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Dental Talk

有病者・高齢者やインプラント周囲病変など幅広い分野での応用が可能に現在の私たちのEr:YAGレーザー活用法

福岡県北九州市 うえだ歯科 院長 上田 秀朗/青森県八戸市 夏堀デンタルクリニック 院長 夏堀 礼二

目 次

有病者・高齢者やインプラント周囲病変など幅広い分野での応用が可能に現在の私たちのEr:YAGレーザー活用法 上田 秀朗×夏堀 礼二
近年、インプラント周囲の歯石除去や骨切除まで適用範囲が広がったEr:YAGレーザー。昨年には従来品から進化を遂げた「アドベール SH」が販売されるなど、さらなる盛り上がりを見せています。今回のDental Talkでは、長年Er:YAGレーザーをお使いの上田秀朗先生と夏堀礼二先生に、それぞれの現在の活用法について伺いました。

Er:YAGレーザーの可能性に尽きない興味

[写真] 福岡県北九州市 うえだ歯科 院長 上田 秀朗

上田 ずいぶん前のことですが、インプラント治療に関するスタディグループの年次ミーティングで、Er:YAGレーザーを用いてインプラント周囲の感染性肉芽組織の除去をする症例発表を見る機会がありました。それ以来、Er:YAGレーザーに関心を持ちはじめ、その後、実際に当院でもEr:YAGレーザーを導入し、日々臨床で活用しています。導入当初は、インプラント周囲炎への適用に限定して使用していましたが、他にも、う蝕除去や歯肉切開をはじめ、さまざまな活用用途があることを後から知って、最近Er:YAGレーザーの可能性に、ますます興味が湧いているところです。
Er:YAGレーザーを使ってインプラント周囲炎にアプローチしていく際には、最初に大きな肉芽を鋭匙などでざっと取っておいて、その後Er:YAGレーザーで骨に付着した肉芽などを除去していきます。その手順で行うと、 きれいに除去できるので、非常に重宝しています。
夏堀 実際のところ、すべての肉芽をレーザーだけで除去するのはかなり大変だと思います。
上田 大きな肉芽はキュレットなどである程度まで浮かせておいて、その後にEr:YAGレーザーで仕上げていくような感覚で、細かい部分を除去していきます。これまでアプローチしづらかった細かい部分までスムーズにチップが入っていってくれるので、とても扱いやすいと感じています。
夏堀 骨内に残っている肉芽はなかなか取れないですものね。それがEr:YAGレーザーを使うと、たしかにきれいに浮いてくる感覚があります。
上田 そうですね。肉芽が浮いてきたところをバキュームサクションなどで吸引していきます。その後再度Er:YAGレーザーを照射すると、骨の内面というか、肉芽が除去された表面が見えてきて、「この状態だと今後うまく再生してくれるだろうな」と感じるケースが多いです。
夏堀 肉芽がきれいに除去されていく感覚は実際に手技を行っている私たちにとっても気持ちがいいものですよね。
上田 たしかにほぼ完璧に除去できますから、そのあたりは非常に優れていると思います。
夏堀 ところで、上田先生はデコルチケーションを行う場合、Er:YAGレーザーはほとんど使われないのでしょうか。
上田 デコルチケーションはバーの方が早いので現在は使用していません。けれども「アドベール SH」(以下:「SH」)はパワーが上がったと聞いていますので、デコルチケーションも効率良くできそうですよね。
夏堀 そのようですね。ぜひ、「SH」を臨床で体感してみたいところです。

有病者へのアプローチにEr:YAGレーザーが有効

[写真] 青森県八戸市 夏堀デンタルクリニック 院長 夏堀 礼二

上田 当院では、BP製剤を服用されていて、外科処置をなるべく避けたいという有病者が多く来院されます。Er:YAGレーザーは閉鎖創での処置が可能ですから、深部を掻爬していく際にもとても有効です。私は開業から40年近くが経過する中、患者さんの高齢化がますます進んでいます。可能な限りコントロールしているつもりですが、特定の部位に深いポケットが見られる現象は避けられません。Er:YAGレーザーは、そのような患者さんのメインテナンスにとても重宝します。当院の場合、ポケットを測定して以前より深くなってきたタイミングで、「そろそろEr:YAGレーザーを当ててみようか」という感じで使っています。
夏堀 有病者の場合、定期健診でポケットが深くなっていることが確認できたら、Er:YAGレーザーを使用されるということですか。
上田 そうです。当院では重度の歯周病の方は毎月来院してもらいますが、プロービング検査は3か月に1回、X線撮影は1年に1回と決めています。そこで、ポケットに深い部位が見られたら要注意部位と捉えて丁寧にプロービングを行っていきます。深い部分に対して麻酔を行い、Er:YAGレーザーでメインテナンスを行っていきます。当院では深いポケットに対しては麻酔を行ってからEr:YAGレーザーを使用していきますから、使用するタイミングは様子を見ながらという感じですね。
夏堀 超音波スケーラーやエアースケーラーを使った軽いデブライドメント程度なら無麻酔で行いますが、レーザーで本格的な肉芽除去まで行うとなると、麻酔は必要ですからね。
上田 ええ。そのため頻繁にはできないのですが、ポイントで照射しておくと、その後の治りがとても早いと感じますし、歯肉がきれいに回復していく感覚はありますね。
夏堀 その場合、抗生物質などは投与されるのでしょうか。
上田 本格的な外科処置ではありませんから、ひどいケース以外は痛み止め程度で抗生物質はほぼ投与しません。
夏堀 レーザー照射の目的は殺菌とLPS(リポ多糖体)の除去でしょうか。
上田 まずは根面をきれいに処理していくことが中心ですが、殺菌とLPSの無毒化も可能ですので重宝しています。ところで、夏堀先生のクリニックでは高齢の患者さんは多いですか。
夏堀 とても多いですよ。実は以前、上田先生から先ほどのお話を伺って、最近になってメインテナンスの際、ポケットが深い部分にEr:YAGレーザーを照射するようになりました。それまでは、もっぱらオペにしか使っていなかったのですが(笑)。
上田 夏堀先生や私のクリニックのように、メインテナンスの患者さんが200人、300人となってくると、すべての患者さんの歯周ポケットを4mm以下にコントロールすることは難しいと感じているのですが、夏堀先生はいかがですか。
夏堀 5、6mmくらいの部分をメイ ンテナンスしていくイメージです。もちろん、良好な状態を20、30年と頑張って維持してくださる患者さんもいらっしゃいますが、そんな優等生な方ばかりではありませんので。
上田 やはりそうですか。その場合、通常の器具ではアプローチが難しい深いポケットに対してEr:YAGレーザーの有効性は大いにあると感じています。

症例紹介① 上田 秀朗先生
  • [写真]
    症例1 器具の到達が困難な最後臼歯遠心部が細部まで廓清できる。
    動画はこちらから
  • [写真]
    症例2 歯根端切除術。根尖病変部摘出、感染性肉芽組織の処理、骨のデブライドメントが可能。
    動画はこちらから
  • [写真]
    症例3 GBR(骨誘導再生法)。感染性肉芽組織の郭清がスムーズに行える。
    動画はこちらから

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