154号 AUTUMN 目次を見る
日本歯科大学附属病院では1991年1月に大学病院として日本で初めてインプラント専門の診療科である口腔インプラント診療科を設立しました。
以来、のべ8000名以上の患者さんがインプラントの治療やトラブル症例に対する処置、相談のために来院され、昨年のインプラント埋入本数は約600本に上ります。
インプラント治療において、インプラント体埋入時の初期固定は、その後の臨床経過に大きく影響を及ぼすため、充分なオッセオインテグレーションの獲得は不可欠です。
しかしながら、初期固定に対する評価は、これまで埋入術者の手指の感覚や経験的な判断に依るところが大きく、言わば主観的に行われてきました。
そうした中、オッセオインテグレーションの獲得を客観的に評価する方法として、音叉の原理を利用し、インプラント体の固定状態を分析する共振周波数解析(Resonance Frequency Analysis:RFA)法が現在では広く用いられるようになりました。
当診療科においてもX線や打診テスト(歯牙動揺測定器)など従来の検査に加え、共振周波数解析装置オステルISQアナライザによるISQ値(インプラント安定指数:Implant Stability Quotient Value)の測定をすべての症例に対してルーティーンとして行っています。
ISQ値はインプラント体の骨内安定性を数値化したもので、即時荷重を含めた荷重時期や荷重方法の検討、治癒期間の予測を客観的に評価する指標となるものです。
当診療科では1次手術時、2次手術時のほか、メンテナンス期間中においても上部構造の状態次第では測定を行っており、取り分け1次手術時の測定は前述したように、より確実な評価を要するために重視しています。
ISQ値は1〜100までの数値で表され、60未満を低い安定性、60〜70を中等度の安定性、70以上を高い安定性とし、当診療科では75以上であれば早期荷重や1回法など、治癒期間を短くできるかなどの検討を行います。
オステルISQアナライザは非接触的に簡単な操作でISQ値を測定できる点も特筆すべきでしょう。
まず、スマートペグマウントを用いてスマートペグをインプラント体、またはアバットメントに装着します。次に計測用プローブをスマートペグに近づけます。すると、ブローブから磁気パルスが発信され、スマートペグとの共振周波数を測定し、算出されたISQ値がディスプレイに表示されます。
スマートペグは非常に小さく、非接触状態で測定が行えるので、部位により計測ができないということもなく、患者さんに対して余分な衝撃を与えることもありません。また、磁気パルスを当てる角度による誤差もほとんどなく、操作性、再現性ともにとても気に入っています。
さらに臨床上で有効な活用法として経時的に安定度を測定できるところです。埋入時のISQ値をベースとし2次オペ時、テンポラリーの装着時や最終補綴物のセット時など、ペグを装着できるタイミングで数値の変化を確認できます。数値が減少傾向にあれば、何らかのアラームと捉えることができるので、早い段階で適切な対応が可能になります。
インプラント治療を成功に導くためには、従来より行われてきた打診テストやX線などによる診断も依然、重要であることには変わりありません。
しかし、患者さんや術者にとってできるだけ安全で、納得のいくインプラント治療を行うためには、より確実でより客観的にオッセオインテグレーションの獲得を評価できるオステルISQアナライザはとても有用な機器ではないかと考えています。
ISQ値とインプラント安定性・各種プロトコルの関係
図1 オステルISQアナライザの本体。ISQ値が1〜100の数値で表示される。
図2 スマートペグマウントを用いてスマートペグをインプラントに装着している様子。
図3 インプラントにスマートペグが装着された様子。
図4 計測用プローブをスマートペグに近づけると非接触でISQ値が測定できる。
図5 日本歯科大学附属病院では2方向から測定を行っている。
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