会員登録

186号 AUTUMN 目次を見る

Clinical Report

M320・CBCTを活用したTrinityCore3の有効性

鳩ケ谷いざわ歯科 伊澤 真人

キーワード:膨大なデータの管理と取扱い方法/医療トラブル回避/効率的な歯科医院運営

目 次

マイクロスコープ・CBCTがもたらした歯科治療の変革

2000年代に入ってから我が国でも多くの医院がマイクロスコープ、CBCTを歯科治療に取り入れるようになり、歯内療法、歯周治療、修復・補綴治療・インプラントや外科治療など様々な分野で応用されている。
マイクロスコープ治療の特徴として、強拡大・強照明で術者が観察した視野を静止画・動画で撮影することができ、患者へのインフォームドコンセントやデンタルスタッフ(歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、歯科助手)間の情報共有に用いることができる。
今まで診療の記録は、カルテやX線写真に頼るところが大きかったが、診療中の記録を静止画・動画で撮影し、治療後に患者にそれらを見せ説明に使用することも可能である。
一方、CBCTは狭い照射範囲で患部の細やかな3DX線画像が得られ、病変の大きさや範囲、根管の形態、骨量や骨質の評価、重要な解剖形態の把握を行うことができる。事前にこれらの情報を得られることは、術式の選択、成功率、起こりうる偶発症やリスクについて検討できる面で有益であり、難しい判断を迫られる場合、大きな助けになる。この2つの機器の登場は、治療の質や幅を大きく広げたことは言うまでもない。
2014年以降、保険治療にも歯内療法分野に限ってだがマイクロスコープ、CBCTの適応が認められはじめた。2014年当時は、歯根端切除術に限定されていたが、年々適応範囲が広がっており2023年現在、3根管以上の根管治療、根管内異物除去にまで適応が拡大されている。また、2022年よりNiti rotary file加算も150点の加算が認められ、マイクロスコープ、CBCTを併用した大臼歯の根管治療では、根管充填までおよそ2,600~2,700点程度まで評価されている(図1)。
まだまだ不十分なのかもしれないが、今後より一層の評価・適応の拡大が期待されている。

  • [図] 手術用顕微鏡加算対象保険改定 年度別推移
    図1 手術用顕微鏡加算対象保険改定 年度別推移

Leica M320とVeraview X800(パノラマ、CBCT、セファロ複合機)の特徴

歯科用マイクロスコープLeica M320の特徴は、①高性能アポクロマートレンズ(赤・青・緑の三波長の色収差を補正し、色にじみのない性能が良いレンズ)を採用しており精度の高い観察に適している点、②配線コードが格納されているためコードが診療室の邪魔にならない点、③100,000Lux以上のLED照明を採用しており理論上電球の交換などがなくランニングコストに優れている点、④バランスに優れておりアームが長い点などが挙げられる。
特に④のアームが長いという点については、現在市場に出回る歯科用マイクロスコープの中でアームが最も長く1,775mmあり、筆者のクリニックでは2ユニット間の中心に置きどちらでも使用できるようになっている(図23)。もちろんショートアームもラインナップされているため限られたスペースに配置することも可能である。Veraview X800(図4)の特徴は、①パノラマ、CBCT、セファロが撮影可能である点、②80μmのボクセルサイズであり、解像度の高い画像が得られる点、③CBCT撮影時、水平照射をすることによりアーチファクトの少ない画像が得られる点が挙げられる。
特に②③は、根管治療を行う上では非常に有利となる。根管の形態が鮮明に見え、病変に広がりや骨質・骨量などの情報が鮮明に得られることは、術前の状態の評価に役立ち成功率・起こりうる偶発症、他術式の併用の可能性などを前もって患者にも伝えることができる。
この情報を基に患者は医師と話し合い、自分にとって最良の選択(意思決定)を行いやすくすることができる。その結果、【こんなはずじゃなかった】というような医療トラブルの回避にも役立つ。

  • [写真] Leica M320
    図2 Leica M320
  • [写真] 2ユニットの中間に置きマイクロスコープ1台で2ユニット併用が可能
    図3 Leica M320はアームが長い。2ユニットの中間に置きマイクロスコープ1台で2ユニット併用が可能になる。
  • [写真] Veraview X800
    図4 Veraview X800

TrinityCore3の活用の有効性

マイクロスコープやCBCTを日々診療の中に取り入れると出てくる問題が、データの管理とその取扱い方法である。昨今の診療では、管理文書や口腔内写真、歯周チャート、口内法X線写真・パノラマX線写真など、多くのデータを保存しなくてはならない。
さらに、マイクロスコープでの画像やCBCTを加えるとデータ管理はシンプルかつ使い勝手の良いシステムが必須になってくる。
それぞれ別の媒体に保存していると、すぐに散らばったデータをかき集めることが非常に難しくなってくる。たとえば、いざ患者の前で説明を行う時や学会や勉強会で発表する時など困ることも多いのではないだろうか?数が少ないうちは、ある程度可能なのかもしれないが、歯科医院運営は数十年単位で継続することが予想され、年々蓄積していくことを忘れてはならない。また、院長一人で行っているうちは把握することが可能であるかもしれないが、勤務医や多くのスタッフをかかえているクリニックでは誰しも簡単に使用できるシステムは効率化を図るうえでは非常に重要である。
そこで院内データ総合管理ソフトTrinityCore3が役立ってくる。Trinity Core3は、日常診療で得たデータ、つまり口腔内写真やX線写真、マイクロスコープで撮影した動画や静止画をユニットのパソコンやタブレット端末にそれらを反映することが可能(図5)であり、患者のID番号と見たいデータをクリックすれば日付順ですぐさま得たい情報が得られる(図6)。治療前と後の静止画・動画を1画面に並列表示させたり、静止画に絵を描き病気の範囲を画面上に示したりすることも可能である(図78)。
筆者は、多くの患者が、今までの自分の治療がどのように行われてきたか理解できていないと感じている。これは、口の中の細かい部位が自分で確認できない・しにくいという歯科領域の特徴であると思うが、すぐに不具合が出た場合、不信感につながりやすい分野でもあると思う。
しかし、視覚による情報の伝達力は計り知れなく、患者にとって今まで知りえなかった治療映像を見せることで良好な信頼関係を築くことが容易になるケースは多い。さらに、歯科に対しての興味が湧いた、モチベーションが向上したという患者をよく見る。データの蓄積とその使用方法によっては、治療の効果に大きな変化を与えてくれるものであると思う。

  • [写真] タブレット端末での動画再生
    図5 タブレット端末での動画再生
  • [写真] TrinityCore3 データ日付順表示
    図6 TrinityCore3 データ日付順表示
  • [写真] 静止画お絵描き機能
    図7 静止画お絵描き機能
  • [写真] 1画面2動画同時再生機能
    図8 1画面2動画同時再生機能

この記事はモリタ友の会会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

残り 2156 文字

モリタ友の会有料会員に登録する ログインする

目 次

モリタ友の会会員限定記事

他の記事を探す

モリタ友の会

セミナー情報

セミナー検索はこちら

会員登録した方のみ、
限定コンテンツ・サービスが無料で利用可能

  • digitalDO internet ONLINE CATALOG
  • Dental Life Design
  • One To One Club
  • pd style

オンラインカタログでの製品の価格チェックやすべての記事の閲覧、臨床や経営に役立つメールマガジンを受け取ることができます。

商品のモニター参加や、新製品・優良品のご提供、セミナー優待割引のある、もっとお得な有料会員サービスもあります。