192号 SPRING 目次を見る
Technical Report
エステティック カララント®の臨床応用
キーワード:ジルコニアオールセラミックス/オリジナリティのある色調表現
目 次
- ≫ はじめに
- ≫ 1. エステティック カララント® の商品構成
- ≫ 2. 色調の変化
- ≫ 3. WHITEとOPAQUEの使用方法
- ≫ 4. エステティック カララント® を応用した臨床例
- ≫ おわりに
はじめに
もはや一般の方々が呼称するキーワードとなった「オールセラミックス」、歯科業界でのジルコニアはその進化がめざましく、各社から多種多様な製品が提供されている。
歯頸部領域から切端領域にかけてシームレスに色調が変化するマルチレイヤータイプの特徴はそのままに、さらに強度的に優位性を与えた3Y-5Y複合タイプなど補綴装置の素材としての条件を具備するものになっている。加えて、最近の口腔内スキャナーの普及とともに模型レスの概念も徐々に広まり、モノリシックタイプのジルコニアオールセラミックスの選択が急激に増えている。
これまで、マルチレイヤータイプのフルカウンタージルコニア(以下FCZ)では、研磨仕上げかステインやグレーズ材を表面に塗布焼成して仕上げる方法が一般的であった。もちろん、これらの仕上げ方法で色調的に問題のない術後例も多い。ただ残念ながら、臼歯部や下顎切歯で咬合に関与するような部分では口腔内調整によりステインやグレーズ材が消失してしまうことも経験した。また、前歯部審美領域でも透明感や個性的な色調を再現する場合には画一的なマルチレイヤータイプの使用だけではもの足りない場合もあった。
このたびクラレノリタケデンタル株式会社より発売された「エステティック カララント」は、ジルコニアシンタリング前の半焼結状態のFCZやPFZの表面やポーセレン焼き付け面、または内面に浸透させて色調再現を補う目的で使用し、既存のステイン材と組み合わせることでより高い審美性を探求できる。
1. エステティック カララント® の商品構成
図1に示すように、カラーリキッ ドは全12色の構成となる。各シェー ドのクロマアップを担う A plus、B plus、C Plus、D plus、また切端部 の透明感を強調するGRAY、BLUE、 VIOLET、が基調色を調整するものと なる。BROWN、ORANGE、PINK、 WHITEについては特殊色、OPAQUE やWHITEはクラウンやラミネートベ ニアの内面に使用することで支台歯の 影響を軽減したり、不透明度の調整に 用いる。
補足すると、各シェードのクロマ アップカラーリキッドについては、例 えば同一ディスクから犬歯を含む連結 されたFCZを切削加工する場合には 画一的な色調になるため、天然歯列 特有の彩度が高い犬歯を再現する際 にあらかじめ浸透しておくことも考 えられる。切端部の透明感を強調す るために用意されたカラーはFCZに 非常に有効であるし、近年のPFZ用 ジルコニアコーピングに多くみられ るマイクロレイヤー法を応用する場 合にも透明感の再現の一助になる。 BROWN、ORANGE、PINK、などの 特殊色はとくに塗布箇所を選ばない。 BROWNは臼歯咬合面の深い溝付近 あるいは前歯でも色に深みを与えたい とき、ORANGEは咬耗した切端付近 や歯根が露出した部分また舌面窩な ど、PINKはシェードに赤みを加味し たいとき、また臼歯咬合面に深みを与 えたいときなどに使用する。
いずれにせよ、使用方法は術者次第 であり、自身に応じた、あるいは症例 に応じて使い分けたい。ただし、クラ レノリタケデンタルによれば次に示す 注意点が喚起されている。
① 塗布用の筆には金属を使用してい ないもの、または別売のリキッド用筆 ペン(図2)を使用する
② カラーリキッドは混合せず、重ね 塗りとする
③ 重ね塗りは、シンタリング後の色 調調整に支障のない3回までを目安と する
④ カラーリキッドは水で希釈しない
⑤ いわゆるディッピング法は推奨し ない
⑥ 塗布後の乾燥はセラミックトレー 上にて80℃~200℃で30分以上おこ なう
本品は、同社のジルコニア商品群 HT、HTML/Plus、UTML、STML、 YML用に開発され色調調整されたも ので、とくにML系については元々の 色調にメリハリを付与する類のもので ることを念頭におき、細かなキャラク タライズはFCペーストステインなど 既存のステイン材で表現する。
図1 エステティック カララントのカラーリキッドは全12色の構成
図2 リキッド用の筆ペン(左)と金属治具を使用していない筆(右)
2. 色調の変化
エステティック カララントA plus(デンチン色相当)を3回の塗布でおおよそ1シェード程度(例:A2→A3)彩度 を向上させることが可能とされている。
図3はカタナディスクHT10/NWを歯冠形態にミリング加工したものにAplusを重ね塗りして色調の変化をみたところである。1回の浸透をおこないシンタリングしたものと3回の浸透をおこないシンタリングしたものとでは彩度に大きな変化が認められる。
図4は、カタナディスクSTML/NWから厚さ1.0mmに薄片加工したもので、左側は1回浸透、中は2回浸透、右側は3回浸透の状態である。2回目と3回目の塗布はすぐにおこなった。
図5は、図4のシンタリング後のものを透過光でみたものである。塗り重ねにより色は濃くなるが肉眼的には透過性はさほど変化していない。また表面を研磨したものはその浸透度合いが弱く、3回の塗布では所望する色調が得にくいことがわかる。
図3 クラウン形態にA plusを重ね塗りして色調の変化をみたところ
図4 カタナディスクSTML/NWから厚さ1.0mmに薄片加工したものに筆で浸透させたもの。左は1回浸透、中は2回浸透、右は3回浸透の状態。
図5 図4のシンタリング後のものを透過光でみたもの。左端は1回浸透、中は2回浸透、その右側は3回浸透、右端は表面研磨後3回重ね塗りをしたもの。
3. WHITEとOPAQUEの使用方法
表1に示すように、WHITEは仮焼体内面への塗布により支台歯色のマスキングと同時に明度を向上する。
仮焼体表面への塗布も可能ではあるが「白」味が強いため使用に注意を要する。
OPAQUEは仮焼体内面への塗布により支台歯色をマスキングするものである。こちらは、彩度のある淡い黄色系の色調を呈しているため明度に大きな変化はないとしている。
表1 WHITEとOPAQUEの使い方
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