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Case Report

外側性GBRにおけるTiハニカムメンブレンの有用性

東京都目黒区 井原歯科クリニック 院長 井原 雄一郎

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キーワード:外側性GBR/血液浸透性が高い非吸収性メンブレン

目 次

はじめに

骨造成は周囲が骨に囲まれた欠損部に対する内側性の骨造成と、歯槽骨が高度に吸収している欠損部に対する外側性の骨造成に分けられる1)
外側性の骨造成においては賦形した骨造成部が粘膜からの圧力に耐えうるだけの強度と歯槽骨からの骨形成細胞や血管新生を長期的に維持するスペースが必要である2)
これらの条件を満たすメンブレンがTiハニカムメンブレンであり、本稿では、これらの特性をいかした外側性のGBRの症例を提示する。

症例1

患者は60歳男性。7の違和感にて来院。慢性炎症があったが他院にて長期的に経過観察を行っていたため硬化性骨炎を認めた(図1)。
抜歯後6ヵ月が経過するも大きな骨欠損を伴っていた(図2)。特に舌側の欠損は大きく吸収性メンブレンでは粘膜の外圧に耐えられず、理想的な骨造成が困難と判断しTiハニカムメンブレンを応用してGBRを行った(図3)。硬化性骨炎による血流障害はなく、歯槽骨からの出血は認めた。
GBR後6ヵ月の経過にて欠損部の歯槽骨は理想的に増大され(図4)、インプラント埋入は可能であった。インプラント上部構造は周囲の組織と調和がとれ理想的形態を付与できた(図5

  • [写真] 根尖および根分岐部に透過像を認め、透過像周囲は不透過性が亢進している
    図1 根尖および根分岐部に透過像を認め、透過像周囲は不透過性が亢進している。
  • [写真] 抜歯後6ヵ月が経過するも骨は治癒しておらず、舌側の欠損が大きい
    図2 抜歯後6ヵ月が経過するも骨は治癒しておらず、舌側の欠損が大きい。
  • [写真] 骨移植材を填入し、Tiハニカムメンブレンで被覆した
    図3 骨移植材を填入し、Tiハニカムメンブレンで被覆した。
  • [写真] インプラントを埋入するための十分な骨の幅と高さが得られた
    図4 インプラントを埋入するための十分な骨の幅と高さが得られた。
  • [写真] 周囲の歯肉と調和のとれたインプラント上部構造の形態を付与できた
    図5 周囲の歯肉と調和のとれたインプラント上部構造の形態を付与できた。

症例2

患者は33歳女性。78の歯肉の発赤、腫脹にて来院(図6)。保存不可能と診断し、抜歯を行った。
抜歯後に大きな骨吸収を伴い外側性の骨造成が必要であると判断し、Tiハニカムメンブレンを用いてGBRを行った(図78)。体積の増加した骨欠損部を粘膜で確実に閉鎖するための減張切開と縫合も非常に重要である(図9)。
GBR後6ヵ月の経過にてインプラント埋入を行ったが水平的・垂直的に骨造成が達成されている(図1011)。術前・術後のCBCTにて造成骨と母骨が一体化しており、垂直的かつ舌側の水平的な骨造成が確認できた(図1213)。
本症例はドリリング時の骨質は良好であったが、骨質によっては造成した骨の賦形が損なわれる可能性もあるため、欠損形態(母骨と骨移植材の接触面積が少ない場合)や患者の年齢、治癒力によって治癒期間を8~10ヵ月設けることも考慮すべきである。
GBR後4年が経過しているが造成した骨は維持されている(図1415)。

  • [写真] 6、7ともに根分岐部病変および根尖病変を認めた
    図6 67ともに根分岐部病変および根尖病変を認めた。
  • [写真] 水平的および垂直的な骨吸収を伴っていた(抜歯後5ヵ月)
    図7 水平的および垂直的な骨吸収を伴っていた(抜歯後5ヵ月)。
  • [写真] 骨移植材を填入し、Tiハニカムメンブレンで被覆した
    図8 骨移植材を填入し、Tiハニカムメンブレンで被覆した。
  • [写真] 減張切開を加えた後、水平マットレス縫合と単純縫合を行った
    図9 減張切開を加えた後、水平マットレス縫合と単純縫合を行った。
  • [写真] 補綴学的な部分を考慮した骨造成が達成されている
    図10 補綴学的な部分を考慮した骨造成が達成されている。
  • [写真] 造成した骨の不透過性の亢進を認める(GBR後6ヵ月)
    図11 造成した骨の不透過性の亢進を認める(GBR後6ヵ月)。
  • [写真] 6部の術前・術後のCBCT(株式会社モリタ製作所 Veraviewepocs X700にて撮影)
    図12 6部の術前・術後のCBCT(株式会社モリタ製作所 Veraviewepocs X700にて撮影)
  • [写真] 7部の術前・術後のCBCT
    図13 7部の術前・術後のCBCT
  • [写真] 上部構造装着後3年(頰側には遊離歯肉移植を行っている)
    図14 上部構造装着後3年(頰側には遊離歯肉移植を行っている)。
  • [写真] インプラント周囲の骨は安定している(GBR後4年)
    図15 インプラント周囲の骨は安定している(GBR後4年)。

考察

今回、このように良好な結果が得られた要因はいくつかあるが、GBRに必要な血液供給が得られたこと、そして骨移植材が安定・維持できたことが大きいと考えている。
現在、GBRにおいて様々な骨補填材や吸収性メンブレン、非吸収性メンブレンが応用され、様々な方法で良い結果が報告されている。しかしながら、外側性GBRにおいては結果にばらつきがあるのも事実である。
Tiハニカムメンブレンは血液浸透性(穿通孔の径が20μm)が良く、術者が意図した賦形を与えられるという特徴をあわせもつため、外側性GBRに非常に適した材料と考える。

参考文献
  • 1) Tinti C, Parma-Benfenati S. Clinical classification of bone defects concerning the placement od dental implants. Int J Periodontics Restorative Dent 2003;23:147-155.
  • 2) Hom-Lay Wang, Lakshmi Boyapati “PASS” Principles for Predictable Bone Regeneration Implant Dent 2006 Mar;15(1):8-17.

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