166号 AUTUMN 目次を見る
■目 次
- ≫ はじめに
- ≫ 「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick ER」の特長
- ≫ 「フリップトップキャップ」
- ≫ 「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick」の接着技術
- ≫ 「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick」の臨床評価
- ≫ まとめ
■はじめに
近年、「ユニバーサルユース」のボンディング材が各社より発売され、そのシンプルな接着システムから非常に注目を集めている。
「ユニバーサルユース」のボンディング材とは、定義は様々であるが、一般的に1ボトルで多種の被着体に適用可能、また直接充填修復のみならず間接修復の際の歯面処理材としても適用可能な多用途に用いることができるボンディング材のことを指し、接着システムの単純化とスムーズな臨床を可能とする接着技術の集大成であることが必要と考えている。
クラレノリタケデンタル(株)は、2016年に高接着、歯面処理時間の大幅な短縮(ボンド塗布後の待ち時間無し)、ユニバーサル化(多用途)を達成した新規ユニバーサルタイプのボンディング材「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick」を上市した(図1)。
今回、接着材に求められる全てに拘った「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick」の組成はそのままに、さらに容器を片手で開閉操作ができる「フリップトップキャップ」に進化させることで、“Quick”をより早く、より簡単にという意味での“Quicker”にした「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuickER(クイックイーアール)」(図2)を開発したので、その製品の特長について紹介したい。
図1 クリアフィル®ユニバーサルボンドQuick
図2 クリアフィル®ユニバーサルボンドQuick ER パッケージの外観を一新、片手で操作可能
■「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick ER」の特長
本品の特長を以下に示す。
●高い接着性
●歯面処理時間(ボンド塗布後の待ち時間なし)
●ユニバーサルユース(多用途)(図3)
●フッ素徐放性
●「フリップトップキャップ」によるスピーディな「採取」
このような「待ち時間なし」、「高接着」でユニバーサルユースが可能な「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuickER」の臨床的なメリットを実感できる例として、直接充填修復時に高強度・良好な研磨性・優れた操作性を兼ね備えた「クリアフィル® マジェスティ®ES フロー」との組み合わせが挙げられる。本組み合わせにより、臨床時間を短縮でき、唾液の多い下顎部や、長時間の開口が困難な小児・高齢者の症例でスムーズな治療が行えることが期待される(図4)。
図3 クリアフィル®ユニバーサルボンドQuick ERの主な使用用途
(※クリアフィル®ポーセレンボンドアクティベーターと混和)
図4 「クリアフィル®ユニバーサルボンドQuick ER」と「クリアフィル®マジェスティ® ES フロー」
■「フリップトップキャップ」
「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick ER」で新たに開発した新容器の「フリップトップキャップ」は、片手開閉に徹底的にこだわった設計となっており、軽い力での開閉操作が可能となっている。
そのため、従来の容器のように開閉時に両手を使う必要はなく、液の継ぎ足し時等、片手がふさがっている時でもキャップの開閉、液の採取が可能である。
「フリップトップキャップ」の特長を以下に示す(図5)。
・片手操作にこだわった「大型フック・滑り止め形状、ヒンジ位置」
⇒片手で開け易い、開閉時にノズルに指が触れ難い
・コンパクト設計
⇒手の小さな術者にも使い易い
・液“切れ”ノズル
⇒繰り返し採取してもノズルが汚れにくい、湧き出し、気泡を従来容器から大幅に改善
・しっかりとしたスナップ音
⇒“カチッ”と音がして、確実に蓋が閉じていることを音で確認
この「フリップトップキャップ」の開発上の一つのポイントとして、ヒンジと呼ばれる容器と本体を一体化させる扉の蝶番(ちょうつがい)部が使用期間中に切れないことが挙げられ、本容器はその信頼性を高めるため様々な検討、工夫の中で設計されている。
一例として、本容器設計にはCAE解析(Computer Aided Engineering)と呼ばれる、コンピューターシミュレーションによる応力解析を導入している。本応力解析とラボでの繰り返し試験とを突き合わせ、開閉耐久性の改善を試行錯誤することで、繰り返し使用にも耐え得る形状に仕上がっている(図6)
図5 「フリップトップキャップ」の特長
図6 「フリップトップキャップ」のCAE解析の一例:意図しない横荷重が負荷された場合の最大応力箇所(破損リスク最大箇所)予測
■「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick」の接着技術
「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick」では、①高純度の「MDP®」、②高活性光重合触媒、③ 新規親水性アミド系モノマーを採用しており、これによりボンドの浸透性向上、硬化特性向上を実現し、ボンド塗布後待ち時間無しでありながら、従来製品と比べ大きく接着力が向上している(図7)。
従来、1ステップボンドの課題点としては、ボンド硬化後の「吸水性」、「脆弱なボンド層の強度」があり、その性能はプライマー、ボンドから構成される2ステップボンドには及ばないという市場での認識であったが、上記技術導入により、ボンド硬化体の吸水率、強度についても従来の当社製1液タイプのボンディング材から大幅に改良、2ステップボンドである「クリアフィル® メガボンド」と同等の硬化特性を有することが確認されている(図8)。
また、東京医科歯科大学で見出された接着界面の樹脂含浸層の下にもう一層形成されるう蝕抵抗層「Super Tooth(ABRZ)」に関する研究においても、従来の1ステップボンドではerosion(樹脂含浸層下の弱い層)が見られていたのに対し、「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick」では、erosionが生じず、信頼性の高い接着界面が形成されることが報告されている(図9)。
図7 クリアフィル®ユニバーサルボンドQuickの牛歯に対するせん断接着強さ(データ提供:日本大学歯学部保存学教室修復学講座 宮崎真至先生)
図8 クリアフィル®ユニバーサルボンドQuickのボンド硬化物の吸水性、強度(データ提供:東京医科歯科大学大学院う蝕制御学分野 保坂啓一先生、久野祐介先生)
図9 クリアフィル®ユニバーサルボンドQuickの接着界面 R:CR層 A:ボンド層 D:象牙質層 OL:脱灰層 ABRZ:酸塩基抵抗層(データ提供:東京医科歯科大学大学院う蝕制御学分野 高垣智博先生、松井七生子先生)
■「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick」の臨床評価
1)国内での評価
保険収載以来、その合着の難しさが課題のCAD/CAMレジン冠の合着に関し、「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick」と「SA ルーティング® プラス」を併用したセメント接着の臨床結果が報告されている。
評価の結果、合計376症例の2ヵ月間の脱離はゼロであり、また有髄歯88症例中の術後疼痛の発生もなかった1)(図10)。
また、「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick」と「クリアフィル® DCコアオートミックス® ONE」の併用によるレジンコア築盛に関する臨床使用感評価においても、合計373症例中期間中の成功率は、99.5%であり、非常に優れた臨床成績が報告されている2)。
2)海外での評価
「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick」は、米国でも高い評価を受けている。
REALITYは歯科用医療機器に関する独立した製品評価機関であり、新製品やトレンドの歯科器械について性能評価の他、歯科医師による臨床評価を総合し、5 Star ★★★★★を最高としてランク付けされる。
「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick」は、REALITYにおいて、その最高評価である5 Star ★★★★★の評価を得ている3)(図11)。
また、REALITYと共に米国で代表的な臨床評価機関であるDENTAL ADVISORにおいても、5段階評価の最高評価である5+を獲得している4)(図11)。
図10 「クリアフィル®ユニバーサルボンドQuick」と「SAルーティング®プラス」を使用したCAD/CAMレジン冠の臨床評価
図11 REALITY 5 Star★★★★★
DENTAL ADVISOR 5+++++
■まとめ
今回発売した「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick ER」は、従来の「クリアフィル® ユニバーサルボンドQuick」の接着特性はそのままに、片手操作にこだわった「フリップトップキャップ」に進化させることにより、使い勝手が大幅に向上している。
そのため、接着システムや術式の単純化が可能であり、臨床においてスムーズな診療の流れを止めない製品であると考えている。
今後、臨床のあらゆる場面で使用できるボンディング材としてお役立ていただければ幸甚である。
- 1)Oral Studio(2017 Report17)「CAD/CAMレジン冠 合着に関する臨床評価376症例」
- 2)Oral Studio(2017 Report20)「脱離・脱落を回避する〜 新しくシンプルなレジンコア築盛システムに関する臨床評価」
- 3)REALITY(2017 NUMBER280)
- 4)The Dental Advisor(July-August 2017, Vol.34, No. 04)
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