175号 WINTER 目次を見る
キーワード:超精密で微細な穿通孔を配置/小規模な1壁性骨欠損
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はじめに
Tiハニカムメンブレンは、超精密で微細な穿通孔を配置しており、それが血清タンパクやミネラルを通すと同時に軟組織の侵入を阻止することで、効率の良い骨再生が可能である。
今回、小規模な1壁性骨欠損に対してTiハニカムメンブレンを使用しGBRを行った症例を供覧する。
症例
患者は、42歳女性で E の動揺を主訴に来院した。パノラマX線写真(図1)にて、E根尖性歯周炎と診断し、動揺度3と排膿を認めたため抜歯適応と判断した。患者が5部にインプラントを希望した。
まずEの抜歯を行い抜歯窩の粘膜治癒を待った。2ヵ月後にCBCT撮影(図2)を行ったところ、頰側では4遠心部において歯頸部付近に歯槽骨が残存しており、6にかけて緩徐に吸収していた。舌側では4遠心部で特に垂直的骨吸収が著しく、6近心部にかけて水平的にも著しい骨吸収を認めた。加えて抜歯窩中央部では、頰側の最頂部から4~5mmの骨吸収を呈していた。
理想的な埋入ポジションにインプラント体(直径4.1 mm、長さ10 mm)をシミュレーションしたところ(図3)、舌側で垂直的に4mm程度インプラント体が露出することがわかった。
GBRでは、隣在歯の近遠心部に歯槽骨が残存しているか否かが難易度に影響する。つまり、残存していればメンブレンを設置しやすくスペースメイキングできるためGBRは容易であるが、残存していなければ露出した歯根に対してGBRをすることになり困難である。
本症例では、舌側の4遠心部で特に垂直的骨吸収が著しく歯根が露出しており、GBR同時埋入では骨増生術が不十分になる可能性があった。そこで、治療期間の延長を勘案しても確実性を重視して段階法を選択した。
抜歯後3ヵ月で、Tiハニカムメンブレンを用いたGBRを行った。術後感染のリスクを軽減する目的で、メンブレン設定位置から十分な距離を確保して切開線を設定することが重要である。
局麻下に4近心隅角部と6遠心隅角部に縦切開、5部の歯槽頂切開を加え、粘膜骨膜弁を形成した。筆者は十分な止血を確認するために、粘膜骨膜弁を形成した直後に減張切開を行っている。歯肉頰移行部より5mm下方を目安に、15cメスを用いて骨膜に切開を加え粘膜骨膜弁が十分に伸展することを確認した。
次に、骨鋭匙にて骨面を掻爬し軟組織を除去した後、出血を促すためデコルチケーションを行った。筆者はBio-Oss:自家骨=5:5を目安に骨補填材を調整する。ボーンスクレイパーにて67部頰側皮質骨より自家骨を採取し、Bio-Ossと混和し骨欠損部に充填した。
次に、予め賦形したフレーム付きのTiハニカムメンブレンを設置した(図4)。固定方法として、スクリューや縫合糸の使用が考えられるが、今回、中間欠損でありメンブレンは安定しやすく、賦形性が優れたTiハニカムメンブレンを使用することから、ホールディングスーチャーを選択した。
舌側角化粘膜と、減張切開下方の頰側骨膜との水平マットレス縫合を行った。その際には、縫合の圧力による増生部位の形崩れを防止するため、縫合前に骨補填材をさらに緊密に充填することが重要である。最後に、単純縫合にて一次閉鎖した(図5、6)。
術後6ヵ月でCBCTにて確認したところ(図7)、メンブレン下に骨様硬化像を確認できたため、メンブレン除去とインプラント埋入を行った。
局麻下に、隣在歯の歯肉溝切開と5部に歯槽頂切開を行った。Tiハニカムメンブレンと軟組織が瘢痕により癒着することなく、粘膜骨膜弁の剥離とメンブレンの撤去をストレスなく行うことができた(図8、9)。メンブレン直下には軟組織の侵入もなく、CBCTの所見通り十分な新生骨を認めたため(図9)、通法通りインプラントを埋入し初期固定は十分であった(図10)。
埋入後3ヵ月で、2次手術と同時に角化歯肉を獲得するために APFを行い(図11)、最終補綴として、スクリュー固定によるフルジルコニアクラウンを装着した(図12)。
装着後1年程度経過しているが、問題もなく経過良好である。
図1 初診時のパノラマX線写真。Eの根尖性歯周炎により水平的および垂直的な骨吸収像を認めた。-
図2 抜歯後2ヵ月のCBCT画像。5部頰側は歯槽骨が残存し、舌側に水平的かつ垂直的骨吸収を認めた。CBCTは「AUGE SOLIO<朝日レントゲン工業(株)>」を使用。 -
図3 インプラントシミュレーションしたCBCT画像。舌側で垂直的に4mm程度露出することがわかった。 -
図4 予め賦形したTiハニカムメンブレンを設置した。メンブレン断端と隣在歯とは1mmの距離を確保した。
図5 術直後のデンタルX線写真。増生部位は形崩れすることなくフレームのアーチを確認できる。-
図6 水平マットレス縫合と単純縫合を用いてテンションフリーの状態で一次閉鎖した。 -
図7 GBR後6ヵ月のCBCT画像。舌側にも十分な骨様硬化像を認めた。 -
図8 粘膜骨膜弁の剥離は容易に行えた。
図9 メンブレンの除去もストレスなく容易に行える。舌側に十分な新生骨が獲得できた。-
図10 埋入直後のパノラマX線写真。インプラント(直径4.1mm、長さ10mm)を埋入し、十分な初期固定を得た。 -
図11 埋入後3ヵ月で2次手術と角化歯肉獲得のためAPFを行った。 -
図12 最終補綴として、スクリュー固定のフルジルコニアクラウンを装着した。
考察
GBRでは吸収性メンブレンを使用することが多いが、今回のように小規模ではあるが部分的に著しい垂直的骨欠損を有する症例では、ある程度強度のあるメンブレンが必要となる。
Tiハニカムメンブレンは、賦形性に優れ、微細な穿通孔を有しており、チタンメッシュと吸収性メンブレンのメリットを兼ね備えた有用な材料と考える。
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