171号 WINTER 目次を見る
キーワード:モノリシックジルコニア/Valueを用いて白く明るいエナメル質を再現
■目 次
- ≫ はじめに
- ≫ セラビアンZR FC ペーストステイン
- ≫ セラビアンZR FC ペーストステイン Valueの検証
- ≫ 症例1 モノリシックジルコニア
- ≫ 症例2
- ≫ 症例3 ジルコニアレイヤリング
- ≫ おわりに
■はじめに
近年、審美修復材料としてオールセラミックがその代表格として臨床実績を上げているのは周知の事実である。ジルコニア修復物では、ジルコニアに専用ポーセレンを築盛したクラウン、ジルコニア単体で製作した物に大別される。
特に近年、ジルコニアの種類が増え、色調面から見ても高透過性マルチレイヤードジルコニアで修復されたモノリシックジルコニアでは、十分臨床に耐え得ることができるのではないだろうか。
本稿では、日常臨床におけるセラビアンZR FCペーストステインの有効な使用方法について述べたい。
■セラビアンZR FC ペーストステイン
セラビアンZR FCペーストステインは、オールセラミックに塗布可能なペーストタイプのステインである。広範囲にわたり均一に塗布することが容易で、より簡単にスピーディに作業することが可能である。通法のレイヤリング修復物や、モノリシックジルコニアのステイン法にも対応できるペーストステインである。
従来のセラビアンZRエクスターナルステインに新たに透明感を表現するGrayishBlue、Light Gray、蛍光性をコントロールするFluoro、Glaze材には通常のGlazeの他にClear Glazeも追加され、歯冠全体に高い透明感のある艶を付与したり、他のカラーステインと混合して色の濃度を調整することも可能な使い勝手の良いステインである(図1)。
セラビアン® ZR FCペーストステイン フルキット
■セラビアンZR FC ペーストステイン Valueの検証
セラビアンZR FCペーストステインに新たにラインナップされたValueについて検証してみる(図2)。
説明書(図3)を見てみると、デンティン色、エナメル色などの透明感(明度)を調整と書いてある。この明度とはどのようなことなのか検証する。
1)検証方法
検証方法として、Noritake Shade GuideにValueを塗布し焼成する。Value単体で塗布し焼成すると不透明になり過ぎてしまうので、Glaze材と混合する。Glaze材には極力色調に影響を与えないClear Glazeを用いValueとClear Glazeを1対1の割合で混合したものを実験に用いた(図4、5)。それを1回、2回と塗布し焼成したものを見てみると、明度が上がっているように感じる(図6)。
2)明度確認のためにグレースケールで確認する
グレースケールで見てみると明度が上がっていることがわかる(図7)。このことからValueは明度を上げることができるステインだと確認できた。この実験結果からValueを臨床応用したことを報告する。
図2 透明性・明度のコントロール。Glazeより透明性の高いClear Glaze、明度アップ用のValueをラインナップ。
図3 セラビアン® ZR ペーストステインの色調構成
図4 Noritake Shade Guide
図5 ValueとClear Glazeを1対1の割合で混合したものを用いた。
図6 塗布の回数を重ねるごとに明度が上がっているように感じる。
図7 グレースケールで確認したところ、明らかに明度が上がっていることがわかる。
■症例1 モノリシックジルコニア
上顎右側第一小臼歯、白く明るいエナメル質を再現するためにValueを用いて再現してみる(図8、9)。
Valueを用いて明るいエナメル質を再現したが白の濃度が足りないように感じる(図10)。
図8、9 4 白く明るいエナメル質を再現するためにValueを用いてみた。
図10 今回製作したレシピ。少し白の濃度が足らなかった。
■症例2
上顎左側第二小臼歯をモノリシックジルコニアのステイン法で製作する。
切縁に細かな白いキャラクターがあり歯頸部にも白いキャラクターがあることが確認できる。この白く明るいキャラクターをValueを使って再現するが、前回(症例1)の失敗からValueにWhiteを混合して白の濃度を調整する(図11、12)。
Valueを単体で使用するよりもWhiteを混合することによって白いキャラクターの再現ができた。
図11、12 5 Valueを単体で使用するよりもWhiteを混合することによって白いキャラクターの再現ができた。
■症例3 ジルコニアレイヤリング
上顎右側側切歯を製作する。本ケースはホワイト二ングしており難易度の高いケースになる。
ホワイトニングした歯はエナメル質が明るくなり内部構造の色は明るくならない。それをセラミックスで表現することは非常に難しく、特に明度コントロールが難しく感じる(図13)。
1)口腔内試適
コンタクト、バイト、形態をチェックした後、色調を確認する。色調を見てみると、暗く明度が下がっているように感じる(図14)。これをグレースケールで確認すると明度が下がっていることがわかる(図15)。
2)Valueを使っての修正
実験結果からValueとClear Glazeを1対1の割合で混合したペーストステインを歯冠全体に塗布し明度を上げた(図16)。グレースケールで確認すると明度が上がっている(図17)。
明度調整後、色調を見てみると彩度が少し足りないことがわかる。彩度を付けて完成した(図18~20)。
図13 2 ホワイトニングした歯をセラミックスで表現するには、明度のコントロールが非常に重要。
図14 色調を見ると明度が下がっているように感じる。
図15 グレースケールで確認。明度が下がっていることがわかる。
図16 ValueとClear Glazeを1対1の割合で混合したペーストステインを歯冠全体に塗布し明度を上げた。
図17 グレースケールで確認すると明度が上がったことがわかる。
図18 明度の修正を行う前後の比較。
図19 明度調整後、色調を見てみると彩度が少し足りない。
図20 Cervical 2を塗布し、彩色を上げて完成。
■おわりに
今回、セラビアンZR FCペーストステインに新たにラインナップされたValueに注目して検証したことを報告させていただいた。今まではエクスターナルステインで明度を上げることはできなかったが、Valueによって明度が上げられることがわかった。モノリシックジルコニアやプレスセラミックにも十分臨床応用できる。またレイヤリングで明度が下がってしまった場合、今までは再製作となってしまったが、Valueによって修正で留めることができた。もちろん、修正なく一回でセットできることが望ましいが、臨床上難しいことである。最後に、今回の実験方法や臨床応用について快く何度も相談させていただいたCURA ESTHETIC DENTAL CENTER 鬼頭寛之氏、Dental lab SCALA 南澤英樹氏、小野寺歯科 小野寺良修院長並びにスタッフの皆様、協力していただいた皆様に感謝の意を表します。本稿が読者の助けになれば、筆者にとって望外の喜びである。
目 次
モリタ友の会会員限定記事
- Close Up 連 載 : 超高齢社会における歯科医療が果たす役割 Part 8 訪問先で手早く実施できる概形印象採得と噛める入れ歯を実現する解剖学的ランドマーク
- Field Report 患者さんに“優しい歯科治療”を提供するインプラントシステムと手術用ドリルビット
- Trends コンセプト優先型支台歯形成用バーセット「SELF CREATOR」~前歯編~
- Clinical Report 感染歯質の選択的除去が持つ臨床的意義について~MI 治療を心掛ける~
- Trends 接着前の清掃に支台歯や補綴装置へ幅広く使用できる「カタナ®クリーナー」
- Clinical Report 大型2 級窩洞のコンポジットレジン修復を極める~実力につながる臨床解説編~
- Trends 優れた歯垢除去力の「DENT.EX 歯間ブラシNON WIRE」の開発と機能について
- Clinical Report Erwin AdvErL EVO の臨床活用 ~一般医での幅広い有用性~
- Interview 耳鼻咽喉科医から見た医科歯科連携 −歯科医師が知っておくべき舌がんと副鼻腔炎−
- Field Report 医院の想いが伝わる“空気”を つくりだすヒケツとは
- Interview 東上野歯科クリニック 村岡正弘理事長に聞く「強固なチーム」の作り方~スタッフの能力を引き出すために必要なリーダーシップとは~
- Field Report 歯科医院の強みを生かした 音波歯ブラシの導入について
- Technical Report ジルコニアオールセラミック修復における明度調整方法について
- Field Report 症状に合わせた歯磨剤と替ブラシの相乗効果を実感
他の記事を探す
モリタ友の会
セミナー情報
会員登録した方のみ、
限定コンテンツ・サービスが無料で利用可能
オンラインカタログでの製品の価格チェックやすべての記事の閲覧、臨床や経営に役立つメールマガジンを受け取ることができます。
商品のモニター参加や、新製品・優良品のご提供、セミナー優待割引のある、もっとお得な有料会員サービスもあります。