154号 AUTUMN 目次を見る
三次元的に歯や骨の位置関係、血管や神経の走行などを把握できる歯科用CTは、インプラント治療はもとより、根管治療や歯周病治療といったさまざまな症例にも効力を発揮するものです。
より安全で予知性の高い歯科治療を進めるためにCTは非常に有用な設備であることは確かなのですが、以前では大学病院のような大きな施設以外で設置することは現実的ではありませんでした。しかし、近年、パノラマ撮影が行える複合機の登場や小型化、量産化が進むことにより、一般的な開業医であっても導入しやすい環境が整いつつあります。
当院がベラビューエポックス3Dfを採用した理由には、まず画質の鮮明さが挙げられます。もともと根管治療にも使用できるようにと100ミクロンの単位まで細かく撮影することを念頭に置きながら開発された歯科用CTであるため、複合機でありながら非常に鮮明な画質を実現しているのです。
図1と図2で示す症例は、X線写真では見つけることができなかった第二大臼歯の根尖外に漏出した根充材や未処置の近心第二根管の存在をCT画像により確認できた一例です。CT診断を活用することで、例えば、従来では抜歯の選択を迫られていたような症例であっても歯を抜かずに治療できるケースが増えてきました。特に根管治療にCT診断を用いる場合は、小さな病変でもはっきり捉えることができるかなど、画質の良し悪しが診断や治療に大きな影響を及ぼします。
さらに、ベラビューエポックス3Dfを選んだもう一つの理由として、撮影や画像処理にかかる時間の短さが挙げられます。撮影時間はわずか9.4秒のため、患者さんが動いて画像がブレてしまうリスクを少なくし、被曝量の低減にも繋がっています。画像処理にかかる時間も短く、撮影後はすぐにユニットで患者さんにCT画像をお見せすることが可能で、オペの途中であってもストレスなく撮影が行えます。
被曝量に関して言えば、ここ数年で関心を持たれる患者さんが増えています。そうした方々に対して、より安心であることを説明できるのは利点の一つでしょう。また、将来、被曝量に関わる新しい法的な基準ができた際にも、被曝量が少ないことは大きなアドバンテージになるものだと思っています。
操作についてもパノラマスカウト機構により、撮影したい領域の指定や位置づけが非常に簡便であり、撮影者の技量により画質に差が出るということがありません。
さて、近年、インプラント治療におけるCT診断の導入は世界的な常識となりつつあります。また、先に述べたような根管治療だけでなく、埋伏歯や歯周病、う蝕など、あらゆる診断にも歯科用CTは有効であり、今後もさらに普及が進むものと思います。
当院は2004年の開業以来、一人の患者さんと一生つき合っていけるように的確な診断とより高度な医療技術の提供を心がけてきました。そうした医療理念の実現のためにも「ベラビューエポックス3Df」は今や欠かせないものとなっています。もちろん、どんなに高性能な歯科用CTを導入したとしても、読影能力やマイクロスコープを使いこなす技術などを身につけていなければ、精度の高い治療の提供は行えません。そのための研鑽や技術向上に対する努力は今後も欠かさず続けていきたいと思っています。
図1 症例1−1 左上臼歯部の自発痛を主訴として来院した患者のデンタルX線写真。原因を特定するための情報は十分ではない。
図2 症例1−2 CT撮影によって、第二大臼歯の根尖外に漏出した根充材や未処置の近心第二根管(→)の存在が確認できた。また、上顎洞粘膜の肥厚も認められる。
図3 症例2−1 左上臼歯部の激痛を主訴として来院した患者のデンタルX線写真。第二大臼歯のカリエスと埋伏智歯が確認できる。
図4 症例2−2 埋伏智歯の抜歯のためにCT撮影を行ったところ、上顎洞粘膜の肥厚も確認できた。
図5 症例2−3 埋伏智歯の抜歯、第二大臼歯の根管治療後のCT画像。上顎洞粘膜の肥厚は改善している。
図6 症例3−1 食事中に上顎左側側切歯に激痛を感じたとのことで来院した患者のデンタルX線写真。原因を特定できる明確な所見は得られない。
図7 症例3−2 CT撮影により、歯冠部から歯根に及ぶ破折を確認できた。診査の結果、保存不可と判断した。
図8 症例3−3 抜歯即時埋入によりインプラントをプレイスメント。同時に骨造成も行った。
図9 症例3−4 2最終補綴物装着時。
図10 症例4−1 インプラントオペの当日に、サージカルガイドを試適した状態でシミュレーションを行った画像。院内にCT機が設置されていなければ行えないステップである。
図11 症例4−2 インプラント埋入後。シミュレーション通りにフィクスチャーがプレイスメントできていることが確認できる
図12 症例4−3 2最終補綴物装着後1年経過時。良好な状態で推移している。
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