拡大後もスタッフの増員が続く、同院の職場づくりや人材育成の取り組みと将来展望について、神野理事長にお話を伺いました。

院長1人に対してスタッフ数名という一般的な歯科医院の場合、院長である私にもしものことがあれば、スタッフ全員を路頭に迷わせてしまうことになりかねません。そのため開業当初から、スタッフが定年まで安心して勤められる職場を目指して、スタッフの人数を増やし、ある程度の医院規模にすることを決めていました。2020年の法人化以降は、厚生年金保険への加入や福利厚生も向上させ、スタッフが安心して働ける土壌ができました。もし私やスタッフの誰かが欠けても、患者さんに迷惑をかけることなく、スムーズに運営できる体制が整ってきたと感じています。

医院規模が大きくなると、院長の力だけでは限界があります。スタッフには「やりたいことをやらせてみる」というスタンスで、ある程度の裁量権は持たせるようにしています。私が後方からフォローしつつ、多少の失敗を認めながらもチャレンジさせることは必要なことだと思います。各職種のスキルアップのために、外部勉強会への参加はもちろん、院内でも外部の専門講師や他院の先生を招いての勉強会も定期的に行っています。そして常に新しい知識や技術を取り入れながら、医院全体でのブラッシュアップを図るようにしています。また、月1回休診日を設け、全体ミーティングも開催しています。そこではおもに私が大まかなビジョンを伝え、具体的なアイデアは、スタッフ全員で考えてもらいます。職種や上下関係を越えたワンチームが当院のモットーですので、そのなかで各スタッフが「自分の医院」という意識を高めていってほしいと思っています。

当院では歯科医師も、受付スタッフも同格扱い。掃除やゴミ捨ても全員で行います。今年入職したスタッフから、最初の1ヵ月は受付、技工、臨床などすべての業務を経験してもらう取り組みも始めました。院内の業務をひと通り経験して理解し、それぞれのスタッフが互いをリスペクトしながら活躍できる場にしたいとの考えからです。また、規模が大きくなり人数が増えることで、良い意味でのライバル心も生まれます。スタッフは本当に財産です。今後は、コミュニケーションの方法を工夫しながら、ライフステージ別の働きやすい仕組みづくりや人材育成など、ソフト面にも還元していきたいと思っています。

小児から高齢者まで幅広い患者さんに、長く通ってもらえる地域の総合的な中核歯科医院を目指しています。そのためには、院長が不在の時も、他の職種を助け合える風土と自立した組織に成長していくことが不可欠です。医院拡張後は、スタッフの人生とその家族を背負っているという責任感がさらに増して、リーダーシップを発揮する機会も増えてきました。今後は私以外にもリーダーシップをとれる人を育成し、1人で4人をマネジメントできる安定した組織をつくることが課題です。そのなかで、より充実した教育システムをつくり、仮にスタッフが転職することがあっても、「バウムクーヘン歯科で働いていた人なら信頼できる」と思ってもらえる人材と医院に育てていきたいと考えています。