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被介護者の口腔ケアをしやすい介護用歯ブラシ「エラックハブラシ620」の開発と機能について

ライオン株式会社 研究開発本部 グローバル開発センター  宮澤 彩/金丸 直史

キーワード:介護用歯ブラシ/使いやすさの評価/口腔ケア時の負担軽減

目 次

はじめに

超高齢社会の到来に伴い人口構成が大きく変わり、65歳以上の高齢者が人口の約3割に達し1)、医療、介護では高齢者対策が喫緊の課題です。また、国内の要介護者数は年々増加し現在は680万人を超えた一方2)、介護人材は不足しており3)、今後ますます介護者の負担が増大することが懸念されます。介護者の負担軽減には健康寿命の延伸が不可欠ですが、その実現には生活習慣病予防とともに、社会生活を営むための機能を可能な限り維持することが重要です。厚生労働省が告示する健康日本21(第2次)では、「歯・口腔の健康」に関する生活習慣改善の重要性を挙げています4)。被介護者においては、歯科疾患を放置すると歯の喪失を引き起こし、咀嚼機能をはじめとする口腔機能の低下を招くため、定期的な歯科検診の受診はもちろん、毎日の口腔ケアが非常に重要です。さらに、口腔ケアは高齢者の死亡要因の上位を占める誤嚥性肺炎の予防にも繋がります5)
一方、介護職を対象とした被介護者への口腔ケア実態調査6)では、「口腔ケアの重要度は高い」と認識されつつも、半数以上が「介護施設入居者への口腔ケアは十分にできていない」と回答しており、現状の口腔ケアが不十分と感じていることが明らかになりました。また、介護職の約半数が口腔ケアに対し「専門的な知識や技術が必要」と感じており、被介護者への口腔ケアに対し不安を抱えていることが明らかになりました。このような背景から、歯科医師・歯科衛生士による専門的ケアとは別に、介護者による日常的ケアに適した口腔ケア製品が求められており、介護者にとって使いやすい歯ブラシが必要であると考えました。そこで、介護者が被介護者の口腔ケアをしやすい介護用歯ブラシ「エラックハブラシ620」(図1)を開発しました。以下に、①開発の考え方、②製品の設計、③製品の機能について、詳細を示します。

  • [写真] エラックハブラシ620(左:上面視 右:側面視)
    図1 エラックハブラシ620(左:上面視 右:側面視)

① 開発の考え方 ~介護者が被介護者の口腔ケアをしやすい歯ブラシとは~

開発に着手するにあたり、介護現場においてどのような口腔ケアが行われているのかを知るため、介護施設の視察や訪問歯科医師・衛生士へのヒアリングにより、介護現場の口腔ケア実態を調査しました。その結果、介護者は被介護者の口腔状態によって、口腔ケアの介助の必要性や使用するケア用品を判断し、介助する場合の多くは被介護者が使用する歯ブラシで口腔ケアをすることがわかりました。また、被介護者が認知症による意思疎通不足や、口腔機能に関する疾患等が原因で、自身の口を大きく開けることが困難な場合があることがわかりました。さらに、介護者は被介護者の奥歯のケアに苦労しており、特に被介護者の開口が小さい場合、口腔ケアに慣れた介護者であっても、奥歯の磨き残しをなくすことは非常に難しいことがわかりました。
以上の実態から、被介護者が使いやすいだけでなく、介護者が被介護者の口腔ケアをしやすい歯ブラシ設計に欠かせないポイントは、①口腔内に入れやすいこと、②奥歯を磨きやすいことであると考えました。

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