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マイクロスコープを活かす診療システムとしてpd診療の優位性を日本顕微鏡歯科学会でアピール

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学新潟生命歯学部(新潟市中央区)において、日本顕微鏡歯科学会 第9回学術大会(五十嵐 勝大会長、辻本恭久会長)が開催された。近年の歯科顕微鏡の普及に伴って会員数も倍増、会場はこれからの歯科診療におけるトレンドをつかもうと熱心な参加者で常に熱気に包まれ、その期待を裏切らない見応えのある発表が続いた。本大会では『初心者からエキスパートへの道』をメインテーマに、1日目は辻本恭久会長による基調講演をはじめ特別講演やシンポジウムを開催、2日目は一般口演やテーブルクリニック、ランチョンセミナー等を交えた多彩な内容で充実した大会となった。またスクエア会場では関連各社による商品展示も行われ、最新機器を目にしようと大勢の参加者で賑わった。

  • 商品展示が行われたスクエア会場
    商品展示が行われたスクエア会場
  • メイン会場となった講堂。前回の東京開催に引き続き盛況となった。
    メイン会場となった講堂。前回の東京開催に引き続き盛況となった。

歯科顕微鏡をストレスなく使いこなすためには、システマティックなアシスタントワークとミラーテクニックの確立が必要と考えられている。これらを確立する上で、Dr.Beachの提唱する「pd診療」(proprioceptive derivation/固有感覚に基づく誘導)が理にかない効果的な診療システムであることが近年評価されている。このような観点から、シンポジウム2日目では、『歯科顕微鏡をストレスなく使いこなすための条件』をテーマに、第1部として谷口敏雄先生<(米)NPO法人GEPEC>が「長時間治療を行うための歯科医師とアシスタントの診療ポジション」、第2部では麻生昌秀先生<(米)NPO法人GEPEC、ユニゾンデンタルオフィス院長>が「正確な治療を行うためのミラーテクニックと4ハンドシステム」と題した講演を行った。さらに同日行われた口演発表では磯崎裕騎先生<(米)NPO法人GEPEC、いそざき歯科院長>が「マイクロスコープ治療におけるシステマティックなミラー使用」をテーマに口演された。

谷口 敏雄 先生谷口 敏雄 先生
谷口先生は、歯科用マイクロスコープを使い始めたが、本来の思惑通りにはいかず新たなストレスを感じている歯科医師も少なくない理由として、「器械」を優先し、その機能を追うことに専念するため、術者が“器械に使われている”ことになっているのではないかと指摘された。そして、本来は診療のためのポジショニングやナチュラルな動きをすることが重要であり、歯科用マイクロスコープを有効に使うために必要な条件として以下の2項目を挙げ、術者が作業に集中し、長期に安定した診療を行うため理想的な診療ポジションについて提案された。

  1. 1)安定した術者の診療ポジションとそれに伴う身体各部の自然な動き
    人間の持ち合わせている固有感覚受容を自覚し、そこから導き出される自然な動きの範囲を自覚すること(proprioceptive derivation=pd)
  2. 2)受診者の安定したポジション

講演の中で谷口先生は、より精密さが要求される歯科医療において、これまで不自然でアンバランスな姿勢で診療が行われてきた結果、術者の手首や腰など関節に負担がかかり、精密な作業の持続に悪影響を及ぼしてきたと指摘。今後マイクロスコープを使う上で術者がストレスなく作業に集中し、常に成功に導くためには、まず術者とアシスタントがもっとも安定したポジションを取ることが最重要で、その後患者の適切な咬合平面の位置を設定、最後にマイクロスコープをはじめ診療ユニットの適切な位置への配置が重要と述べられた。
そして、術者としての生理的な安定さや、集中力、快適さを第一に追求し、診療中のストレスを軽減するpd診療は、マイクロスコープを使った精密歯科診療を行う上でも極めて有効な診療スタイルであると締めくくられた。

麻生 昌秀 先生麻生 昌秀 先生
麻生先生は、第1部の谷口先生の内容をうけ、ストレスなくマイクロスコープ診療を行うために必要なミラーテクニック、ハンドピースコントロールや診療環境等、以下の3項目について考察された。

  1. 1)デンタルミラーの有効な使用
    安定した診療姿勢における直視と鏡視のエクササイズ
  2. 2)診療補助者とのスムーズなコンビネーション
    術者と補助者による4ハンドによる診療システム
  3. 3)望ましい診療姿勢に矛盾のない診療環境
    インスツルメントの場所と位置が術者の自然な動きに及ぼす影響

講演の中で麻生先生は、マイクロスコープの使用を困難にしている要因の1つとして、ミラービュー診療によって発生するストレスやタイムロスを挙げ、pd診療によって安定したポジションを保ちミラーで確認しながらエアータービンを動かすことで、正確で効率的な治療を行うことができると述べられた。さらにミラービューの場合、手の動きが逆になるといった問題点や、ミラー表面に水がかかることによる視界の妨げを解消するための有効なミラーテクニックを紹介された。また、マイクロスコープのフォーカスを合わせ直す手間をなくすためにできるだけ視線を外さないことが重要であり、それを行う上でpd診療によって定義づけられたバキュームテクニック、ミラーテクニック、正しいレスト、ハンドピースコントロール、器材・材料の準備、トレー・道具の配置、フットペダルの一本化などが非常に効果的であると結論づけられた。

磯崎 裕騎 先生磯崎 裕騎 先生
また磯崎先生は一般口演において、マイクロスコープを導入したものの使いこなせていない歯科医師が多く見られる理由として、これまで診療姿勢を犠牲にしたポジションをとっていたため、正確な平衡感覚が失われ、指先の感覚も鈍り精密作業が困難になった結果、マイクロスコープが使用されなくなっていったと指摘。今後、マイクロスコープを有効に使うためにはpd診療による安定した術者の姿勢と患者の安定したポジション、そしてミラーの有効活用、アシスタントとのスムーズな連携、人間工学的な診療環境、これら5つの条件を整えることであらゆる診療に応用できるようになると述べられた。
今後さらに普及が期待される歯科用マイクロスコープ。今回の学術大会での発表によって、pd診療を初めて耳にした先生はもちろん、すでにpd診療をご存知の先生方にとっても新たな発見の機会になったのではないだろうか。

マイクロスコープで未知の世界を体感しよう!! ~モリタ共催 ランチョンセミナー~

辻本 真規 先生辻本 真規 先生
モリタ共催のランチョンセミナーにおいて辻本真規先生(日宇歯科医院、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科齲蝕学分野)が、『初心者から中級者へのステップアップ〜エキスパートへの第一歩〜』というテーマで講演された。
Part.1では「ライカM320」、「マニーZ」の特長や性能をもとにした“マイクロスコープの基礎知識”について、Part.2では「見る」「触る」「削る」の3ステップから始める“研修医からできるマイクロスコープを使った治療とそのポイント”について、Part.3は“マイクロスコープ診療のステップアップのために”必要なポイントや解剖学的注意点などについて述べ、マイクロスコープを覗くことでもたらされる未知の世界をぜひ体感しようと参加者にエールを贈られた。

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