149号 SUMMER 目次を見る
「スタッフの幸せなくして患者さんの幸せはのぞめない」。平成7年の開業の時から私が常に肝に銘じている言葉です。針刺し事故や手洗いによる洗浄時の事故など、スタッフは日々の業務においてどこで事故を起こすかわかりません。消毒に関してもステリハイドを大量に使うなど、これまでかなりコストをかけてきました。近年、院内感染対策が盛んに言われるようになり、柏井伸子先生の著書を読んでステリハイドによる殺菌だけでは不十分であることに気づいたことと、スタッフを事故から守るという面から自動洗浄器も必要なことがわかってきました。
そこで昨年11月、同じ亀岡市内に診療所を移転すると同時に、院内感染予防対策を強化するため、ウォッシャーディスインフェクター「WD-150」とプレポストバキューム式オートクレーブ「BC-17」を導入しました。
決めた理由はいろいろありますが、国産品への信頼という部分が大きいですね。万が一故障した時にも、対応がスピーディで診療にかかる負担も少なくてすみますし、取り扱いの際にもタッチパネルが日本語で表示されるので誰にでも使いやすいということも判断基準の1つでした。
設置については、モリタの営業マンと設計の段階から何度も打ち合わせして、どうしたら効率よくシステマティックに汚染物を洗浄、滅菌、保管できるかを徹底的に考えました。そのおかげで満足いく洗浄・滅菌エリアに仕上がっています。導入して良かった点は何よりスタッフが洗浄の際にケガをしないことです。このメリットは非常に大きいと感じています。当初、手洗いの方が早いこともあって、スタッフは器材を導入することでプロセスが煩雑になることを嫌がっていましたが、院長としては、やはり身体を守ってあげたいと訴えて納得してもらいました。
導入を決めてからは、スタッフとともに柏井伸子先生のセミナーを受講し、世界のスタンダードについて知識を得ることができましたし、器材を使っていかに効率的な感染予防システムを構築するかについて院内で何度も話し合いました。実際の運用に関しては主任スタッフをこのプロジェクトのチーフに任命し、チーフを中心にスタッフ全員が何事も納得したうえで進めています。器械の導入の時こそ私も打ち合わせに参加しましたが、あとは全てチーフに任せています。いずみ歯科では何事も「報告しあう」文化ですので、スタッフの失敗などはすべてチーフに報告が集まります。「隠す」文化になると後で取り返しのつかない事態につながる可能性もありますから、医院内を風通し良くしておくことは大事なことだと考えています。
システムが稼働して半年ほど経過しましたが、滅菌に関しては、「BC-17」導入前からオートクレーブ滅菌を頻繁に行っていましたので、実は目に見える変化は感じません。ただ、特にハンドピースなど複雑な形状の製品の場合、以前は中まできちんと洗浄・滅菌ができているかとても疑問でしたが、それが解消されたことは特筆すべきことでしょう。これからは国内においてもヨーロッパの厳しい規格に準拠したオートクレーブが主流になっていくだろうと感じています。
今回の感染予防設備について、患者さんへのPRは特にしていません。確かにアピールすれば患者さんへの受けは良いのかもしれませんが、患者さんが知っていようがいまいが、やらないといけないことですから。でもこれだけ徹底して対策しているといえば、増患の大きな要素にはなるでしょうね。
Appleの創業者スティーブ・ジョブズはコンピュータの見えない部分までこだわって美しくつくるという信念で超一流の製品を生み出しました。私たちも患者さんに見えるところだけを気にするのではなく、見えない部分にもコストをかけ誠意をもって取り組めば、患者さんに自信を持って堂々と言えるでしょう。そうすれば自分の中にあるものが変わってくる。「見えないところで自分がどれだけやっているか」という心の中の重しとでも言えばいいでしょうか。そうした心構えは医療現場において、今後ますます必要になってくると強く感じています。
図1 最奥から廃棄物の分別・洗浄・メンテナンス・滅菌・保管へとシステマティックに配置された洗浄・滅菌エリア。
図2 ウォッシャーディスインフェクター「WD-150」の操作パネル。多彩なモード設定が可能。
図4 洗浄するインスツルメントをセット。ハンドピースは専用のアダプターに収納し、内部まで洗浄する。
空いた時間を患者さんとのコミュニケーションに活用
村田 美由紀
図5 パネルを確認しながら洗浄から乾燥までボタン1つで操作。
図3 プレポストバキューム式オートクレーブ「BC-17」の操作パネル。器具に合わせて滅菌モードを選択。
図6 プレポストバキューム式のオートクレーブは複雑な形状の器材でも十分な滅菌が可能。
目 次
モリタ友の会会員限定記事
- Trend 歯冠用硬質レジン「セシードN」について
- Trend 新規セルフアドヒーシブセメント「SA セメント プラス オートミックス」について
- Clinical Report ソルフィーFを用いた歯内療法
- 私の臨床 CBCTにより根管治療の予知性と確実性を高める
- 私の臨床 インフォームド・コンセントがスムーズ3D画像の高い説得力とインパクトが1時間完結のオールセラミック治療を実現
- 私の臨床 MI治療をアシストする隣接面の形態修正に有用なメタルストリップス
- 私の臨床 患者さんの予防意識が変わるリコール100%を目指すための光学式う蝕検出装置
- Risk Management さらに安全性が求められる時代に向けて感染管理を“見える化”することで患者さんへアピール
- Risk Management 予期せぬ事故からスタッフを守りながらさまざまな形状の汚染物を効率よく洗浄・消毒・滅菌
- SPI日本発売10周年 SPIシステム日本発売10周年を記念して
他の記事を探す
モリタ友の会
セミナー情報
会員登録した方のみ、
限定コンテンツ・サービスが無料で利用可能
オンラインカタログでの製品の価格チェックやすべての記事の閲覧、臨床や経営に役立つメールマガジンを受け取ることができます。
商品のモニター参加や、新製品・優良品のご提供、セミナー優待割引のある、もっとお得な有料会員サービスもあります。