178号 AUTUMN 目次を見る
Case Report
ISQ測定装置「オステルビーコン」の有意性とその臨床
キーワード:インプラント/ISQ値(Implant Stability Quotient)/コードレス
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はじめに
近年、インプラントの進化にともない治癒期間が早くなってきたことは患者さんにとっては朗報である。しかし、初期固定を信じて即時荷重は特にシングルスタンディングのインプラント埋入では危険である。
また、高齢で上顎臼歯部の皮質骨が薄くType4の骨質では一般的には治療期間が長くなる。
しかし、非接触型の「オステルISQアナライザ」(モリタ、以下 オステル)はその荷重の時期が判り、最短で安心して補綴に移行できるための測定器として有り難いことである。
私は以前からオステルを使用して、その評価に信頼を得ていた。オステルはインプラント安定指数の評価としてISQ値(Implant Stability Quotient)共鳴振動周波数分析装置を用いて測定する。
ISQ値1~100の数値(図1)で表され、この数値が高いほどインプラント体の骨内安定性が高いとされる。簡便な操作で客観的な数値を非侵襲的に得られる点で優れている。
この度、モリタからコードレスの「オステルビーコン」(図2)を購入した。使ってからは今までのコード付きで測定器(図3)が大きいものと違い、オステルビーコンは、その準備も簡単で、スピーディに測定できるのでコードレスはとても重宝している。
図1 ISQ値とインプラント体安定性の指標
(オステルの論文の集約 データベース:https://www.osstell.com/scientific-database/)-
図2 新型オステルビーコンはコンパクトで、コードレスは使いやすい。 -
図3 旧型の「オステルISQアナライザ」。
症例からオステルビーコンを解説する
患者さんは78歳男性で不安障害をもっている患者さんである。
7の歯牙破折で抜歯することになり、最近発症した不安恐怖症があるため78歳という高齢で大丈夫かとても不安を抱えつつも「早く噛みたい」と切望されていた。
早期に荷重するには骨タイプが上顎臼歯部Type4で条件は悪いが、早く噛みたいという希望をかなえるには、その時期がオステルビーコンで早く測定できることは素晴らしいことである。
インプラント埋入
不安恐怖症があるためサージガイドをもちいて短時間で行うことにする。
局所麻酔を行い、サージガイドを装着、シミュレータのプロトコルに従い、フラップレスにて正確にインプラント埋入を行う。
上顎臼歯部に5mm×13mmインプラントを埋入し、ヒーリングアバットメントの装着が15分で行えた(図4~9)。
図4 7の破折にて抜歯後のパノラマX線写真。-
図5 7の咬合面観。十分な骨幅で角化歯肉も十分ある。 -
図6 CBCTからシミュレータにてインプラント埋入のシミュレーションを行う。皮質骨が薄く海綿骨が多いType4の骨質と予測できた。(使用CT:GENORAY GV21C) -
図7 サージガイドを装着してフラップレスにてインプラント窩を形成してインプラント埋入を行い、テンポラリーアバットメントを装着する。 -
図8 インプラント埋入直後の咬合面観。 オペ時間は15分。 -
図9 埋入後2ヵ月の咬合面観。
「オステルビーコン」での負荷の時期を確認
インプラントの埋入時のトルクは50Nと初期固定は充分であったが、高齢で治癒スピードが通常通りであるか不安である。今までオステルを用いて補綴の時期を判断してきた。X線写真所見、口腔内状態など感覚的な判断では不安であるが、オステルでは補綴には早い、あるいはオッセオインテグレーション(以下 インテグレーション)していないためロストの可能性がある等の判断もでき、インプラントの再埋入の判断には有効である。
2ヵ月後にオステルビーコンにてISQ値 81(70以上が充分なインテグレーション)で先端が緑のLEDが点灯して充分なインテグレーションを判断した(図10、11)。
図10 補綴が可能な二次固定ができているかオステルビーコンのペグを5Nで装着して測定する。-
図11 ISQ値81でシングルスタンディングに十分なインテグレーションなので、即座に光学印象を行う。
光学印象と上部構造の装着
光学印象、光学咬合採得を行う。模型レスでコンピュータ上で設計、チタンブロックをCADでミリングしてカスタムアバットメントを製作する。カスタムアバットメントと接着セメントで接着したジルコニア上部構造を咬合調整する。
その後、上顎臼歯部を25Nで増し締めし、アクセルホールをコンポジットレジンで閉鎖し、最終咬合調整を行う。
補綴物装着した口腔内写真、X線写真、そしてCT所見である。CT上でも適正に埋入されていることが判る。
なにより、オステルビーコンで治療期間を短時間で判断できたのは一番の朗報であったと思われる(図12~15)。
図12 スキャンボディを装着して光学印象。10分で終了。-
図13 カスタムアバットメントにジルコニアを接着セメントで接着してスクリューリテイニングな補綴設計を行う。 -
図14 ジルコニアのアクセルホールをコンポジットレジンで封鎖して咬合調整を行う。 -
図15 術後2ヵ月のCT所見。オステルビーコンにて早期の荷重が可能になった。(使用CT:GENORAY GV21C)
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