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歯の痛みは我慢できないことが多いので、まずは痛みを取り除く。あたりまえのことを施し、次に、それぞれの患者さんの希望、例えば、噛めないものを噛めるようにする、など、患者さんに寄り添った“優しい歯科治療”を行うことを心がけています。
私は、歯科医療の中で、欠損補綴については、骨支持による咬合回復が理想であると考えています。欠損部位に充分な骨量があれば、そこに新たな支持としてインプラントを植立するのが、現状ではベストな方法だと思っています。
一般的には、インプラント外科キットには多種多様なドリルが存在し、手術工程において使い分ける必要があります。「SPIシステム」は、無駄がなく、シンプルで、手術のポイントを理解していれば、短時間で埋入手術が終了できるというメリットがあり、患者さんに優しい歯科治療を掲げる私にとっては、相性のいいインプラントシステムだと考えています。SPIシステムとは、私がインプラント治療に取り組み始めた頃からの付き合いですので、もう15年になります。
さらに、オッセオインテグレーションの観点から考えても、SPIシステムは純チタン製のフィクスチャーであることは理にかなっているのではないでしょうか。骨が脆弱なケースでは、HAコーティングタイプのインプラントを推奨する向きもあり、何度か使用しましたが、それほどの差異は認めないように感じました。
現在、私の歯科医院ではSPIシステムを使用していますが、上顎臼歯部の骨レベルの低い症例においてはソケットリフト法を行っています。手術を安全に短時間で終えるために、「ハッチリーマーキット」(モリタ)と「テルフィール」(オリンパステルモバイオマテリアル:図1)を応用しています。 画期的な手術方法で、以前に比べ、患者さんの苦痛が著しく減少しており、術者にとってもありがたいツールとなっています。
紹介する症例(図2)は、ハッチリーマーを用いたソケットリフト法によりSPIインプラントを埋入し、CTで経過観察しているケースです。上顎臼歯部の骨が薄いため、上顎洞底にハッチを形成した後、骨補填材を用いリフトアップし、インプラント体を埋入しました(図3~5)。ハッチを開ける際は50回転、挙上する際は30回転と、目で追えるほど低速で、マニュアルに従えば、上顎洞粘膜を穿孔しインプラントが迷入してしまうこともありません。手術は安全に、可能な限り短時間で行う必要があるのです。
また、インプラント治療における診査診断、経過観察にCTが不可欠であることも強調しておきたいと思います。この症例での予後(図6、9)、一部のCT画像(図7、8)を示します。
開業後1年ほどは他病院に撮影を依頼していましたが、術前診断、予後の経過観察、ソケットリフト症例での骨成熟度などを確認するためには、自院でのCT撮影が必須と考え、CTを導入し、今やなくてはならないツールになっています。
最後になりますが、現在、当院では医局時代の後輩2名が常勤歯科医師として勤務してくれています。彼らに私の持っている技術、歯科医療に対する考えを伝えていき、多くの患者さんに歯科医療を通じて社会貢献できるよう、スタッフ一同、頑張っていきたいと思っています。
図1 骨補填材には「テルフィール」を使用している。サイズが豊富で、使い勝手も良く、重宝している。
図2 初診時のパノラマX線写真。上顎はオーバーデンチャータイプの総義歯を使用。不快感が大きいため、インプラント治療を希望される。近隣歯科医からの紹介状を持ち来院された。
図3 6 、ハッチリーマー、テルフィールを用い、ソケットリフトを行った直後のデンタルX線写真。補填材の量の調整が難しく、量が多いと新生骨の形成が遅れると考えている。
図4 同部、埋入直後のデンタルX線写真。理想的な位置に埋入されている。骨支持が少なく、かつ、隣在歯がないため、埋入方向には3次元的な分析を十分に考慮しなければならない。
図5 反対側の埋入直後のデンタルX線写真。8の骨が十分に存在したため、近心傾斜させ埋入した。6は6と同様に、ソケットリフトを行った。
図6 最終補綴セット後、約1年後のパノラマX線写真。インプラント支持骨の吸収は認めない。
図7 最終補綴セット後、約1年後の6のCT写真。新生骨がインプラント体周囲に形成されている。
図8 最終補綴セット後、約1年後の6のCT写真。6と同様に新生骨がインプラント体周囲に形成されている。
図9 最終補綴セット後、約1年後の口腔内写真。歯肉の状態もよく、メインテナンスは良好と思われる。1年間は、1ヵ月に1回の来院をお願いしている。
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