
1.組成
販 売 名 |
エピリド配合注歯科用カートリッジ1.8mL |
容量 |
1mL中 |
1管
(1.8mL)中 |
有効成分 |
日本薬局方 リドカイン
(リドカイン塩酸塩として) |
20mg |
36mg |
日本薬局方 アドレナリン |
0.0125mg |
0.0225mg |
添 加 物 |
塩酸 |
0.4μL |
0.72μL |
ピロ亜硫酸ナトリウム |
0.55mg |
0.99mg |
等張化剤、pH調整剤 |
2.製剤の性状
性 状 |
無色澄明の水性注射液 |
|
容 器 |
ガラス製カートリッジ |
|
pH |
3.1〜5.0 |
|
浸透圧比(生理食塩液に対する比) |
約1 |

歯科領域における浸潤麻酔又は伝達麻酔

浸潤麻酔又は伝達麻酔には、通常成人0.3〜1.8mL(リドカイン塩酸塩として6~36mg、アドレナリンとして0.00375〜0.0225mg)を使用する。口腔外科領域の麻酔には、3~5mL(リドカイン塩酸塩として60~100mg、アドレナリンとして0.0375mg〜0.0625mg)を使用する。なお、年齢、麻酔領域、部位、組織、症状、体質により適宜増減するが、増量する場合には注意すること。

1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
- 1)高齢者又は全身状態が不良な患者[生理機能の低下により麻酔に対する忍容性が低下していることがある。
(「2.重要な基本的注意」、「5.高齢者への投与」の項参照)
- 2)心刺激伝導障害のある患者[症状を悪化させることがある。]
- 3)重症の肝機能障害又は腎機能障害のある患者[中毒症状が発現しやすくなる。]
2.重要な基本的注意
- 1)まれにショックあるいは中毒症状を起こすことがあるので、本剤の投与に際しては、十分な問診により患者の全身状態を把握するとともに、
異常が認められた場合に直ちに救急処置のとれるよう、常時準備をしておくこと。
- 2)本剤の投与に際し、その副作用を完全に防止する方法はないが、ショックあるいは中毒症状をできるだけ避けるために、次の諸点に留意すること。
(1)患者の全身状態の観察を十分に行うこと。
(2)できるだけ必要最少量にとどめること。
(3)血管の多い部位(顔面等)に注射する場合には、吸収が速いので、できるだけ少量を投与すること。
(4)注射針が、血管に入っていないことを確かめること。
(5)注射の速度はできるだけ遅くすること。
(6)前投薬や術中に投与した鎮静薬、鎮痛薬等による呼吸抑制が発現することがあるので、これらの薬剤を使用する際は少量より投与し、
必要に応じて追加投与することが望ましい。
なお、高齢者、小児、全身状態が不良な患者、肥満者、呼吸器疾患を有する患者では特に注意し、
異常が認められた際には、適切な処置を行うこと。
- 3)注射針が適切に位置していないなどにより、神経障害が生じることがあるので、穿刺に際し異常を認めた場合には本剤の注入を行わないこと。
- 4)本剤の投与により、誤嚥・口腔内咬傷の危険性を増加させるおそれがあるので注意すること。
3.相互作用
本剤は、主として肝代謝酵素CYP1A2及びCYP3A4で代謝される。
併用注意(次の患者には慎重に投与すること)
薬剤名等 |
臨床症状・措置方法 |
機序・危険因子 |
ハロゲン含有吸入麻酔薬
・ハロタン 等 |
頻脈、不整脈、場合によっては心停止を起こすことがある。 |
これらの薬剤は、心筋のアドレナリン受容体の感受性を亢進させる。 |
三環系抗うつ薬
・イミプラミン 等
モノアミン酸化酵素阻害薬
(MAO阻害薬) |
血圧上昇を起こすことがある。 |
これらの薬剤は、アドレナリン作動性神経終末でのカテコールアミンの再取り込みを阻害し、受容体でのカテコールアミン濃度を上昇させ,アドレナリン作動性神経刺激作用を増強させる。 |
非選択性β遮断薬
・プロプラノロール 等 |
血管収縮、血圧上昇、徐脈を起こすことがある。 |
これらの薬剤のβ受容体遮断作用により、アドレナリンのα受容体刺激作用が優位になり、血管抵抗性を上昇させる。 |
抗精神病薬
(ブチロフェノン系、フェノチアジン系等)
・ハロペリドール
・クロルプロマジン 等
α遮断薬 |
過度の血圧低下を起こすことがある。 |
これらの薬剤のα受容体遮断作用により、アドレナリンのβ受容体刺激作用が優位になり、血圧低下があらわれる。 |
分娩促進薬
・オキシトシン 等
麦角アルカロイド類
・ エルゴメトリン 等 |
血圧上昇を起こすことがある。 |
併用により血管収縮作用が増強される。 |
クラスⅢ抗不整脈薬
・アミオダロン 等 |
心機能抑制作用が増強するおそれがある。 |
作用が増強することが考えられる。 |
4.副作用
本剤は、副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。
- 1)重大な副作用(頻度不明)
(1)ショック
徐脈、不整脈、血圧低下、呼吸抑制、チアノーゼ、意識障害等を生じ、まれに心停止を来すことがある。
また、まれにアナフィラキシーショックを起こしたとの報告があるので、観察を十分に行い、
このような症状があらわれた場合には、適切な処置を行うこと。
(2)意識障害、振戦、痙攣
意識障害、振戦、痙攣等の中毒症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、
このような症状があらわれた場合には、直ちに投与を中止し、
適切な処置を行うこと。(「8.過量投与」の項参照)
(3)異常感覚、知覚・運動障害
注射針の留置時に神経に触れることにより一過性の異常感覚が発現することがある。
また、神経が注射針や薬剤あるいは虚血によって障害を受けると、まれに持続的な異常感覚、疼痛、
知覚障害、運動障害等の神経学的疾患があらわれることがある。
(4)悪性高熱
まれに原因不明の頻脈・不整脈・血圧変動、急激な体温上昇、筋強直、血液の暗赤色化(チアノーゼ)、過呼吸、
発汗、アシドーシス、高カリウム血症、ミオグロビン尿(ポートワイン色尿)等を伴う重篤な悪性高熱があらわれることがある。
本剤を投与中、悪性高熱に伴うこれらの症状を認めた場合は、直ちに投与を中止し、ダントロレンナトリウムの静注、
全身冷却、純酸素による過換気、酸塩基平衡の是正等、適切な処置を行うこと。
また、本症は腎不全を続発することがあるので、尿量の維持を図ること。
- 2)その他の副作用
種類\頻度 |
頻度不明 |
中枢神経注2) |
眠気、不安、興奮、霧視、眩暈、頭痛等 |
循 環 器 |
動悸、頻脈、血圧上昇等 |
消 化 器注2) |
悪心・嘔吐等 |
過 敏 症 |
蕁麻疹等の皮膚症状、浮腫等 |
投与部位注3) |
潰瘍、壊死等 |
注2)このような症状があらわれた場合は、ショックあるいは中毒へ移行することがあるので、
患者の全身状態の観察を十分に行い、必要に応じて適切な処置を行うこと。
注3)「9.適用上の注意」の項参照
5.高齢者への投与
高齢者では本剤に含まれているアドレナリンの作用に対する感受性が高いことがあるので、患者の全身状態を観察しながら慎重に投与すること。
6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]
7.小児等への投与
小児等に対する安全性は確立していない。
8.過量投与
局所麻酔薬の血中濃度の上昇に伴い、中毒が発現する。特に誤って血管内に投与した場合には、数分以内に発現することがある。
その症状は、主に中枢神経系及び心血管系の症状としてあらわれる。
- 1)徴候、症状
(1)中枢神経系の症状
初期症状として不安、興奮、多弁、口周囲の知覚麻痺、舌のしびれ、ふらつき、聴覚過敏、耳鳴、視覚障害、振戦等があらわれる。
症状が進行すると意識消失、全身痙攣があらわれ、これらの症状に伴い低酸素血症、高炭酸ガス血症が生じるおそれがある。
より重篤な場合には呼吸停止を来すこともある。
(2)心血管系の症状
血圧低下、徐脈、心筋収縮力低下、心拍出量低下、刺激伝導系の抑制、心室性頻脈及び心室細動等の心室性不整脈、循環虚脱、心停止等があらわれる。
- 2)処置
呼吸を維持し、酸素を十分投与することが重要である。必要に応じて人工呼吸を行う。
振戦や痙攣が著明であれば、ジアゼパム又は超短時間作用型バルビツール酸製剤(チオペンタールナトリウム等)を投与する。
心機能抑制に対しては、カテコールアミン等の昇圧剤を投与する。心停止を来した場合には直ちに心マッサージを開始する。
9.適用上の注意
- 1)使用回数
本品は一回限り使用のディスポーザブル製剤であるので、再度の使用は避けること。
[使用したカートリッジには、患者の体液が逆流している可能性がある。]
- 2)注射速度
強圧をかけずにできるだけゆっくり注射すること。[骨膜下への強圧注射は組織の損傷又はガラスチューブの破折注4)につながるおそれがある。]
注4)強圧がかかると組織の損傷又はカートリッジの破損あるいは液漏れを生じることがあるのでゆっくり注射すること。
- 3)使用目的
歯科用にのみ使用すること。

1.リドカイン
神経細胞膜のNa+チャネルを抑制することによって神経の活動電位発生を抑制するという局所麻酔薬共通の作用により、知覚神経の求心性伝導を抑制する。表面麻酔から注射麻酔まで広く用いられる。局所麻酔薬の中で唯一抗不整脈薬としても用いられる。心臓のNa+チャネルを抑制する第Ⅰ群の抗不整脈薬である。
2.アドレナリン
ノルアドレナリンのN-メチル化体であり、生体内では副腎髄質ホルモンとして働いている。アドレナリン受容体に結合して薬理作用を現し、全ての受容体(α1、α2、β1、β2)に対して刺激作用を示す。ノルアドレナリンと同じく、本薬を投与しても血液脳関門を通過しないので、中枢作用は発現しない。

1.リドカイン
- 一般名:
- リドカイン(Lidocaine)
- 化学名:
- 2-Diethylamino-N-(2,6-dimethylphenyl) acetamide
- 分子式:
- C14H22N2O
- 分子量:
- 234.34
- 融点:
- 66~69℃
- 構造式:

- 性状:
- ・白色~微黄色の結晶又は結晶性の粉末である。
- ・メタノール又はエタノール(95)に極めて溶けやすく、酢酸(100)又はジエチルエーテルに溶けやすく、水にほとんど溶けない。
- ・希塩酸に溶ける。
2.アドレナリン
- 一般名:
- アドレナリン(Adrenaline)
- 化学名:
- 4-[(1R)-1-Hydroxy-2-(methylamino)ethyl] benzene-1,2-diol
- 分子式:
- C9H13NO3
- 分子量:
- 183.20
- 構造式:

- 性状:
- ・白色~灰白色の結晶性の粉末である。
- ・ギ酸又は酢酸(100)に溶けやすく、水に極めて溶けにくく、メタノール又はエタノール(99.5)にほとんど溶けない。
- ・希塩酸に溶ける。
- ・空気又は光によって徐々に褐色となる。

- 1.凍結するとゴム栓の飛び出し又はカートリッジの破損が起こることがあるので注意すること。
- 2.使用前にカートリッジの頭部(アルミキャップ)メンブランをアルコールで軽く消毒すること。
- 3.本剤は、金属を侵す性質があるので、長時間注射針に接触させないことが望ましい。
- 4.廃棄の際は感染防止に配慮すること。
- 5.安定性試験
最終包装製品を用いた加速試験(30℃、相対湿度75%、6カ月)の結果、エピリド配合注歯科用カートリッジ1.8mLは
通常の市場流通下において3年間安定であることが推測された。2)

1.8mL×50管

- 1)第十六改正日本薬局方解説書
- 2)ニプロ(株)社内資料:(安定性試験)

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