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Clinical Report

グライドパス用NiTiファイル『JIZAI Pre013』の新登場 -NiTiファイル JIZAIシステムを使いこなす-

医療法人社団躍松会 高倉歯科クリニック 伊澤 真人

キーワード:根管拡大形成/過度な湾曲が存在するケース/JIZAIのグライドパスファイル

目 次

NiTiファイル『JIZAI』システムについて

 『難しい根管拡大・形成をもっと早く、正確に行いたい』『破折が少なく、丈夫でしなやかなファイルを臨床に取り入れたい』『低コストで誰でも使いやすいNiTiファイルが欲しい』、このような数多くの臨床家たちの意見を参考にJIZAI は、2020年2月に登場した。
JIZAIは、3本のファイル(オリフィスオープナー#25.14を含めると4本)を基本構成とするR相NiTiファイルであり、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと番号が付与されている。それぞれの号数・テーパーは、図1を参照いただきたい。術者は根管拡大形成の際、この番号順にファイルを使用し常に作業長まで拡大する、いわゆるフルレングス法で拡大をするため、非常にわかりやすいコンセプトとも言える。
初めてNiTiファイルを使用する歯学部学生からの評価においてもJIZAIは、数多く市場に存在するNiTiファイル中、最も拡大形成時間を短縮でき、根管形成しやすかったとの評価があがっている1)
一方で、模擬根管を用いた切削限界を調査した報告でも、JIZAIは、同じR相の特徴を持つNiTiファイルよりも2倍程度長寿命だったことからも多くの臨床家が望んだ性質を兼ね備えていることがうかがえる2)
しかし、JIZAIを含むNiTiファイルは、根管上部の拡大後、事前に①根尖までの道筋が確保されていること(ネゴシエーション・穿通)②少なくとも#15.02程度の予備拡大(グライドパス)が済んでいることが使用するうえで必須となる3)。これは、NiTiファイルによる拡大形成の際に生じるファイルの破折を防ぎ4)、トランスポテーションを抑え、ステップやジップなどの偶発症を防ぐ5)役割があるからである。
図2に湾曲した根管に破折器具が認められた患者のデンタルX線写真を示す。大臼歯部の根管は、非常に湾曲しており、NiTiファイルの破折危険度が高いことが見て取れる。このような症例に、必要な工程を省き、不適切な使用方法で治療を行えばリカバリーの難易度が非常に高くなることを術者は常に考えなければならない。

  • [写真] JIZAIシステムの基本構成(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ
    図1 JIZAIシステムの基本構成(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)Ⅰ #25.04 Ⅱ #25.06 Ⅲ #35.04
  • [写真] ファイルの破折がみられた症例
    図2 ファイルの破折がみられた症例。47近心根管に、長い破折器具がみられる。

従来の使用手順の問題点

前述したように、JIZAIを使用する前に#15.02程度のグライドパスを行う必要があり、メーカー側もそれを推奨している。
しかし、ここで問題となるのは、フルレングス法で拡大する場合、#15.02程度まで拡大した後に挿入するNiTiファイルがJIZAI Ⅰ(#25.04) であることである。
図3のように、#15.02からJIZAI Ⅰ(#25.04) を根管内に挿入する場合、ファイル先端より3mm部、6mm部での拡大径の増加率は、それぞれ76.2%、81.5%になる。
これは、ファイルのテーパーが2%から4%へと2倍になることから、ファイルの根元へ行くほど拡大径が太くなるためである。
そのためJIZAI Ⅰへの負荷は、JIZAI Ⅱ、Ⅲと比べると大きくなる傾向にある。実際臨床の場面でも、過度に湾曲している根管や根管合流部は、JIZAIⅠがスムーズに入りにくく、グライドパスを#20.02まで行うこともあった。 実際の臨床例を示す(図4)。症例は、50代男性、27の歯髄壊死により根管治療を開始した。
患歯は、2年前にジルコニアクラウンを被せており、除去を強く拒まれたためクラウン咬合面よりアクセスオープニングを行った。
通法に従い近心頰側根管(MB1)、遠心頰側根管(DB)、口蓋根管(P)ともJIZAI Ⅲまでフルレングス法で拡大形成したが、近心頰側根管にイスムスを認めたため近心頰側第2根管(MB2)の存在を疑い、超音波チップを用いてイスムス部の拡大を進めた(図5)。すると、MB2の存在をマイクロスコープ下で確認できた(図6)。
拡大を進めるとMB2は根尖付近で強い湾曲があることがわかり、#15.02までグライドパスを行ったにもかかわらずJIZAI Ⅰを作業長まで到達することができなかった。そこで#20.02までグライドパスを追加で行い、作業長まで到達することができた。
拡大終了後、水酸化カルシウム製剤填入時MB1とMB2が合流していることがわかった(図7a、b)。
根管充填後のデンタルX線写真を図8に示す。このように過度な湾曲が存在する場合、拡大径の増加率は非常に重要になる。

  • [グラフ] #15.02からJIZAI Ⅰ(#25.04)への部位別増加率
    図3 #15.02からJIZAI Ⅰ(#25.04)への部位別増加率。
  • [写真] 術前デンタルX線写真
    図4 術前デンタルX線写真。
  • [写真] MB根管にイスムスの確認(マイクロスコープ画像)
    図5 MB根管にイスムスの確認(マイクロスコープ画像)。
  • [写真] MB2の存在を確認(マイクロスコープ画像)
    図6 MB2の存在を確認(マイクロスコープ画像)。
    • [写真] 水酸化カルシウム製剤貼薬時(マイクロスコープ画像)
    • [写真] 水酸化カルシウム製剤貼薬時(マイクロスコープ画像)
    図7a、b 水酸化カルシウム製剤貼薬時(マイクロスコープ画像)。MB1とMB2が合流していることがわかる。
  • [写真] 術後デンタルX線写真
    図8 術後デンタルX線写真。

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