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186号 AUTUMN 目次を見る

Field Report

チャンスロスをなくし、患者さんの口腔状態に合わせた適切な指導を

北海道札幌市北区 医療法人社団 成嶺会 北24条かやの歯科クリニック 理事長 萱野 哲矢/副理事長 歯科衛生士 萱野 美帆

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北海道札幌市北区 
医療法人社団 成嶺会 北24条かやの歯科クリニック

  • [写真] 理事長 萱野 哲矢
    理事長
    萱野 哲矢
  • [写真] 副理事長 歯科衛生士 萱野 美帆
    副理事長 歯科衛生士
    萱野 美帆

<萱野哲矢 理事長>

どんなに適切な治療を行ったとしても、口腔内の衛生管理が行き届いていなければ、再びう蝕は発生します。それは患者さんにとっても私たちにとっても喜ばしいことではありません。
口腔内の状態を改善し、健康を保つためには歯科衛生士によるプロケアはもちろん、日々の、それも質の高いセルフケアが欠かせません。そこで大切になるのがセルフケア製品です。
当院では積極的にセルフケア製品を患者さんに紹介するとともに、決して販売だけで終わらず、適切に活用していただけるように歯科衛生士による指導を適宜行っています。そうした取り組みを副理事長がご紹介します。

  • [写真] さまざまなセルフケア製品が並ぶ待合室
    図1 待合室にはさまざまなセルフケア製品が並ぶ。患者さんが立ち止まって眺めている際にはスタッフが声をかけるようにしている。
  • [写真] 待合室のディスプレイ
    図2 待合室のディスプレイは「製品を見定める場」と萱野副理事長。なるべく患者さんに目に留めていただけるように手描きのPOPにしている。
  • [写真] 「Check-Up」や「Systema SP-Tシリーズ」のセットを医院独自で作り、期間・数量限定でキャンペーンを行った際のPOP
    図3 「Check-Up」や「Systema SP-Tシリーズ」のセットを医院独自で作り、期間・数量限定でキャンペーンを行った際のPOP。定価よりも価格を抑えたこともあり、よく売れたそうだ。
  • [写真] 毎月、スタッフの顔写真とともに「今月のおすすめ」としてセルフケア製品を紹介
    図4 毎月、スタッフの顔写真とともに「今月のおすすめ」としてセルフケア製品を紹介している。スタッフの使用感などを伝えることで訴求力が増す。
  • [写真] カルテファイル
    図5 カルテファイルにはセルフケアグッズの購入履歴を記入し、自宅におけるセルフケア製品の使用状況を把握。
  • [写真] 商品の販売個数は毎月グラフ化し、推移を確認
    図6 商品の販売個数は毎月グラフ化し、推移を確認。「達成できなくても、患者さんにお勧めする取り組みが風化しないように目標値を決めています」と萱野副理事長。

<萱野美帆 副理事長>

世の中にはさまざまなセルフケア製品が売られていますが、いったいどれだけの方が自分に適した製品を選択できているでしょうか。そして、私たちは何人の患者さんに適切な指導を行えているでしょうか。
そうした疑問を最初に感じたのは訪問先で高齢者の口腔ケアを行っている時でした。もしも目の前の患者さんが若い頃に適切な指導を受けていれば、無歯顎にならなかったかもしれません。そう思うと私たち歯科衛生士の力不足を痛切に感じました。
[写真] 北24条かやの歯科クリニックのスタッフ 実際患者さんにセルフケア製品についてお話させていただくと、「もっと早く教えて欲しかった」とおっしゃる方がとても多くて驚きます。私たちはお勧めできる機会を損失(チャンスロス)していたのです。しかし、日々の業務の中でセルフケア製品について詳しく話す機会を作るのは難しいものです。そこで当院では歯周組織検査をトリガーポイントとし、検査後は必ずセルフケア製品の使用状況を尋ねるようにしています。そして、検査結果に基づき、ブラッシング指導やセルフケア製品のアドバイスを行っています。
患者さんが商品を購入した際には日付とともにその旨をカルテファイルに記入します。こうすることで患者さんのご自宅にあるセルフケア製品の使用状況が把握でき、例えば、含嗽剤がほこりを被っているようであれば、あらためて使用するメリットを説明したり、別の商品をお勧めしたりします。
セルフケアによる口腔内の衛生管理が明らかに困難な方、歯磨きの優先順位が低い方には充電式音波電動歯ブラシ「ソニッケアー」を薦めることがあります(図7~11)。短時間で効率よく磨けるなどのメリットをお伝えし、興味を示した方には実際に手に取っていただきます。
ソニッケアーに限ったことではありませんが、大切なのはお勧めする立場である自分たちが実際にその製品を使用したことがあるかどうかだと思っています。使用感を知っていれば、言葉の重みや語彙が増し、その必要性をご理解、納得していただけます。
以前、いくらブラッシング指導を行っても口腔状態が良くならない患者さんがいました。最後の最後にソニッケアーを勧めたところ、清掃状態が改善し清潔な口腔内へと大きく変化しました。10年ほど前の話ですが、セルフケア製品1つでこんなにも口腔内の状態が良くなるものかと驚きました。
歯科衛生士の施術や指導で得られる効果は、身体全体からみれば、ミクロの変化でしかありません。でも、その結果、患者さんの将来や人生が大きく変わることも事実です。セルフケア製品の必要性をご理解いただくための適切な指導はそれほど大きな重みや意義のあるものだと考えています。
先述した無歯顎の高齢患者さんのような方が一人でも減るように、そして自分の歯でいつまでも食事を美味しく食べられる方が一人でも増えるように、これからもチャンスロスをなくし、患者さんへのアプローチを続けていきたいと思っています。

  • [写真] ソニッケアー購入までの流れ 事例①
    図7 ソニッケアー購入までの流れ 事例①
    歯周組織検査で口腔内の状態を把握した上で、生活習慣などについてもヒアリングし、磨けていない背景などを探る。
  • [写真] ソニッケアー購入までの流れ 事例②
    図8 ソニッケアー購入までの流れ 事例②
    セルフケアによる衛生管理が困難な方などには「ソニッケアー」を勧めてみる。興味がありそうな患者さんには、まずPOPを利用して製品説明を行う。
  • [写真] ソニッケアー購入までの流れ 事例③
    図9 ソニッケアー購入までの流れ 事例③
    さらに興味がありそうなら、替ブラシのラインナップを見せながら、「○○さん(患者さんの名前)にいちばん合う歯ブラシを選ぶんです」などと説明をする。
  • [写真] ソニッケアー購入までの流れ 事例④
    図10 ソニッケアー購入までの流れ 事例④
    水を入れたコップを利用し、ブラシの高速振動によって発生する音波水流をビジュアルにして伝える。
  • [写真] ソニッケアー購入までの流れ 事例⑤
    図11 ソニッケアー購入までの流れ 事例⑤
    購入していただいたら、実際にソニッケアーを使って、鏡を利用しながら毛先の当て方などを指導する。
  • [写真] 「ソニッケアー」の替ブラシ
    図12 「ソニッケアー」の替ブラシは舌ブラシとキッズ用を含めると11種類。初めて購入する患者さんにはお試しの意味合いでシンプルなスペックの製品をお勧めすることが多い。

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