジョナルとして使用する。
図9 セレックでセラミックスブロックを削り出した後、スプルー部を除去し、研磨を行う。
図10 セレック時に使用する接着性レジン系セメント。クリアフィルエステティックセメント(クラレノリタケデンタル)。
図11 セレック装着後の咬合面観。セレックインレーと歯質との調和は十分得られている。
図12 セレック装着後の頰面観。審美的に患者の満足が得られ、反対側もセレックにて修復することとなった。
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