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Case Report
ハッチリーマーエクスプレスキットを用いた上顎洞挙上(crestal approach)について
キーワード:crestal approachによる上顎洞底挙上術/適切な初期固定/手術時間の短縮
目 次
- ≫ はじめに
- ≫ ハッチリーマーキットの特徴
- ≫ ハッチリーマーキットの使用感
- ≫ 症例
- ≫ おわりに
はじめに
上顎臼歯部のインプラント症例においては垂直的骨量の不足から、上顎洞底の挙上が必要となることが多い。上顎洞底挙上術にはlateral approachとcrestal approachがあり、ハッチリーマーキットは後者における極めて有効かつ安全な器具であると感じている。
ハッチリーマーキットの特徴
ハッチリーマーは骨削の方法がユニークである。最初に先端のカッティングアングルといわれる部分で、断面が三角形となるような円周状に削る。
リーマーが少し入り込んだところで水平になった刃の部分、リーミングエッジが効き始めて骨を円形に削いでゆく(図1、2)と共に、カッティングエッジで円筒状に切ってゆく。
この繰り返しにより、徐々に骨が円柱状に切削されてゆき、最終的には菲薄化した上顎洞底骨がハッチ状に押し上げられるというものである(図3)。
従来のドリルのように先端部で削り進んでゆくのではなく、丸く切ってゆくというイメージであろうか。
また、低回転(30~50rpm)、非注水で切削を行うという点も大きな特徴である。
図1 カッティングアングルとリーミングエッジの働き。-
図2 ハッチリーマーの構造。
ハッチリーマーキットの使用感
このハッチリーマーキットによって、極めて快適な手術が行えるようになった。
ドリリングが不要で、なおかつオステオトームの槌打も不要である。
術者にとっての一番のメリットは、「ハッチが開く」瞬間を手指の感覚でしっかりと触知できるということであろう。低回転(30~50rpm)でゆっくりとリーマーが進むため、「行き過ぎる」ことなく、自信を持って上顎洞底を挙上できる。
また、従来のオステオトーム槌打では挙上が難しかった、上顎洞底が傾斜しているような部位においてもとくに困難を感じることなく挙上が可能である(図4)。
具体的には、ハッチリーマーによって切削を進めてゆき、やがてリーマーの先端が上顎洞底の皮質骨に達すると、リーマーが前に進みにくくなる。それでも一定の圧を加えながら切削を続けると、今度はハンドピースが水平方向にぐっと振られるようなリアクションが術者の手に伝わってくる。
次の瞬間に、ゆっくりとリーマーが先に進み始める。この瞬間にハッチが開いていると考えられる。
その後にデプスゲージを挿入して、インプラント窩全周にわたって上顎洞底の骨が抜けていることを確認、可能な範囲での上顎洞粘膜の剥離を行ったのち、ボーンコンデンサーにて骨補填材を充填しながら上顎洞粘膜を挙上、続いてフィクスチャーを埋入するというものである(図5~8)。
インプラント埋入部位の骨質により、形成窩の直径をフィクスチャー径よりも0.5~1.5mm小さく形成して適切な初期固定が得られるようにすることが多い。
一方、患者さんにとっても、従来のドリリングによる音や振動、オステオトームの槌打による衝撃が無いため、より快適な手術を受けることが可能となった。
また、極めて容易に短時間で上顎洞底の挙上が行えることは、手術時間全体の大幅な短縮にも寄与している。
図3 長さ3.0mm、4.5mm、6.0mm、7.5mm、9.0mm、10.5mmのストッパーが付属するので、必要に応じて使用することができる。-
図4 上顎洞底が傾斜しているケースでも困難なく挙上が可能である。 -
図5 デプスゲージにて上顎洞底が抜けていることを確認。 -
図6 ボーンコンデンサーによる骨補填材の填入。 -
図7 形成に用いたものより0.5mm径の小さいハッチリーマーで骨補填材を圧縮、上顎洞粘膜を挙上。必要に応じて骨補填材を追加して繰り返す。 -
図8 フィクスチャーの埋入。
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