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Technical Report
セラビアン®ZRにおけるオパシティコントロールの1提案
キーワード: PFZでの補綴製作/オパシティコントロール/陶材築盛の考え方
目 次
- ≫ はじめに
- ≫ 1. オパシティコントロールとは
- ≫ 2. 私なりの陶材築盛の考え方
- ≫ 3. 下地処理
- ≫ 4. 若年代と老年代の臨床症例
- ≫ 終わりに
はじめに
現在、前歯部審美領域の補綴治療においては、オールセラミックスが主流である。
近年ではジルコニアディスクの強度面、透過率、品質向上でモノリシックジルコニアでのステイン法の需要が高まっている。
筆者の臨床上においても、正中をまたがる複数補綴の症例であれば、モノリシックジルコニアでのステイン法にて対応することも多々あるが、前歯部領域での少数歯補綴に関しては、従来のPFZ(Porcelain Fused Zirconia)での補綴製作が多く、ドクターからの信頼性も高く、患者満足度も高く感じる。
今回、ご提示する臨床例で使用しているクラレノリタケデンタル株式会社のPFZ用陶材であるセラビアンZRは、優れた耐チッピングおよび耐クラック性能を有しているとともに、様々な天然歯の色調を再現可能な充実した色調展開がなされていることから(図1)筆者は日常臨床において安心して使用できている。
本稿では、セラビアンZRを使用した前歯部補綴装置における、私なりの陶材築盛の考え方と、何よりも大切だと考える明度に大きく関係するオパシティのコントロールについてお伝えしたい。
図1 セラビアンZRの色調展開(セラビアンZR取扱説明書より引用)
1. オパシティコントロールとは
まずはじめに、オパシティとは和訳すると、不透明度となっている。よってオパシティコントロールとは、不透明度をコントロールすることをいう。
図2は同じ絵をグラスの後ろに貼り、左から水、スポーツドリンク、牛乳、を入れたものである。
透明感の強い水はオパシティが低いと表現でき、不透明な牛乳はオパシティが高いと表現できる。図3は天然歯をスライスカットした写真になるが、象牙質はオパシティが高く、エナメル質はオパシティが低い。
補綴装置とは2次元ではなく、3次元で製作していくため、色調再現を行うにあたり、明度・彩度・色相プラス、3次元的にこのオパシティを考慮していく必要があると考える。
図2
図3
図4
2. 私なりの陶材築盛の考え方
筆者が日常臨床を行うにあたって考慮している点は図7~11に示している。
ここで1つ、症例1を通して解説していく。まず、シェード写真(図5)を分析し、目標シェードをA3.5と設定する。ファーストベイクまではオパシティに注意し、目標シェードよりも1~1.5ランク明度を高く保つように陶材を選択している(図7)。
その理由としては、インターナルステインを使用するとWhite以外のステイン材は明度が下がる傾向にあるからである(図12、13)。
そしてオパシティを考慮しながら下地処理をしていく(図8)。症例1の場合であれば、A2のジルコニアフレームを選択し、A2のシェードベースステイン、A2.5のオペーシャスデンチンとデンチンを配合し、一度焼成している。この段階までで、オパシティに対しては完結しておく必要があると筆者は考えている。
その後、通法通りカットバック量に注意し、デンチン・エナメル・透明層の再現にトランスを築盛し焼成している(図9)。症例1ではA2.5のデンチンにE2とE3を配合したエナメル、隅角部の透明層にはAB1+AB2+TXを1:1:2の割合で配合した陶材を使用している。そして、トランスルーセントの築盛スペースが確実に確保されていることを確認し、インターナルステインを行っていく(図10)。
インターナルステインでは図7で示したように、極力目標歯に近づけるよう、1回目に明度と彩度をコントロールし、2回目、3回目でキャラクターなどの付与を行っている。
最後にトランスルーセントにて表層のキャラクターを分析し、強く出すぎないよう、補色的に陶材を選択、配合し焼成している。症例1では、全体的にはLT1を使用し、遠心隆線にLT1+E1を3:1、切縁中央付近にLT1+SBを2:1で使用し、図6のような結果を得ることができた。
筆者の日常臨床ではほぼ毎回このようなことを考え、陶材築盛を行っているのだが、この中でも特に重要に考えているのが、オパシティを考慮する下地処理のところである。
図5 症例1 シェードテイク
図6 症例1 セット
図7
図8 下地処理
図9 ファーストベイク
図10 インターナルステイン
図11 セカンドベイク
図12 インターナルステインの明度
図13 インターナルステインの前後
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