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Field Report

あるべき下顎の位置を導き出し理想的な咬合を実現するために欠かせない「K7エバリュエーションシステムEX Black」

熊本県熊本市南区 ふなつデンタルクリニック 院長 舩津 雅彦

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  • [写真] 熊本県熊本市南区 ふなつデンタルクリニック 院長 舩津 雅彦
    熊本県熊本市南区
    ふなつデンタルクリニック
    院長 舩津 雅彦

当院は一般の歯科医院ですが、咬み合わせや歯並び、顎の痛みなどに悩む患者さんが数多く来院します。私が考える咬合に関する治療計画の源泉は「形態が機能をあらわし、機能することで形態が規定される」という故河村洋二郎先生の言葉に集約されています。歯は本来あるべき位置に並ぶのが当然ですが、何らかの原因により叢生や上顎・下顎前突、顎の痛みなどが現象としてあらわれます。それを改善するためには、まずその原因を突きとめることがもっとも重要であり、すべてのスタートはそこから始まります。その際注意すべき点は、生体の形態と機能が正常かどうかの基準を何に求めるかによって、治療のゴールの価値は大きく変わってしまうということです。
正しい咬合とは、既存の歯牙による咬頭嵌合位、顎関節やその周囲組織の形と位置、筋肉の状態などの情報だけでは決して決められるものではありません。歯科医師は口腔領域からアプローチすることで、咬合高径、咬合平面の傾斜、上顎歯列弓の形態などをより好ましい方向にむけることができますが、その基準設定に誤りがあれば、結果がずれてしまい、意図したゴールに到達できなくなります。そうしたエラーを回避するため、私は以前から歯科用下顎運動測定器「K7 エバリュエーションシステムEX Black」(以下「K7」)を用いて、「咬み合わせ」という目に見えないデータを可視化することで、正常な顎の位置(生理学的下顎位)を導き出し、その後の治療に活かしています。私にとって「K7」の存在は基準を見失わずに臨床を行うための道しるべであり、もはやなくてはならないツールの一つとなっています。

  • [写真] 清拭後に下顎頭付近に電極を貼る
    図1 清拭後に下顎頭付近に電極を貼る。「マイオモニターJ5」を使用する際にこの部分にコードを繋ぎ電流を流す。この位置がずれると効果が減少するので注意が必要。
  • [写真] 側頭筋に電極を貼る
    図2 側頭筋に電極を貼る。カチカチ咬んでもらうと動く場所なので位置は判別しやすい。
  • [写真] 咬むと筋肉が盛り上がる部分が咬筋で、その位置から下顎角方向に向けて電極を貼る
    図3 咬むと筋肉が盛り上がる部分が咬筋で、その位置から下顎角方向に向けて電極を貼る。
  • [写真] 下顎前歯にマグネットを貼る
    図4 下顎前歯にマグネットを貼る。その際に上顎前歯に干渉しない位置に貼る必要がある。矯正治療のワイヤーを装着している場合は、そのワイヤーの下側に貼る。
  • [写真] 計測の際は必ず下顎前歯のマグネットが上顎前歯に触れないことを確認する
    図5 計測の際は必ず下顎前歯のマグネットが上顎前歯に触れないことを確認する。触れていると咬むたびにマグネットが動き、正確なデータが計測できないので注意する。
  • [図] 「K7」による診断結果
    図6 「K7」による診断。Scan2では開閉口時に右側に向かって開き左に向かって閉口することが表され、そのスピードは不規則で顎運動が不安定であることを示していた。
[写真] ふなつデンタルクリニックのスタッフの皆様

「K7」との出会いは、私の大学の先輩でもある池田正人先生が講師をつとめるセミナーの案内に掲載されていた「生理的な顎位を求めることによって新たな道が拓ける」という言葉に共感し、セミナーに参加したことがきっかけです。その後、2003年の導入以来、20年以上にわたって実績を積んできました。導入前の勉強会には当院の歯科衛生士にも同行してもらって、電極の貼り方など一緒に学んでもらいました。より正確なデータを採取するため、当院ではまず歯科衛生士がデータを計測し、その後私が再度計測します。時間はかかりますが、別の人間が再度計測することでデータの正確性が担保できると考え実践しています。今では歯科衛生士と私が採取するデータにそれほどの違いは見られなくなりました。
計測は矯正治療前と治療後、さらにメインテナンス時に後戻りの有無を確認するために行います。所要時間は「K7」による計測が準備を含め約1時間、途中で蓄積した筋の緊張をとるために低周波治療器「マイオモニターJ5」による施術を約45分行うので、計2時間ほどかかります。そうして時間をかけて採取したデータは、私が正しいと考える咬合形態に間違いがないかを検証するためだけでなく、患者説明の際に客観的な根拠として提示できることも大きなメリットです。人の咬合関係は発育の過程で変化し、顎骨の大きさや形、歯の大きさや形にも個人差があり、一つとして同じものはありません。「K7」を用いて生理学的下顎位を求めることで、姿勢・顔貌・頭蓋骨・頸椎・下顎位が相関し変化していく過程を目にするケースにこれまで数多く出会ってきました。こうして「K7」の必要性を実感して以来、少しでも多くの先生方に「K7」の正しい計測方法や咬み合わせに関する考え方を共有する目的で「ふなつ会」という勉強会を地元熊本と東京で開催しています。歯科医師が口腔生理学をつかさどる医療人として口腔機能を熟知し、それを妨げる要因を取り除くことで患者さんはより健康になります。これは私たち歯科医療従事者にしかできないことと自覚し、これからも信頼するスタッフたちとともに、その責務を果たしていきたいと考えています。

  • [写真] 初診:2013年2月 18歳 女性
    図7 初診:2013年2月 18歳 女性。主訴:留学前に歯並びを治したい。顔貌から頭部と体軸のズレが大きいことが伺える。下口唇に突出感が見られ、低位のⅢ級咬合の顔貌を呈する。
  • [写真] 正面観
    図8 正面観。前歯歯列が反対咬合になっており、咬合平面は正面からのズレは見られない。左右臼歯部では歯軸の内向きの傾斜が強く窮屈な咬合を呈している。
  • [図] Scan5での診断結果
    図9 Scan5では既存の下顎位とニューロマスキュラー的な理想的な下顎位の診断ができる。
  • [写真] 下顎の前後的な位置を変えずに咬合高径を挙上
    図10 下顎の前後的な位置を変えずに咬合高径を挙上。さらに上顎歯列弓の形態を改善し上下顎の被蓋関係を適切にするために、生理学的な下顎位を想定したオーソシスを使用した。
  • [写真] 矯正治療開始から4ヵ月が経過した状態
    図11 2013年7月。矯正治療開始から4ヵ月が経過した状態。
  • [写真] 矯正治療後
    図12 矯正治療後。「よく噛めるし、よく笑うようになった」(父親の話)。機能を損なうことなく前歯の被蓋が改善できた。不定愁訴も殆どなくなったとのこと。

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