171号 WINTER 目次を見る
キーワード:MDP塩による高い界面活性効果/口腔内でも使用可能/汚染面に対する接着性
■目 次
- ≫ はじめに
- ≫ 「カタナ®クリーナー」の特長
- ≫ 「カタナ®クリーナー」の適用対象
- ≫ 「カタナ®クリーナー」の使用方法
- ≫ 「カタナ®クリーナー」の技術
- ≫ 「カタナ®クリーナー」の性能
- ≫ まとめ
■はじめに
近年、CAD/CAM装置を用いた補綴修復の普及が急速に進み、審美意識の高まりにより、ジルコニアをはじめ、二ケイ酸リチウムガラスセラミックス、レジンブロック等、補綴装置となる材料も多様化が進んでいる。
このような補綴装置は、装着前に適合の確認やコンタクト・咬合の調整が行われるが、この際に生じる唾液汚染をはじめとする被着面の汚染は、レジンセメントの接着阻害因子となり、接着力を低下させることが知られている1、2)(図1)。
今回、クラレノリタケデンタル株式会社は、支台歯表面・試適時などに生じる唾液や血液などによる補綴装置の汚染を、当社オリジナルのリン酸エステル系モノマー「MDP®」と塩基性成分から形成される塩(MDP塩)の界面活性作用により清掃し、汚染面に対する接着材料の接着性を高める「カタナ®クリーナー」を開発した(図2)。
図1 唾液汚染の接着強さへの影響
図2 カタナ®クリーナー
■「カタナ®クリーナー」の特長
本品の特長を以下に示す。
●MDP塩の界面活性作用による高い洗浄効果
●口腔内でも使用が可能な弱酸性(pH4~5)
●水洗除去が容易な性状
●視認性の良い色調
■「カタナ®クリーナー」の適用対象
先に述べたように、本品は以下の清掃に幅広く使用することができる(図3)。
●支台歯、窩洞、根管形成後の歯面
●歯科用セラミックス、レジン系材料、歯科用金属等で作製した補綴装置
●歯科用ポスト
図3 「カタナ®クリーナー」の特長
■「カタナ®クリーナー」の使用方法(図4)
①ブラシ先端部*を動かしながら10秒以上こすり塗布。
②本品の色が完全になくなるまで水洗した後、エアーにて乾燥。
*アプリケーターブラシ以外にも、小筆・綿球・スポンジなども使用可能
図4 「カタナ®クリーナー」の使用方法
■「カタナ®クリーナー」の技術
洗浄剤の主成分である界面活性剤は、一つの分子の中に「水になじみやすい部分(親水基)」と「油になじみやすい部分(疎水基)」の両方をあわせ持つ化学構造上の特徴を有している。
一般的に界面活性剤は、水中では分子の疎水基同士が凝集し、親水基が外側に向いた集合体(ミセル)を形成する。このミセルは、内側の疎水基に汚れ成分を取り込む性質があることが知られている。
「カタナ®クリーナー」においても、配合されている「MDP塩」が同様に水中でミセルを形成することが確認されており*、ミセルの界面活性効果により洗浄作用を発現していると推測される(図5)。
本製品では、「MDP® 」に対して塩基性成分を添加し「MDP塩」とすることにより、本来は水に難溶の「MDP® 」を水に溶解させ、水を溶媒として高い界面活性効果を発揮させるように設計している。
*データ測定:クラレノリタケデンタル株式会社
図5 MDP塩の構造
■「カタナ®クリーナー」の性能
1)唾液汚染の除去性(タンパク質染色試験)
ジルコニア板(カタナ® ジルコニアHT)を汚染源である人工唾液に1分間浸漬した後に、タンパク質と結合するクーマシーブリリアントブルー液(CBB液)で染色すると青色を呈色する。
一方、「カタナ®クリーナー」を用いて洗浄操作を行った後にCBB液で染色した場合は、青色の呈色はわずかであり、「カタナ® クリーナー」で洗浄することにより唾液由来のタンパク質が除去できていることがわかる(図6)。
2)汚染後の被着面に対する接着強さ
染色試験と同様に「カタナ®ジルコニアHT」、および人歯を人工唾液(またはヒト血漿)に浸漬し、「カタナ®クリーナー」で洗浄処理をした後に「パナビア®V5」を用いて接着した(図7)。
図7より、「カタナ®クリーナー」は、補綴装置のみならず歯面に対しても、人工唾液汚染(またはヒト血漿汚染)による接着強さの低下に対して接着性が高まっていることが分かる。
図6 CBB液による色素結合法を用いた染色試験
図7 各種汚染に対する「カタナ®クリーナー」適用後の接着力
■まとめ
今回発売した「カタナ®クリーナー」は、支台歯表面・試適時などに生じる唾液や血液などによる補綴装置の汚染を、リン酸エステル系モノマー「MDP®」と塩基性成分から形成される塩(MDP塩)の界面活性作用により清掃し、汚染面に対する接着材料の接着性を高めるものである。
また、本製品は、水を溶剤とした弱酸性の液組成物であり、口腔外での補綴装置の洗浄のみならず、口腔内でも使用することができる。
先生方の今後の治療において、接着システムの性能を発揮するための重要なアイテムとして臨床のあらゆる場面にお役立ていただければ幸いである(図8)。
図8 接着システムの性能を発揮するための重要なアイテム
- 1)石井亮、宮崎真至 ほか, 唾液汚染されたセラミックに対する表面処理の影響-表面自由エネルギーと接着強さからの検討-, 169-177,日歯保存誌, 59 (2), 2016.
- 2)Jin-Ho Phark, et al, Influence of contaminationand cleaning on bond strength tomodified zirconia, Dental Materials 25(12):1541-1550, 2009
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