151号 WINTER 目次を見る
■目 次
- ≫ はじめに
- ≫ 新しい製造方法から開発されたCAD/CAMレジン材料
- ≫ 最適化されたシステム
- ≫ 製品構成
- ≫ まとめ
■はじめに
歯冠修復においては、金属、セラミックス、レジン系材料が目的に合わせて使用されている。最近では、審美治療に対する要望の高まりから、メタルオキサイド系セラミックス(ジルコニア、アルミナ)、ガラスセラミックス、コンポジットレジン等の使用が増加している。
当社は、歯冠修復材料の開発においては、1989年に歯冠用硬質レジン「セシード®」を発売し、その後、改良を重ね、今年4月には簡便性と審美性を追及したワンボティとマルチカラーの2つのシステムからなる「セシード®N」を発売した。また、1997年には臼歯における金属代替を目指し、優れた機械的特性を有するハイブリッドセラミックス「エステニア®」、2004年にはガラス繊維補強フレーム「EGファイバー」を導入した「エステニア® C&B」を発売し、15年以上の臨床成績において、高い評価を得ている。
一方、CAD/CAM装置で歯冠修復物をデザイン、加工する、デジタルデンティストリーの技術が目覚しく発展してきたことから、平成26年度の診療報酬改定において、コンポジットレジンブロック(歯科切削加工用CAD/CAMレジン材料)で作製されたCAD/CAM冠が一部保険適用となり注目が集まっている。
このような環境の中、当社は歯冠用硬質レジンの開発で培った有機・無機材料技術を結集した歯科切削加工用CAD/CAMレジン材料「カタナ®アベンシア®ブロック」の開発に至った(図1)。
本品は、「咬合に耐えうる機械的特性」、「優れた滑沢耐久性」を特長としており、以下に解説したい。
図1 カタナアベンシアブロック(保険適用)
■新しい製造方法から開発されたCAD/CAMレジン材料
「カタナ®アベンシア®ブロック」では、当社独自の新しい製造方法を採用している。すなわち、表面処理した超微粒子フィラーを高密度に圧縮し、レジンモノマーを均一に含浸、重合することで得られる新しいタイプのコンポジットレジンブロックである1)(フィラー圧縮レジン含浸法、図2)。
コンポジットレジンブロックでは、一般的にフィラーとレジンモノマーを混ぜ合わせたペーストを重合する方法が用いられる。
当社は咬合に耐えうる機械的特性と口腔内装着後の優れた滑沢耐久性を両立させることを目指して、これまで超微粒子フィラーのみを高密度・高分散で配合することを検討してきた。しかしながら、従来の製造方法では、フィラーの密度を高めることは難しく、さらには分散不足による脆弱部の発生やペーストへの気泡混入を制御することは極めて困難であった。
そこで、この独自の新しい製造方法を開発することで、優れた機械的特性と滑沢耐久性の両立を実現した。
図3はブロックの内部構造であり、超微粒子フィラーが隙間なく充填されていることが確認できる。
以下に、本構造からもたらされる機械的特性と滑沢性耐久性について述べたい。
1)咬合に耐えうる機械的特性
図4に本品の曲げ強さ、圧縮強さを示す。曲げ強さ、圧縮強さは、15年以上の臨床実績を有する「エステニア®」に匹敵し、十分に臼歯へ使用することができると考えられる。この結果は超微粒子フィラーの高密度・高分散により、機械的特性が向上したことを示している。
また咬合摩耗を想定した試験においても優れた特性を示す。フィラーとレジンが表面処理材を介して結合していることにより修復物は摩耗しにくく、さらに適度な柔軟性と緻密な表面性状により、対合歯(エナメル質)の摩耗は小さい。これにより長期にわたる咬合バランスの維持が期待される(図5)。
2)優れた滑沢耐久性
本品では、超微粒子フィラーのみを配合していることから、CAD/CAM装置で加工後に、未研磨の状態でもなめらかな表面性状を示す。その後の研磨作業において、加工で得られた形態を損なうことなく、手早く簡便に滑沢な表面に仕上げることが可能である(図6)。
また得られた滑沢性は、40,000回の歯ブラシ摩耗試験にかけても消失しない(図7)。これは表面性状の変化がナノスケールであるためである。この特性により、長期的な審美性に加え、表面荒れによる着色物質の付着を抑制することが期待される。
図2 フィラー圧縮レジン含浸法
図3 微細構造
図4 曲げ強さ、圧縮強さ
図5 修復物、対合歯摩耗
図6 CAD/CAM加工後の表面性状と研磨方法
図7 歯ブラシ摩耗
■最適化されたシステム
機械的特性、滑沢耐久性は材料自体に求められる特性であるが、ブロックを加工するCAD/CAM装置、接着するためのセメントの選択も重要である。当社はCAD/CAMシステム、セメント材料とを組み合わせたトータルシステムを提供し、より質の高い治療を目指している。
1)加工システム
図8にカタナCAD/CAMシステムを示す。本システムでは、これまでのジルコニアの加工で培ったノウハウを生かし、本品を高い精度で加工できるよう、専用の加工バー(カタナミリングバー)、加工プログラムを開発した。加工バーでは、バーの剛性の向上、先端の刃角の調整、ダイヤモンドコーティングを施し、また加工プログラムでは、バーの移動軌跡や移動速度を最適化することで、加工精度、効率を追求している。
図9は、加工した小臼歯クラウンであるが、歯冠形態の再現性と適合性に優れている。
2)接着システム
口腔内に接着する際は、グラスアイオノマー系セメントではなく、レジンセメントを使用する。いずれのレジンセメントを使用する場合においても、修復物、支台歯に付着した唾液、仮封材、仮着セメント等の接着阻害因子をしっかり除去することが重要である。
試適後に修復物の内面にサンドブラストを施し、リン酸エッチング、シランカップリング材(セラミック処理材)で適切に処理を行う(図10)。なおサンドブラストは試適後に施すのが望ましい。
当社レジンセメントでは、歯質プライマー併用セメントである「クリアフィル®エステティックセメント」、「パナビア® F2.0」)とセルフアドヒーシブセメントである「SA ルーティング®プラス」、「SA セメントプラスオートミックス」が使用できる。有髄歯等、支台歯の残存歯質が多い症例では、より高い歯質接着性を有する歯質プライマー併用のセメントを推奨したい。
また歯冠長が短い症例、支台歯のテーパーが大きい症例等の維持形態に不安がある場合は、適用を慎重に判断することが必要である。
支台歯形成では、金属とは異なる厚みを確保する必要がある。図11にクラウン形成時のクリアランス、注意点を示す。クリアランスを確実に確保することで修復物の破折やたわみを抑制し、安定した予後が期待される。
図8 カタナCAD/CAMシステム
図9 加工した小臼歯クラウン
図10 歯冠修復物の内面処理
図11 クラウンでの形成厚み、注意点
■製品構成
本品では、サイズ12およびサイズ14 Lの2種を製品ラインナップとして揃えている。12は小臼歯クラウン(保険適用)、インレー、14 Lは大臼歯クラウンに適したサイズである。
また色調においてはA2 LT、A3 LT、A3.5 LT(ロートランス色)の他、A3 OP(オペーク色)を準備しており、支台歯の色調が濃い症例等で活用いただきたい(図12)。
図12 色調
■まとめ
「カタナ®アベンシア®ブロック」は、咬合に耐えうる機械的特性に加え、滑らかな表面性状と滑沢耐久性を有する製品である。
当社CAD/CAMシステムとレジンセメントとを組み合わせてトータルシステムを提案することで、より信頼性の高い治療が可能となると考えている。
※本品は近日上市予定の製品です。
- 1)Okada K, et al. A novel technique for preparing dental CAD/CAM composite resin blocks using the filler press and monomer infiltration method. Dent Mater J 2014; 33(2): 203–209.
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