178号 AUTUMN 目次を見る
■目 次
- ≫ はじめに
- ≫ 当院における歯科用CTの活用事例
- ≫ 症例供覧
- ≫ おわりに
■はじめに
1989年の開業以来、歯周病治療の診断はデンタルX線画像のみで対応してきたが、2013年、クリニックの移転に伴い院内のデジタルネットワーク構築とより精度の高い診断を目的として歯科用CTを導入した。導入にあたって様々な機種を検討したが、画質の鮮明さと他の機器との互換性の観点から「Veraviewepocs 3Df」( モリタ) を選択した。画質は期待した通り高品質なものだったが、加えて撮影準備も簡便で操作性も高く誰にでも扱いやすい点や患者説明にもとても有効であることがわかり、導入から8年が経過した現在も変わらず重宝している。
■当院における歯科用CTの活用事例
当院では初診時に「歯科ドック」と呼ばれる7項目からなる全顎的診査を受診いただいているが、CT導入後は基本となるデンタル14枚法に加えて、垂直性の骨欠損など重度の歯周病に罹患している方、さらにインプラント治療を希望する方などにはオプションとしてCT撮影を推奨している(図1)。
デンタルX線画像だけを使ったいわゆる二次元的な診断だと、頰側・舌側の骨の状態や残存量、とりわけ皮質骨で覆われ海面骨が少ない前歯部などの場合、骨が十分に存在しているように見えることが多かった。その診断結果から、当該歯を残存させる方向で治療計画を立てていたものが、実際にフラップを開けてみると骨量が予想より大きく不足しており、結果として抜歯適用になるケースも多く存在した。しかし、CT画像によって三次元的な情報をプラスできるようになってからは、そうしたギャップはほとんどみられず、より確信を持った診断が可能になったと感じている。
また、当院では歯周基本治療を行っても改善が見られない部位が存在した場合には、改善しない原因や歯周外科治療の必要性について、担当歯科衛生士が説明を行うが、デンタルX線画像のみでは立体的にイメージすることが難しく患者説明に苦労することもあった。しかし、CT導入後、歯科医師向けの勉強会や外科治療のアシストにも積極的に参加し知識や技術を深めてくれたおかげもあって、彼女たちの読影力は飛躍的に向上し、医院全体としての患者からの信頼度が高まっていることを実感するケースも多い(図2)。
図1 「歯科ドック」ではオプションとして必要な患者にCT撮影を提案している。-
図2 担当歯科衛生士が行う患者説明にCT画像を活用している。
■症例供覧
図3は重度の歯周病の症例である。右側上顎7番頰側部の垂直的なプロービング値は12mmで、CT画像で確認したところ根尖部まで骨がないことが確認できた(図4)。こうした診断はデンタルX線画像のような二次元画像では難しく、CT画像による診断がその後の治療計画に大きく寄与している。
図5は左側上顎7番に歯性上顎洞炎の疑いがある40歳の女性である。デンタルX線画像では歯根部分の炎症の疑いは確認できるが、上顎洞に達しているかどうかまでは判然としない。そのため患者の了解のもとCT撮影を行ったところ(図6~8)、炎症が上顎洞に達していることが確認できた。同じく図9~12も歯性上顎洞炎の症例である。
Veraviewepocs 3Dfでは歯列弓型の照射野撮影機能が搭載されたことで、広い領域を低被曝で撮影することが可能になった。筆者は撮影領域をφ80×H80mmなど、あらかじめ少し広範囲に設定し、全体的な骨吸収や骨欠損の状態を把握したうえで、必要部分を拡大して読影、診断するようにしている。
図3 重度歯周病の口腔内写真。-
図4 デンタルX線では判然としないため、CT画像で確認したところ頰側の骨量が不足していることが判明。 -
図5 歯性上顎洞炎の疑いがある40歳女性。 -
図6 CT画像(水平断)。
図7 CT画像(歯列平行断)。-
図8 CT画像(歯列横断)。 -
図9 歯性上顎洞炎の疑いがある70歳女性のデンタルX線画像。 -
図10 CT画像(ボリュームレンダリング)。
図11 CT画像(水平断)により右側上顎洞に炎症像を確認。-
図12 CT画像(左上:歯列平行断、右:水平断)。
■おわりに
今後はデジタル化のメリットを最大限に活用し、放射線科、口腔外科、耳鼻科などそれぞれ専門分野の先生方と画像データを共有することで、より精度と予知性の高い診断が可能となり最終的に患者により良い治療として還元できることを切に願っている。
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